千葉期待の新エース、ラリベイ。湘南との大一番では60分から登場し、いまひとつ流れに乗れなかった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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[J2リーグ5節]湘南 2-0 千葉/3月25日/BMWス
 
 リーガ・エスパニョーラ1部で2シーズン連続2桁得点の実績を引っ提げ、日本に上陸したのが、ジェフ千葉のFWホアキン・ラリベイだ。先日サッカーダイジェストWebが掲載した「Jリーガー推定市場価格ランキング」において堂々の総合2位(4億8000万円)に入り、FW部門ではトップの数値だった。アルゼンチン人ストライカーへの期待は俄然、高まっている。
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 そこで、ひとつの疑問が浮かぶ。なぜ、資金が潤沢とは言えない千葉がこれだけの高い評価を得ている選手を獲得できたの。話は、プレシーズンに遡る。
 
 チームは新たなストライカーを求め、何人かの外国籍選手と接触を図っていた。その中で、当初の第1候補だったナイジェリア代表歴を持つ点取り屋との交渉が決裂。方向転換を強いられ、高橋悠太GMが次のターゲットと話を進めたが、そちらも交渉は不調に終わる。気付けばチームは始動し、新たな得点源は不在のまま、キャンプインを迎えた。
 
 そのタイミングで獲得候補に浮上したのが、ラリベイである。昨シーズン、UAEのバニーヤースでプレーしていた男は契約を6か月残していたが、自らの意思で解除。そのため、千葉は移籍金なしで獲得できたのだ。また、バニーヤースの僚友で元千葉のマーク・ミリガンから「千葉は素晴らしいと聞いていた」(ラリベイ)と助言をもらい、「そもそも挑戦するのが好き」という彼自身の好奇心旺盛な性格も、日本行きを後押しした。
 
 さて、やはり気になるのはそのパフォーマンスだ。5節を終了したJ2リーグで全試合に出場しているが、得点はいまだゼロ。現状では期待に応えられていない。

 3月25日の湘南ベルマーレ戦(5節)では1点ビハインドの60分からピッチに登場。だが、アンドレ・バイアを中心とした相手の守備網を前に沈黙を余儀なくされた。「途中からの出場で、しかも敵ががっちり守備を固めていたので難しかった」(ラリベイ)と、ほとんど見せ場を作れず、シュートは1本しか撃てなかった。
 ただ、それまでの4試合の出来については、及第点を与えてもいいだろう。足下の巧さを活かしたポストプレーの精度はJ2で図抜けており、MF北爪建吾も「ボールコントロールに優れている」と称える。あとは、持ち前の空中戦の強さと駆け引きの巧さをいかにゴールに結びつけられるか。
 
 湘南戦の83分に見せた一撃は、彼の特長をよく表わすシーンだった。左サイドを駆け上がった比嘉祐介のアーリークロスに反応し、DFとGKの間にすっと潜り込んでヘディングで合わせた。惜しくも枠を捉えられなかったが、周囲からタイミングよくボールが配給されれば、敵ゴール前で脅威となるに違いない。「ボールが2、3回しか来なかったので、なかなか上げられなかった」とは比嘉の言葉。ラリベイの長所を引き出すためには、チームとしてクロスの本数と質を高めたいところだ。
 
 千葉の浮沈の鍵を握る新助っ人の値打ちは過去のものなのか。それとも、期待通りのタレントなのか。「日本とヨーロッパで、さほど違いは感じていない。インテンシティーが高く、技術も高いと思う。そういう意味ではアルゼンチンリーグとも近いので、僕自身に戸惑いはないよ」と語るラリベイ。自身の価値を証明するには、結果しかない。
 
 日本のサッカーには早くも適合しつつあり、相性は良さそうな印象だ。プレースタイルがハマれば、ゴールラッシュを決め込んでもおかしくない。そう思わせる気配は漂わせており、実際に、そのポテンシャルは折り紙付きだ。
 
 はたして、新生ジェフはこの「FW部門トップ」の個性を存分に活用できるか。シーズン前半戦のひとつの見どころと言える。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)