実際の就活の面接では思いもよらない質問が出てくることがある (写真:ふじよ / PIXTA)

就職活動の最終ゴールは内定であり、その前の関門が面接である。これから面接を実施する企業が増え始める。準備は万全だろうか?


面接の質問は野球のボールに似ている。打ちごろの直球の質問を投げてくる面接官もいる一方、より深く学生を理解するため、ボール球ギリギリの際どい質問を投げてくる面接官もいる。下手に打つと引っかかってゴロになる変化球の質問も多い。うまく打ち返して面接で好印象を得るには、まずどんな質問が繰り出されるのかを知る必要がある。

HR総研が楽天「みん就(みんなの就職活動日記)」と共同で行ったアンケート調査(2017年6月実施)から、ひとつ上の2018年卒の先輩が経験した「最も印象に残っている面接質問」を紹介したい。面接の傾向と対策を探っていこう。

面接の質問には定番がある。模擬面接などで経験済みかもしれないが、「なぜこの業界を志望したのですか」「なぜ当社なのですか」という志望動機や希望職種が代表的なものだ。それ以外の質問は人物を知るために行われる。

質問は人物を知るために行うもの

■代表的な質問例
「学生時代に打ち込んだことはありますか」
「小さい頃はどんな子どもでしたか」
「長所と短所をあげてください」
「趣味と特技を教えてください」
「座右の銘はありますか」
「あなたの挫折経験を教えてください」

​これらの質問は必ず聞かれる。ただ、今回の調査は「最も印象に残っている面接質問」を聞いたので、定番の質問はそれほど多くない。予測して面接に臨んでいるからだろう。

「最も印象に残っている面接質問」で目立って多いのは、比喩を使った自己紹介だ。「自分を○○に例えると何ですか?」という質問で、特に多いのは「動物に例えると何?」である。

「自分を動物に例えたら?という質問。都市伝説だと思っていたので、回答を準備しておらず、うまく答えられなかった」(拓殖大学・文系)、「自分を動物に例えると何ですか? 本当にこんな質問が出るんだなと思った」(愛知淑徳大学・文系)。

かなり多くの学生が準備不足で面接に臨んでいるようだが、かなり高い確率でこの質問に遭遇するので準備が必要だ。

とはいっても、何でもいいわけではない。多くの人にとって印象が悪い動物、たとえば蛇やハイエナなどがそう。目立つかもしれないが、マイナス評価の可能性が高い。好感度の高い動物を選ぶべきである。

身近にいる動物(イヌやネコなどのペット系)は安全だ。特にイヌに対するグッドイメージは強い。町中で見かける鳥もいいだろう(スズメ、ツバメ、ハト、メジロなど)。動物園の人気者(パンダ、ライオン、カバ、ゾウ、シマウマ)や水族館の魚やイルカもいい。

自分の長所に近い動物を選ぶ

こうした質問に対する回答のポイントは、論旨が明確であること。自己分析で見つけた長所(俊敏さ、協調性、対応力、好奇心、行動力、スタミナなど)に近い動物をあげて、似ている点を話せばいい。

「色に例えると何?」という質問もかなり多く、「動物に例えると何?」の半分くらいの学生があげている。注意したいのは、好きな色を聞かれているのではない、ということだ。自分を表す色を話さなくてはならない。このストーリーを作るのは動物よりも難しい。

色は無限にあり、表現する言葉も多い。赤系統の色だけでも紅、ピンク、桜色、桃色、唐紅、真紅、緋色、朱、えんじと多い。あまり難しい言葉を使うと、面接官に伝わらない可能性があるので、シンプルな名称(色鉛筆やクレヨンの基本12色)がいいだろう。

言葉は無難でも、ストーリーは個性的にしてほしい。色のイメージは1つではない。赤はエネルギッシュであると同時に、派手さ、危険のイメージを持つ。青は清潔で知的だが、冷たいイメージを持つ。色の持つ複数のイメージから何を選ぶかで、面接官の印象は変わってくる。

面接では漢字力も試される。「あなたを漢字1文字で例えると? というもの。何も思い浮かばず苦労した」(早稲田大学・文系)と準備なしでは苦戦する。「あなたを漢字1字で表すと?」(青山学院大学・文系)だけでなく、「自分を四字熟語で表してください」(宮崎大学・理系)と質問する企業もある。

動物や色も漢字も、準備なしで対応することは困難だ。特に、四字熟語は字や読みを間違って覚えていることがあるから、事前に回答を用意しておいた方がいい。

四字熟語は非常に数が多い。もっとも、漢字検定の資格を持っていない限り、面接官の四字熟語の知識はそれほど高いものではないから、面接官が知っている有名な四字熟語がいいだろう。コミュニケーションの基本は、共有する語彙で話すことだ。

「座右の銘 四字熟語」で検索すると、いい意味の四字熟語をたくさん知ることができる。例えば、一意専心、一期一会、勤倹力行、虚心坦懐、明朗快活などだ。自己分析で得られた自己像やこれからなりたい人物像を表す四字熟語をいくつか選んでおくといい。

