本日打ち上げられる人工衛星「はやぶさ2」。ところで人工衛星ってものすごい数あるけれども、なぜどんな種類のものが、どんな役割のものがあったんだろう。擬人化されたキャラクターを使って、人工衛星たちの物語をたどります。

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12月3日(水)13時22分04秒。
人工衛星「はやぶさ2」が打ち上げられます。
本来は11月30日打ち上げ予定で、天候の問題で延期になりました。

どんな種類があるのか。どこを回っているのか。
『現代萌衛星図鑑第2集』は、人工衛星の活躍を知ることのできる入門書です。

「全記録集」ではありません。
はやぶさ、かぐや、だいち、ひとみ、HTV、あかつき、はやぶさ2。
人工衛星の活動の中で、ドラマチックだった部分をピックアップ。構造の図解を載せながら、出来事を物語風に綴っていく本です。
成功事例やトラブルをあげていけば、自然と「どんな人工衛星なのか」がわかる。開発の歴史もわかる。

たとえば、陸域観測技術衛星「だいち」。寿命限界まで世界中の地形や災害を撮影しました。
特に東日本大震災の時は、東北の様子を克明に記録し、地上に届けました。
2011年5月12日午前10時50分、寿命により、活動を停止。
同年10月18日。和歌山県の観測所から、停止したまま地球を回る彼女に向けて、一本のレーザーを天に発振するセレモニーが行われました。

無人宇宙ステーション補給機「HTV」。無人空中停止からのドッキング、という新方式です。
初めての開発ゆえに事故が危ぶまれ、NASAからは「HTVが飛んでこなければ宇宙ステーションは安全だ」とまで揶揄されました。
ところが、荷物を運んでいたスペースシャトル計画の縮小で急遽必要とされ、稼働。
ドッキング成功時、宇宙ステーションのクルーは、HTVの与圧部内に日の丸をはためかせるサプライズで彼女を迎えました。

・打ち上げられる大きな存在意義を持っている。
・思わぬアクシデントを、みんなの力で乗り越えていかなければいけない。
・誕生(打ち上げ)と、最期が必ずある。
・世界中の多くの人が応援している。
人工衛星は、どうしても一人の人間のように感じられてしまいます。擬人化したくなりますよ。

特に、帰還できるかどうか難しいとされた「はやぶさ」、2010年帰還の時。
プロジェクトチームは「最後に自分の生まれ故郷を見せてやろう」と人生最期のシャッターを切らせます。
はやぶさは一つのカプセルを地上に届け、キラキラと眩しく輝きながら、自分の身体を燃やして消えていきました。
当時この写真と映像を見て、数多くの擬人化はやぶさイラストがネット上にアップされました。
『探査機はやぶささん』というJAXA解説入りのマンガ(傑作!)も出版されています。

この本に収録されている、超小型地球観測実証衛星「ひとみ」に至っては、公式(東京大学中須賀・船瀬研究室)が、最初から擬人化されています。
ひとみ(@Hitomi_prism)さん | Twitter
「あかつき」のように、マスコットキャラクター化されている人工衛星も多いです。

科学が生んだ、人間のために宇宙に飛び出す存在。
長く生き延びてがんばったのもいれば、急死してしまったのもたくさんある。
「彼」「彼女」って呼んでいいんじゃないかな。

今回の小惑星探査機「はやぶさ2」にも多くの期待が寄せられています。
「国民的アイドルを姉にもち、デビュー前からむやみやたらに重い期待がかけられる」はやぶさ2。
構造を図解した後、著者は最後にこう書きます。

「地味な展開が実現することこそが、何よりもドラマチックなのです」

地球と火星の近くを回る小惑星の地下物質を採取。帰還予定は2020年。
今日、彼女は旅立ちます。

しきしまふげん・へかとん『現代萌衛星図鑑第2集』

(たまごまご)