「火宅の人」が見せた素顔人間なにものか……、もう一度出直させてみたかった。出来得れば、その修羅のただ中で、正確を得たかった-。「最後の無頼派」と呼ばれた作家、檀一雄。彼は自身の作品についてこう振り返っている。人間とは何か。檀は問い続け、作品に投影させてきた。その代表作が、遺作『火宅の人』だ。昭和31(1956)年、妻子ある44歳の檀は、29歳の新劇女優・入江杏子と男女の関係になり、その恋は6年続く。その惑いと