エロ本文化は過去の遺産か? あの黄金時代、90年代をプレイバック【ブルセラ・マニア編】
90年代初頭にバブルが崩壊し、世には不景気の波が押し寄せていたが、エロ本業界は好景気に沸いていた。最も手軽で安い娯楽としてニーズがあったせいもあるだろう。
出版不況の現在からは考えられないが、エロ本でも発行部数10万部以上は当たり前だったのだ。売れていたからこそ冒険もできた。
しかし21世紀に入るとインターネットの普及によりエロ本の人気は急落。過激なエロを無料で大量に楽しめるインターネットの普及により現在は壊滅寸前である。
■お菓子系
ラッキークレープ(バウハウス)、クリーム(ミリオン出版)、ワッフル(海王社)
AV女優のヌードよりも10代美少女のセーラー服やブルマー姿のほうが萌える! という発想で作られたのがこれらの雑誌。甘い物の誌名が多かったため「お菓子系」と呼ばれた。露出度こそ低いが、へたなヌードよりも興奮させてくれた。ここからAVデビューしたコも多かったが……。
■A5判エロ本
スーパー写真塾(コアマガジン)、熱烈投稿(少年出版社)、台風クラブ(東京三世社)
明らかに「中高生向け」に作られたエロ本。教科書サイズなので、隠しやすいというメリットもあった。B級C級アイドル情報も満載なのでディープなアイドルファンも愛読していた。今では掲載不可能な隠し撮り投稿写真も人気コーナーだった。アイドルのパンチラ写真に興奮した人も多いはずだ。
■過激水着系
Tフロント女子高生(少年出版社)
18歳未満はヌードにしちゃいけない。じゃあ、その手前までならいいかとばかりにヒモのような水着を使用。登場するモデルがかわいくないコばかりというのも逆に生々しくて興奮した。現在では絶対に掲載不可能な未成年の過激な露出も多く、最近は高価なプレミア価格で取引されているという。
■素人投稿
ニャン2倶楽部(コアマガジン)
今なお健在な投稿写真誌。素人カップルが撮影した愛のプレイは生々しく、プロ顔負けの過激さだ。独特のサディスティックなキャッチコピーのセンスは、編集長の名を取って「夏岡文体」と呼ばれ、エロ本業界でも神格化されている。野外露出にSMプレイ。素人ならではの怖いもの知らずのエスカレートぶり。上級者向けのエロ本だった。
■ファッションSM
S&Mスナイパー(ミリオン出版)、TOPAZ(英知出版)
79年創刊の『スナイパー』が「オシャレSM」の代表格。荒木経惟撮影のSMグラビアが文化の薫りを強調してヒットに。両誌とも村上龍の『トパーズ』のヒットの影響で、従来の土着的なSMとは違った「オシャレなSM」を世間にアピールすることに成功。「これならステキ!」と女性層も大いに取り込む。サブカル要素も強めだった。
■マニア誌
お尻倶楽部(三和出版)
90年代はマニアックなフェチ専門誌が乱立した細分化の時代でもある。ポップな表紙だが誌面をめくると、ノンケの人には目を背けたくなるようなマニアックなスカトロ写真が連発。スカトロというディープな世界を真っ向から取り上げてヒットさせた『お尻倶楽部』はエロ本界の伝説である。
(取材・文/大野智己 尾谷幸憲 安田理央[資料提供も])