ストイコビッチ(左)とポドルスキ(右)。両者はともにJリーグの水準を高めた助っ人たちだ。 (C) Getty Images

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 私は11月下旬から12月の初めにかけて、日本を訪ねていた。そして、幸運なことに最終局面を迎えていたJリーグを3試合も見る機会に恵まれた。
 
 観戦したチームのなかで、最も興味深かったのは、浦和レッズだ。彼らはアジアチャンピオンズ・リーグ(ACL)では大会を制するだけの実力を持っていたにもかかわらず、Jリーグでは優勝した川崎フロンターレと勝点23差の7位に終わっていた。
 
 なぜなのか? 私はリーグの競争レベルが高まっているということなのだろうと考える。実際、11月29日に埼玉スタジアムで行なわれた33節の浦和と川崎の試合で、1-0と勝利した後者は終始、主導権を握りながらプレーしていた。浦和がACL決勝を控えてメンバーを落としていたとはいえ、その内容と結果で私の考えを確かなものになった。
 
 Jリーグの創成期といえば、ジーコ(鹿島アントラーズ)やガリー・リネカー(名古屋グランパス)、フリスト・ストイチコフ(柏レイソル)、ピエール・リトバルスキー(ジェフ市原/現ジェフ千葉)、さらにはドラガン・ストイコビッチ(名古屋)といった錚々たるスターたちが華麗なプレーでファンを魅了していた。そのことは英国でも伝えられている。
 
 その時代は多くの日本人選手が、クラブに在籍している海外のスター選手に圧倒され、リーグの主役の座を奪われていた。
 
 しかし、それから20年以上の月日が流れ、今のJリーグには助っ人外国人選手たちと遜色のないクオリティーを持つ有能な日本人選手が増えている。それも競争力を高めている要因なのだろう。
 
 もちろん、日本という国がバブル期にあった前述の時代に比べ、予算も違うため、欧州でもトップクラスの外国人選手を容易にはクラブに招けないという事情はある。しかし、助っ人と日本人選手の間の力の差は確実に縮まっていると私は思う。
 
 それ自体は決して悪いことではない。しかし、私は、Jリーグのクオリティーをもう一段、いや二段階上げるために、ハイレベルな助っ人を補強しなくてはならないとも感じている。
 
 プレミアリーグもイングランド人だけではあそこまでのハイレベルな戦いは見られなかったはずだ。ここ十数年の間に監督を含め、国外の有能な人材を招き入れたことで、リーグのレベルはより高いクオリティーに昇華されたのだ。
 イングランド同様、リーグのレベルアップを促す補強を施すために、いわゆる“DAZNマネー”には大きな期待をしている。
 
 日本のサッカーファンの一部は、DAZNの参入に懐疑的な声を上げていたとも聞いているが、私は逆に彼らはJリーグに変革を起こす救世主だと考えている。
 
 DAZNとJリーグは10年にも及ぶ長期契約を結んだ。よって、投資の効果が見え始めるのには時間を要するだろうが、各クラブはこれまで以上に補強に金を落とし込めるはず。期待する価値は大いにある。
 
 ここ数年で中国リーグやMLSが台頭し、キャリアの晩年を迎えたスター選手の多くが、給与も含めてそのどちらかに活躍の場を求めることが少なくない。カルロス・テベス(上海申花)やアンドレア・ピルロ(元ニューヨーク・シティ)辺りがそうだ。
 
 そうした選手の加入もあり、中国リーグとMLSは戦いのレベルが格段に上がり、さらに人気を博したことで英国でも試合を確認できるようになった。
 
 日本という国には、素晴らしい環境があり、助っ人外国人が生活に困るようなことはないはずだ。となれば、問題はサラリーだけ。Jリーグ各クラブは、DAZNマネーを利用した海外からの選手補強、あるいは名うての指揮官の招聘をもっと積極的に行なってもいいのではないだろうか。
 
取材・文●スティーブ・マッケンジー(サッカーダイジェスト・ヨーロッパ)
 
【PROFILE】
スティーブ・マッケンジー (STEVE MACKENZIE)
profile/1968年6月7日にロンドンに生まれる。ウェストハムとサウサンプトンのユースでのプレー経験があり、とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からサポーターになった。また、スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国の大学で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝に輝く。