外国人労働者の受け入れにかじを切った日本も将来、ドイツと同じ社会風土になるかもしれない。

 ドイツ東部ザクセン州ケムニッツ市(旧東独)で8月26日、35歳のドイツ人男性がイラク出身とシリア出身の2人の難民にナイフで殺害されたことが発端となって、極右過激派やネオナチ、フーリガンが外国人、難民・移民排斥を訴え、路上で外国人を襲撃するなど暴動を起こした。一方9月1日には、それに反対する極左グループが極右グループを襲撃し、18人が負傷するなど険悪な社会になっている。

 極右派は8月27日のデモでは約6000人が結集し、「メルケルは退陣せよ」、「難民を止めろ」と書かれたプラカードを掲げたばかりか、ヒトラーを賛美し、ビンや花火玉を極左グループや警察部隊に向けて投げるなどして暴れた。9月1日のデモでは極右派は約8000人、反極右派は約3000人がデモに参加、極右と反極右の両サイドはその動員力を強めている。

 極右政党『ドイツのための選択肢』(AfD)のマルクス・フローンマイヤー連邦議員は、「国は国民を守るべき義務があるが、それができないのならば、自身で守る以外にない。ナイフを振りかざす難民を阻止すべきだ」とのコメントを発信し、極右過激派の外国人襲撃、リンチを擁護するとも受け取れる声明を出している。

 これに対しメルケル首相は、「路上で外国人を襲撃することは法治国家として絶対に認められない」との声明を出し、極右やネオナチストたちの外国人襲撃を厳しく批判した。

 「ドイツには旧西独VS旧東独の根強い対立がある。最大発行部数を誇るシュピーゲル誌によると、旧東独出身のメルケル首相は東独では最も嫌われている政治家といわれます。旧東独出身なのに、出身者を理解していないと受け取られているのです。ですからメルケル首相が旧東独の州を訪問するときは、反メルケル運動を警戒し、首相の身辺警備が強化さるくらいです」(国際ジャーナリスト)

 ドイツで2015年に100万人を超える難民、移民が殺到して以来、この問題は大きな政治的、社会的課題となってきた。先ごろ、サッカーのドイツ代表の1人、トルコ系移民出身のMFメスト・エジル選手が「独サッカー連盟内の人種差別主義」を挙げ、代表を辞任すると表明したことで、さらに混迷の度合いは深まっている。

 日本の未来は平穏無事であることを祈りたいものだ。