日本人には、まだその認識が甘いと思う。2012年クラブワールドカップ決勝のムードを日本人だけで、再現できそうな気はしない。だが、2020年に控えている東京五輪までには、なんとか間に合わせたい。

 繰り返すが、日本は遠い。日本を訪れる外国人の数は決して多くない。ロンドン五輪を訪れた外国人の半分にも満たないだろう。開催国の観衆として参考にすべきは、今回のブラジル人だ。

 次回の五輪の開催地であるリオデジャネイロの州政府は、ブラジルW杯にやってきた日本人が、日本戦の後、スタンドのゴミを拾って帰ったことを讃えて、表彰したというニュースを聞いた。

「リオ五輪では、ブラジルの観衆も見習って欲しい」と、リオ州政府のお偉いさんは述べたそうだが、我々日本人がブラジルの観衆から見習うべきこともあるのだ。その均衡を保とうとするフェアな精神も、僕の目には十分イカして見えた。スポーツの現場にいる喜びを感じさせてくれた。

 そしてそれは、ジャーナリストにも欠かせない姿勢だと思う。今どちらをプッシュした方が、世の中のバランスは維持されるか。場に均衡をもたらすことができるか。ヨイショすべきか、叩くべきかの判断基準はこれが源になる。

 記者席で、ブラジル人の反応を確かめながらピッチの上に目を凝らすことになった今回のW杯。そこに座る居心地は、決して悪くなかったのである。