ただ、完成時には四季の像のうち、春の頭部だけはオリジナルが爆風で飛ばされたまま、見つけることができなく、泣く泣く諦めたのですが、でも、神様のご加護があったのでしょう、なんと、1961年アルノ川の清掃時に発見され、元の位置に納められて現在の姿となりました。

現在はフィレンツェの街だけではなく、イタリア国内でももっとも美しい橋でありもっともエレガントな橋として注目されるサンタ・トリニタ橋。13世紀初期に架設されてから、数えきれないほどの不幸に出遭った橋なのですが、へこたれず今、こうして私たちに華麗な姿を見せてくれています。

詩人ダンテも喜んでくれていると思いますが、何よりもこの橋のおかげで「神曲」が誕生したことと、この橋があったからこそ、ダンテという偉大なる作家が誕生したことに感謝したいと思います。

《余談:フィレンツェの街の中心部のダンテの名前を冠したダンテ・アリギエーリ通りVia Dante Alighierに面して建つ彼の生家は、現在はダンテが生まれ育った家として当時の姿を再現して作られたダンテの生家博物館として一般に開放されています。また近くには、サンタ・マルゲリータ・デイ・チェルキ教会(Chiesa di Santa Margherita deiCerchi)が建っていますが、そこはダンテが初恋の人ベアトリーチェと初めて出会った場所であり、彼女の墓所が設けられています》

《註:文中の歴史や年代などは各街の観光局サイト、取材時に入手したその他の資料、ウィキペディアなど参考にさせて頂いています》

(トラベルライター、作家 市川 昭子)