TOKYO IDOL FESTIVAL2014のHOT STAGEでのHKT48のライブ。写真中央の指原莉乃の右で踊るのは矢吹奈子。指原が目下、田中美久とあわせて「なこみ

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アイドルの夏、日本の夏。ドドドドン!(花火の音)
「日本、そして世界のアイドルファンが集う世界最大のアイドルフェス」を謳うTOKYO IDOL FESTIVAL(以下、TIFと略)が今年も、8月2日と3日の2日間、東京の青海地区周辺で開催された。

その1日目、TIFのメインステージである「HOT STAGE」にHKT48が出演したときのこと。MC中、メンバーの指原莉乃が、「松井玲奈さん、盛り上がってますかー?」といきなりぶち込んだ。松井玲奈とは、HKTと同じくAKB48グループに属するSKE48のメンバー(現在は乃木坂46と兼任)。その彼女が、HKTのあと同じステージに出るベイビーレイズを観るため、ここに来ているというのだ。指原の発言に沸く客席。「ナカーマ!」と思ったアイドルファンも多かったに違いない。私も、その一人である。

松井のベイビーレイズ好きはファンのあいだではよく知られるところだが、翌々日にはSKE48の地元・愛知の海水浴場でのライブを控えていたし、まさか忙しいスケジュールを縫ってまで来ているとは思わなかった。どこまでベイビーレイズ推しなんだ。というか、松井の来場をバラした指原からして、アイドルになる以前は熱烈なハロー!プロジェクトファンとして九州ではちょっと知られた存在だった。それがいまや、HKT48の後輩を戦略立てて売り出すなど、プロデューサー業にも余念がない。この日のステージでも、MCで後輩を紹介したり、ときにはツッコまれたりしつつ(なかには指原の過去のスキャンダルをネタにした痛烈なツッコミも)、引き立て役に徹していた。アイドルファンがアイドルになって、同時にアイドルをプロデュースする、それが現在の日本のアイドル界なのである。

■あの「1000年に1人の美少女」も出演
さて、私がTIFに来たのはHKT48を観ることだけが目的ではない。たしかにここ数年はもっぱらHKTやSKEなど48グループばかりを追いかけてきて、ほかのアイドルを観る機会があまりなかった。これは経済的・物理的な事情から、ほかにまでなかなか手が回らなかったというのが正直なところだ。それでもTIFなら、複数のステージをうまく回れば、これまでチェックしきれていなかったアイドルのライブも観られるし、あまつさえ、未知のアイドルと出会う可能性だっておおいにあるだろう。

TIFは今年で5回目を数える。しかし私は今回が初参加。一昨年と昨年はエキレビでもとりあげながら、いずれも都合がつかず会場まで行けなかったのだ。それが今年、ようやく取材者という立場で念願がかなえられた。

新たなアイドルとの出会いに期待を胸をふくらませながら、8月2日の午前8時すぎ、会場にやって来た。この日はエキレビのライターの一人で、今回はカメラマンをお願いした丸本大輔さんと行動をともにする。まあ、いざフェスが始まると、同行者そっちのけでライブに夢中になっていたのですが(ひどい)。

フェスが始まったのは、いくつかあるステージのうち、フジテレビ湾岸スタジオ前の芝生広場に設けられた「SMILE GARDEN」からだった。オープニングアクトを務めたスマイレージに始まり、日系ブラジル人の女の子5人組のリンダ3世、それからアイドリング!!!とAeLL.のコラボ、ハロプロ研修生出身者で結成されたアップアップガールズ(仮)、それから福岡を拠点とするLinQ(リンク)と、1時間40分ものあいだステージが続く。このうちアップアップガールズ(仮)とアイドリング!!!以外は、私は生で観るのは初めて。LinQの出演中、観覧スペースでフリを完コピして踊っている集団がいたのには驚いた。

私がステージに釘づけになっているあいだ、カメラ担当の丸本さんは、少しでもいい撮影ポイントを確保するべく、ひと足先に次の目的地であるHOT STAGEに行っていた。HOT STAGEは昨年はZepp Tokyoに設けられたが、今年はフジテレビ(同局はTIFの実行委員会の主管でもある)のイベント「お台場新大陸」の会場の一部に設けられ、野外ステージとなった。SMILE GARDENからどう行けばいいのかよくわからず、ちょっと迷いながらもようやく丸本さんと落ち合う。

