西武鉄道が2019年3月から運行する予定の新型特急車両「Laview」。この車両には地下鉄に乗り入れるための設備が導入されました。実際に地下鉄に乗り入れるとしたら、どのような運行形態が考えられるのでしょうか。

先頭部に非常用ドアを設置

 西武鉄道は2018年10月29日(月)、東京プリンスホテル(東京都港区)で新型車両の001系特急形電車「Laview(ラビュー)」の記者発表を行いました。


このほど完成した001系「Laview」。先頭部に非常用のドア(左)が設置されている(写真:西武鉄道)。

「Laview」は2019年3月から運行される予定の新型特急車両です。運行区間は池袋線・西武秩父線の池袋〜西武秩父間。現在は10000系特急形電車「ニューレッドアロー(NRA)」で運転されている特急「ちちぶ」「むさし」で使われます。停車駅は現在と同じで、「ちちぶ」が池袋、所沢、入間市、飯能、横瀬、西武秩父の各駅に停車。「むさし」は池袋、所沢、入間市、飯能の各駅に停まります。特急料金も現在と同じで、大人は300〜700円です。

 しかし、西武が今回発表した実車の写真を見ると、池袋〜西武秩父間の範囲で運行するだけなら「不要な設備」が取り付けられているのが分かります。それは編成両端の先頭部に設けられた、非常用のドアです。

 地下トンネルを通る鉄道車両は、基本的には編成の両端に非常用のドアを設ける必要があります。幅の狭いトンネル内で何らかのトラブルが発生して乗客を避難させる場合、側面にあるドアから脱出するのが難しいためです。

 001系「Laview」は先頭部が球面で、窓ガラスも大きな三次元曲面ガラスを採用した複雑な形状になっていますが、非常用ドアもその形状にあわせて設置されました。ということは、「Laview」も地下鉄に乗り入れることができるはずです。

 西武の取締役常務執行役員の飯田則昭さんは記者会見での質問に対し、「おっしゃる通り、001系は地下鉄の乗り入れに対応しています」と話し、地下鉄直通に対応した車両であることを明らかにしました。

横浜と秩父を結ぶ特急が走る?

 実際に「Laview」が地下鉄に乗り入れるとしたら、どのようなルートが考えられるのでしょうか。


有楽町線や副都心線に乗り入れている「S-TRAIN」は写真の40000系が使われている(2017年2月、恵 知仁撮影)。

「Laview」が運行される西武池袋線では、東京メトロの有楽町線と副都心線、東急電鉄の東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線との相互直通運転が行われています。また、2017年3月からは座席指定制の通勤列車「S-TRAIN」が運転を開始。クロスシートとトイレを備えた新型車両の40000系電車を使用し、平日は豊洲(有楽町線)〜所沢間で運転。土曜、休日は元町・中華街(みなとみらい線)〜西武秩父間を中心に運転されています。

「Laview」が特急用の車両であることを考えると、たとえば「S-TRAIN」の一部を「Laview」で運転したり、「S-TRAIN」とは別に「Laview」の地下鉄直通特急を設定することが考えられそうです。横浜と秩父を結ぶ特急が運転されるかもしれません。

 ちなみに、関東大手私鉄の特急列車(運賃とは別に特急料金などを支払う必要がある列車)のうち地下鉄に乗り入れている列車としては、小田急電鉄の特急ロマンスカーがあります。東武鉄道も2017年5月にまとめた中期経営計画に、特急列車の地下鉄への乗り入れを検討項目として盛り込みました。「Laview」の地下鉄対応も、こうした流れのひとつといえるでしょう。

 ただ、西武の飯田さんは「いまのところ(「Laview」地下鉄直通列車の)具体的な計画があるわけではありません」とも話し、地下鉄乗り入れは今後の課題という認識を示しました。地下鉄直通が実現するかどうかは、まだ分かりません。

 とはいえ、「Laview」が地下鉄直通に対応した車両であることは確か。地下鉄に乗り入れることで、東京都心から郊外まで乗り換えることなく移動できるなど利便性の向上も期待できます。今後の「Laview」の動向が注目されるところです。

【写真】会場に設置された「Laview」の黄色い座席


記者発表会の会場では「Laview」の座席も展示された(2018年10月29日、草町義和撮影)。