『地方女子の就活は今日もけわしい』百田ちなこ/メディアファクトリー

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憧れの東京で仕事を見つけるべく、就職活動をはじめた地上在住の女子大生。その就活体験をもとにしたコミックエッセイが『地方女子の就活は今日もけわしい』(百田ちなこ著・メディアファクトリー)だ。作者は福島出身で、新潟県の大学に進学。大学時代、美術館を巡るために、たびたび東京に行くようになり、都会への憧れを募らせる。そして、大学3年の秋、“東京さ出て絵ぇ描く仕事すべ!!”と決意する。

田舎に住む子が東京で就職活動をすると、何が大変なのか。

まず、一緒に就活する友達が見つからない。作者の場合も周囲の女子たちは、大学のある新潟で就職活動をするか、地元に帰るという人がほとんど。“意外と現実的に将来を考えていました”という。

お金もかかる。
作者の場合、東京まで片道4時間以上。新幹線なら学割で往復1万7000円、高速バスなら往復約1万円。都内での交通費もかかる。宿泊は1泊3000円〜6000円のビジネスホテルを利用するとしても、さらに飲食費もかかる。スーツ一式そろえる必要があるし、証明写真も必要。“長く続いたら破産しちまう!”と叫びたくもなる。

交通費を節約するために高速バスを選んだのに、大雪で運休。ホテルを探してもう一泊しようにも、翌日朝には大事なテストがある。結局、新幹線で帰ることを決めるが、学生証がないため学割が使えず、割高に。

時間もない。
1日3社ぐらいまとめて受けるので、スケジュールはぎっちぎち。大きなカートを引きずり、詰め込んだ予定をなんとかこなすと、新潟にトンボ帰り。“都会の学生は通常のキャンパスライフを満喫できるなんて──なんだべ この差は!?”とフラストレーションはたまる一方だ。

憧れのスタバにようやく足を踏み入れたものの、おしゃれ空間に気圧され、頼みたいメニューを注文できない。サイズ表記が理解できず、“Sの次はMじゃないの!?”と慌てふためく(スタバでは、スモールの次はトール)。

宿泊費節約のために泊まったカプセルホテルでは“もし万が一コワイ人がこの部屋に来たら……”という妄想にうなされる。

それでも行きたい東京……!!

しかし、就職活動を始めて4ヶ月。毎週のように東京に足を運んでいるのに、選考は進まない。時間とお金ばかりかかり、学校にも行けず、友達にも会えない。こうなったら、“結婚とかどうだべ”と妄想が広がるばかり。宙ぶらりんの状態を脱出するため、「新潟でも受けてみんべ!!」と作者は方向転換をはかる。

読んでいるこちらが照れくさくなるほどの憧れを抱えて、右往左往する作者。“東京さ出て絵ぇ描く仕事すべ!!”なんて無謀だなぁと読み始めたはずなのに、気づけば、ハラハラしながら見守っている。神様、どうか彼女に内定をあげてください!

“東京さ出て文章書く仕事すべ!!”と上京してしまった頃がよみがえる。なつかしく、はずかしく、キュンとくる一冊だ。

(島影真奈美)