HOT STAGEでの目的は、冒頭に紹介したHKT48のほか、Rev.from DVL、東京女子流、ベイビーレイズを観ること。このうちRev.from DVLはHKTと同じく福岡を拠点とするグループだ。グループ名の認知度はまだまだかもしれないが、「1000年に1人の美少女」「天使すぎるアイドル」としていま話題の橋本環奈を擁するグループ、といえばわかる人は多いだろう。

このときRevのメンバーは、福岡ソフトバンクホークスの応援歌「いざゆけ若鷹軍団」を入場曲に、客席にボールを投げこみながら登場。ステージに全員がそろったところで“選手宣誓”を行なった。衣装も、ホークスのユニフォームと地元色を打ち出していた。

ルックスは皆かわいらしいが、ダンスは本格的で、曲の途中にバク転が入ったりする。すでに一曲目として、メジャーデビュー曲の「LOVE―arigatou―」を歌い終えたときには、全員すっかり汗だくになっていた。その後も、8月発売のニューシングル「Do my best!!」をはじめ、4曲立て続けに披露。ラストは「逢いにきんしゃい」と、ご当地言葉をタイトルにした曲で締めた。それにしてもRevといいHKTといいLinQといい、福岡勢の活躍が本当に目立つ。「逢いにきんしゃい」と言われなくとも、福岡には1週間ぐらい滞在してアイドルを存分に見て回りたいと真剣に思う。

TIF初参戦のRevに続きステージに立った東京女子流は、2010年以来5年連続の出演となる実力派だ。「LolitA Strawberry in summer」での上着の裾をめくる振りつけが悩ましい。さらにそのあと出演したベイビーレイズは、昨年放送のドラマ「あまちゃん」の挿入歌「暦の上ではディセンバー」で一般に知られるようになり、目下、日本武道館でのコンサート開催をめざし署名を募集中だ。このステージのあと、メンバーたちが会場周辺をファンを引き連れて署名を呼びかけながら歩いているのを見かけ、思わずついていってしまったというのはナイショである。

■もうひとつのドラマ、「めざせHOT STAGE!!」
HOT STAGEで目的の出演者を観終えたあと、遅い昼食を挟んで、今度はフジテレビ本社前に設置された「マイナビステージ」に行く。こちらのステージでは、「めざせHOT STAGE!! 全国TIF盛り上げ女王決定戦」というイベントが午前と午後に分けて開催されていた。これは、TIFのメインステージであるHOT STAGEへの出演をめざして、全国のご当地アイドルがパフォーマンスを競い合うというもの。午前中の第1ブロックには東日本の、午後の第2ブロックには西日本のアイドルが出演、それぞれ観客によるネット投票を行ない、各ブロックで最多票数を得た2組が翌日のHOT STAGEに進出できる。

私たちが観に行ったのは(途中からではあるが)、その第2ブロック。出場するグループのうち私がまともに知っていたのは、大阪のJK21ぐらい(それも虫刺され薬のCMソングを歌っていたので)。ほとんど知らないグループばかりだったのだけれども、全体的にダンスの水準は高く、どのグループが上のステージに進出してもおかしくないように思えた。ただ、それだけに決め手がなかなか見つからない。

この間、丸本さんは地元・広島のSPL∞ASHのステージを観たあと離脱する。私の心をがっちりつかむグループが現れたのは、その直後のことだった。それは福岡(またしても)から来たグループで、GALETTe(ガレット)という。このときワインレッドのドレスをまとった4人のメンバーが、ユーロビート調の曲を激しく歌い踊る姿が本当にかっこよくて、すっかり目を奪われてしまった。

MCでは、赤い衣装はHOT STAGEに立つことを意識してのものだと明かされる。もちろん決定戦に出場したグループはみな、さらに上のステージに立つことを熱望していたわけだけれども、GALETTeはその想いが一つ上回っていたような気がした。

参加グループすべてが出演を終えたところで、私は迷わずGALETTeに投票した。はたしてその日の深夜、TIFのオフィシャルサイトを確認すると、第1ブロックからは石川のおやゆびプリンセスが、そして第2ブロックからはGALETTeが選ばれたことを知る。これはうれしい。明日は彼女たちの晴れ舞台をぜひ観に行かねば。

■いまどきのアイドルはアクシデントにも見事に対応
フジテレビ前のステージを見終えた頃には、1日目もそろそろ日没を迎えようとしていた。しかしフェスはまだ終わらない。今度は湾岸スタジオ内の「DOLL FACTORY」に移動する。だが行ってみると、スタジオの敷地を出て歩道にまで入場希望者が長蛇の列をなしていた。スタジオの収容人数にはかぎりがあるので、入場制限がかかっていたのだ。

