冬場の入浴中に脳卒中などを起こし溺死する高齢者の事故が増えているが、消費者庁は注意を呼びかけるために、2016年1月22日、「高齢者の入浴方法」の調査結果と正しい入浴法を発表した。

飲酒直後や鼻唄を歌う長湯は禁物

「風呂場の溺死」についてはさまざまな機関の調査があり、実数を把握するのが難しい。「心不全」など病死で届けられ、死んだ場所がはっきりしなかったり、事故死として消防・警察が扱ったりするケースがあるからだ。

厚生労働省の人口動態統計では、家庭の浴槽の溺死事故は2014年に全国4866人で、10年前の1.7倍に増加、うち91%が65歳以上だ。一方、東京都健康長寿医療センターが、消防の記録をもとに推計した数字では、2012年以降、年間約1万4000人で推移、交通事故死者(約4000人前後)の3倍以上になる。

消費者庁が2015年12月に行なった調査は、自宅に浴槽のある55歳以上の3900人が対象。自宅での入浴方法について尋ね、安全とされる「湯温41度以下の入浴」と回答したのは59%、「入浴時間を10分未満」としたのは67%で、両方を満たしていたのは42%だった。

浴槽での事故死は、寒い浴室から熱い湯に浸かる時の急激な温度変化や、高温のお湯による血圧の急上昇が原因のケースが多い。消費者庁などが推奨する安全な入浴方法は以下のとおりである。

(1)入浴前に脱衣場や浴室を暖めて、入浴時の温度差を少なくする。

(2)湯温は39〜41度のぬるめで、長湯はしない(10分未満に)。

(3)浴槽から急に立ち上がらない(血圧が急上昇するため)。

(4)血圧が下がる飲酒、食事直後の入浴は控える。

(5)高齢者が入浴する時は、同居人に一声かける。

(6)入浴後は水分を補給する。