今時スマホを使えないのでは恥ずかしいし、PRAなどの待ち時間にインターネットを利用しようと、私用に買った格安のタブレット端末(3200ペソ=約6400円)も、あっという間にKIAN専用になってしまった【撮影/志賀和民】

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フィリピン在住17年。元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する志賀さんは、ひょんなことからフィリピンの大家族と同居し、「ダダ(おじいちゃん)」と呼ばれるようになってしまった。そんな志賀さんが見た、フィリピンの子育て事情とは……。

 毎週土曜、恒例となっているKIAN(私のビジネスパートナー、ママ・ジェーンの息子)とのランチで、突然、「ダダはガールフレンドがいるのか」と聞かれた。私がそのとき、KIANを無視して携帯のテキスト(携帯メール)に熱中していたためだ。私の相手は客だが、KIANにしてみればテキストメール=ガールフレンドなのだ。

 以前、ママ・ジェーンのお兄さんアランがしばらく我が家に居候していたことがあった。そのアランがテキストしている(携帯メールを送ろうとしている)のを見て、KIANが「誰にテキストを送るのか」と聞いたら、アランおじさんは正直に「ガールフレンド」と答えた。

 KIANのもうひとりのおじさんボボイも携帯を一時も離さず、常にテキストしている。失業中の彼らにしてみれば、他にやることもないから、ガールフレンドと一緒にいないときはほとんど一日中、テキストで会話しているようだ。

 ちなみに「アンリ」と称して、携帯電話会社各社は同じキャリア同士なら1日10ペソ(約20円)で無制限(Unlimited=アンリ)のテキスト、25ペソ(約50円)で無制限の通話ができるサービスを提供している(スマートフォンの場合)。だから1日中、テキストしていられるのだ。

 そういえばママ・ジェーンも、ほとんどの時間を携帯とにらめっこをしている。彼女はアイフォン派なので、テキストばかりでなくEメールや Facebook、さらには新聞などを読むのにも使っている(ちなみに事務所兼住居の我が家は複数のパソコンでインターネットを利用できるようWifi環 境を整えてある)。

 もちろん友人あるいはパパ・カーネルとテキストすることもあるが、私にも時に大量のテキストを送ってくる。たとえ二人が家にいても、1階と2階でテキストを交換するのだ。

 私にガールフレンドがいるという話は、KIANからジェーンにも伝わっていた。「KIANがお腹がすいているのに、ダダ(おじいちゃん=私のこと)はガールフレンドにテキストを送るのに夢中だった」と、報告したそうだ。

 さらにパパ・カーネルには、「マミーはスマホとにらめっこばかりでちっともかまってくれない」と小言を言ったそうだ。ちなみに17歳のキム(パパ・カーネルの連れ子)は携帯の所有やFacebookの利用を禁止されている。それはもちろん、言い寄る虫から娘を守るための親の算段だ。

 フィリピーノがテキストで会話することと言えば、「How are you, Did you finish your lunch, What are you doing, I miss you, etc」などたわいもないものなのだ。私の運転手をしているボボイと出かけると、10分おきくらいに携帯にテキストが入る。

 もちろん運転中は携帯を使うことを禁止しているが、私を待っている間は自由なのだから、そのときに用事は済ませているはずだ。それなのになぜ、運転中にまで絶え間なくテキストが入るのか不思議でならない。

 こんな調子では、相手も仕事をしてるとは思えない。「私は、くだらないテキストは嫌いで、そんなものには返事をしない」とヤヤ(KIANの乳母)に話すと、「だからガールフレンドができないのだ」と諭された。

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