「例えると何?」の質問のパターンは多い。動物や色、漢字はありふれているので、学生の意表を突こうとする面接官もいる。質問は多彩だ。ざっと紹介しておこう。

「あなたを植物に例えると何ですか?」(北海道大学・文系)
「サッカーのポジションに例えると、どのポジションですか?」(青山学院大学・文系)
「自分をお弁当の具に例えると?」(明治大学・文系)
「自分を武器に例えると何か?」(学習院大学・文系)
「歴史上の偉人に例えると?」(立命館大学・文系)
「あなたをものに例えると何?」(静岡県立大学・文系)
「あなたがスポーツの団体競技に例えると、どのポジションだと思いますか?(野球でもサッカーでもなんでもよい)」(甲南大学・文系)
「あなたを食べ物に例えるなら?」(近畿大学・文系)
「あなたを文房具に例えると何か?」(近畿大学・文系)
「あなたを野菜に例えると何ですか? その理由も」(東洋大学・文系)
「自分を数字に例えると?」(同志社女子大学・文系)
「あなたを家電に例えると何ですか?」(筑紫女学園大学・文系)
「ドラえもんのキャラクターに自分を例えると誰?」(京都女子大学・文系)
「あなたをすしのネタに例えると何ですか?」(九州大学・理系)
「自分を弊社の商品に例えると?」(近畿大学・理系)
「あなたを国に例えると?」(早稲田大学・文系)
「あなたを車の部品に例えるなら?」(早稲田大学・文系)
「あなたをおでんの具に例えると何ですか?」(明治学院大学・文系)

​「すし」や「おでん」など、毎年出てくる質問もあるので、もしかしたら同じ会社が毎年同じ質問をしている可能性もある。

ありきたりの回答でも落とされる?

いずれにしてもどれも即座に回答しにくい質問だ。ただ、正解がある質問ではないので、どう答えてもいい。面接官は答えの中身よりも、答え方を観察している。上記の質問で、特に数字は答えづらい。たぶん自然数(1、2、3……)を想定していると思うが、虚数や円周率のような無理数でもいいはずである。

2018年就活を戦った先輩の「最も印象に残っている面接質問」を紹介した。学生の中には、「自分を○○に例えると?」という質問は都市伝説だと思って高をくくっていた者もいたが、大きな勘違いだ。

定番の質問をやさしくつないで、学生の緊張を解きほぐす面接官もいるが、学生が想定していない質問によって、ふるいにかけようとする面接官もいる。次のような証言があった。

「世界三大発明とは何ですか。また、その項目に新たに付け加えるとしたら、何を加えますか(インターネットや通信技術といったありきたりな回答はすべて落としているようです)」(立正大学・文系)、「『データ』と『情報』の違いは何ですか?」(立正大学・文系)、「『目標』と『目的』の違いは何ですか?」(國學院大学・文系)を聞かれた学生もいる。

頻度は多くないが、面接ではこんな質問もあるという例を紹介しよう。

「あなたの理想の女性像は?」(武庫川女子大学・理系)
「入社前に1年猶予が与えられたら何をするか?」(神戸大学・文系)
「好きな人から好きと言われたら、すぐに付き合うタイプですか?」(明治学院大学・文系)
「弊社には向いてないと感じるのだけれど、その点はどう思われますか?」(大阪産業大学・理系)
「40歳になったとき、どうなっていたいか?」(東京農工大学・理系)
「京都でデートするならどんなコースを回るか?」(立命館大学・文系)
「辞めなくてはいけない時はどんな時か?」(大妻女子大学・文系)
「あなたが無人島に何か1つ持って行くとしたら、何を持って行きますか?」(駒澤大学・文系)
「神様がいるのなら、何を願うか?」(神戸女学院大学・文系)
「あなたの町の名産品、有名なものなどをアピールしてください」(南山大学・文系)
「面接会場から出てすぐに地震が起きました。あなたが取る行動を3つ教えて下さい」(鳥取大学・文系)

”NG質問”を知らない面接官は多い

​こうなってくると、とても回答を用意しておくことなど不可能である。とはいえ、こんな質問が出ることもあると知っておくだけでも、似たような質問が出た時に焦らなくて済む。​​​​​​​​


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厚生労働省の「公正な採用選考について」という指針は、家族構成、住宅状況、宗教、支持政党、尊敬する人物、購読新聞、愛読書に関する質問を控えるよう求めているが、あまり守られていないようだ。多くの学生が家族構成についての質問を受けており、その質問が禁止されていることを知っている学生もいる。

「家族構成はなぜ聞かれたか、わかりませんでした」(愛知学院大学・文系)
「家族構成について。本来ならば聞いてはいけないはずだが、複数の企業から質問された」(神戸大学・文系)
「家族の名前を漢字で、親の年齢も聞かれた」(成城大学・文系)

​尊敬する人物、新聞、愛読書を聞く企業はとても多いが、学生が禁止されていることを知っているかどうかは、わからない。

「自身が今まで生きてきて会った人の中で尊敬できると感じた人はどのような人か?」(東京農工大学・理系)
「最近、感動した本や映画、番組を紹介してください」(大阪大学・文系)
「なぜ君は日本経済新聞を読んでいるのですか?」(同志社大学・文系)

​これらの質問は厚労省の指針に反する内容だが、面接官に悪意があるわけではなく、面接官教育で指針が周知されていないのではないかと感じる。新卒採用での尊敬する人物や愛読書についての質問は、人間性を知るために行われており、差別を目的としているわけではない。もし聞かれたとしても、「違反質問だ」と目くじらを立てるのではなく、素直に答えるようにしよう。

ただ、企業側にも、考えてもらいたい。ネットニュースで事足りると、今や新聞を購読していない学生が大半だし、「愛読書」といえるほど読書に勤しむ学生も激減している。もはやかつてのような回答を期待することのできないこれらの質問は無意味ともいえる。それよりもある食品会社がエントリーシートで聞いている、「カラオケの十八番を教えてください」の方がよほど学生の人となりを推し量ることができそうだ。

いずれにしても短期間の就活。面接質問は無駄なく効果的にこなしてもらいたい。