ようやくスタジオの入口前まで来たあたりで、同じ列に並んでいた青年からふいに「どのアイドルを見に来たんですか?」と聞かれる。「(出演は)ちょっとあとの時間だけど、小桃音まいとバニラビーンズ」とおずおず答えると、「僕はアイドルカレッジを見に来たんですけど、これ、入れますかねー」との返事。スケジュール表を見ると、そのグループの出演時間が迫っていた。聞けば、彼はそれだけ見たあと、今晩中に地元(それもかなり遠方だった)へ帰るのだという。焦るのも当然だ。それでも何とか、このあとスタジオからかなりの人数が出てきて、無事に私たちも入場することができた。例の青年は、きっと心置きなく帰宅の途に就いたことだろう。

DOLL FACTORYには、往年のテレビのアイドル番組を彷彿とさせる南国風の派手なセットが組まれていた。思えば、いまでこそ専用劇場やライブハウス、あるいは路上などから世に出てくるアイドルが一般化しつつあるが、かつてはこういうテレビスタジオがもっぱらアイドルを生み育ててきたのだ。そんなスタジオの片隅からステージを観ていると、ついプロデューサー気取りで腕を組んでしまう。

私が入場したのは、仙台を拠点とするDorothy Little Happyの出番の最中だった。スタジオ内の非現実的空間にあっても、現代のアイドルは見事にハマっていた。でもそこでの振る舞いは昔のアイドルとはやっぱり違う。それをとくに感じたのは、夢みるアドレセンスというグループが登場したときだった。

このとき、流れ始めた曲が歌に入る前に途切れてしまう。音声が復活するまでのあいだ、メンバーたちは観客に「みんな温まってる?」と聞いたりして場をつなぐ。しばらくしてふたたび曲が流れ始めたものの、また途切れる。ここでもメンバーたちはすかさず「いまの(曲が途切れたの)は夢のなかだったんだからね!」「私たち、夢みるアドレセンスだから!」とフォロー。グループ名に引っ掛けたのがまた見事だった。いまのアイドルはライブでの活動が圧倒的に多いだけに、こうしたアクシデントにも即座に対応することができるのだろう。

不勉強にも、お目当ての小桃音まいとバニラビーンズまでに登場した7組のうち、ドロシー以外は名前すらよく知らないアイドルだった。それでも、出てくるアイドルはどれも個性的で、ずっと飽きることなく観ることができた。たとえば寺嶋由芙は、岡村靖幸の「だいすき」をカバー、そこで「女の子のためにきょうは歌うよ」という歌詞を「男の子」に変えて歌っているのを聴き、ちゃんとアイドルソングになってる! と感心した。というか、かつての岡村ちゃん自身がアイドルだったということに、あらためて気づかされた。

また、激しいダンスを披露するアイドルたちが多いなか、2人組のFaint*Starは、手振りを中心としたポージングダンスで、楽曲もおしゃれ。どこか、このあと出てくるバニラビーンズと似ている。そのあとに出てきたリンクスは一転して、テンションアゲアゲのパフォーマンスを披露、ただただ圧倒されてしまう。迷彩柄の襟・スカートのセーラー服という衣装も目を惹いた。

それから満を持して小桃音まいが登場。小桃音は、ステージから観客を小旗で誘導しながら、右へ左へ移動するパフォーマンスで知られ、「民族大移動系アイドル」を自称する。昨年のTIFをニコニコ生放送で視聴中、初めて“民族大移動”を目にして以来、ぜひ参加したいと思っていたのだ。その希望が1年がかりでようやくかなった。

スタジオライブの終盤、バニラビーンズ、さらに大人系ユニットのprediaがトリという流れは、夜も更けた時間帯にふさわしかった。バニビの2人はTIFに4年前の初回から参加し続ける。いまでは参加するアイドルのなかでも年長世代にあたるだけに、今回共演した、あるグループの小学生メンバーと一緒に写真を撮ったら「保母さんみたい」と言われたと、MCで語っていた。

スタジオを出たのは22時近く。全体を振り返れば、ブルーハーツの名曲「パンクロック」の歌詞ではないが、「僕、アイドルが好きだ」とあらためて言いたくなる、そんな一日だった。いや、TIFは明日も続く。宿泊先に戻ってから、きょう観たアイドルをネットでチェックしたり、さらに翌日の予定を組んだりしていたら、つい寝るのが遅くなった。明日も朝早いうえに、気づけば1日目以上に会場内を移動する予定を組んでしまったのだが……以下、「レポート2日目」に続く!
(近藤正高)