鉄道係員に対する暴力行為が、2015年度は全国で873件発生していました。加害者の約6割は「飲酒あり」で、打撲や肋骨骨折に至った事例も報告されています。

都道府県別では東京都が件数トップ

 国土交通省は2016年12月12日(月)、鉄道係員への暴力行為が、2015年度は前年度比14件減の873件あったと発表しました。

 都道府県別では、東京都がもっとも多く308件。次いで神奈川県113件、埼玉県71件と続きます。警察に届け出た件数は全国合計で526件でした。

暴力行為の加害者のうち、およそ6割が「飲酒あり」だった(画像出典:国土交通省)。

 暴力行為のうち全体の62%にあたる537件の加害者が酒を飲んでおり、飲酒なしが178件(20%)、不明が158件(18%)です。

打撲や肋骨骨折も 実際の事例と抑止策は

 暴力行為の事例としては、次のようなことが。

 3月のある木曜日14時ごろ、自動券売機が異常警報を発しているため駅係員が向かうと、そこには酩酊している70代男性が。「きっぷが買えない。どうなっているんだ」とのことで、券売機を見たところ、ICカード挿入部に乗車券が詰まっていました。その後男性が壁を激しくたたいたため、事情を聴くために駅事務室へ案内したところ、右手で駅係員の右胸を殴打。右第8肋骨不全骨折と右胸挫傷(全治14日間)を負わせた加害者の男性は、東京簡易裁判所に起訴されました。

 12月のある水曜日22時ごろには、駆け込み乗車をしようとして乗れなかった30代男性(飲酒あり)が、駅ホームで女性駅係員の背中をけり、全治5日の打撲傷を負わせました。

 このような暴力行為を抑止する取り組みとして、国土交通省は、警察官と連携した巡回やガードマンによる巡回、護身術訓練への参加、暴力行為防止ポスターの掲出、さすまた、カラーボール、防犯ブザーなど防犯グッズの配備、負荷により外れるネクタイの着用などを紹介。暴力行為の発生件数は高い水準にあることから、今年度も引き続き警察などの関係者と連携して、暴力行為の撲滅に向けて広報、啓発活動などを進めていくとしています。

【グラフ】暴力行為の件数、近年の傾向は?

鉄道係員に対する暴力行為の件数は、集計を始めた2012(平成24)年度からほぼ横ばい(画像出典:国土交通省)。