アベノミクスによる経済刺激策は、不動産市況にも目に見える効果をもたらしている。金融緩和によって金融機関の融資姿勢が積極化し、不動産投資市場に資金流入が活発になり、収益物件の価格を押し上げているという。(写真はウィー・イング・シー取締役副社長の若生和之氏、写真撮影:サーチナ)

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 アベノミクスによる経済刺激策は、不動産市況にも目に見える効果をもたらしている。金融緩和によって金融機関の融資姿勢が積極化し、不動産投資市場に資金流入が活発になり、収益物件の価格を押し上げているという。都市部を中心に1棟売り収益物件に特化した不動産売買を行っているウィー・イング・シー(本社:東京都渋谷区)の取締役副社長、若生和之氏は、「2−3年前には都内で利回り10%を超える取引がありましたが、今現在では8%の利回りでも、かなり早いスピードで取引が終了しています」という。若生氏に、不動産市況の実情と、今後の展望について聞いた。

――いわゆる「アベノミクス」による「異次元の金融緩和」などによって、日本の株価が上昇するなど、景気回復を期待させる動きになっていますが、不動産投資の環境に変化はありますか?

 金融緩和により、金融機関の融資姿勢が積極化している影響で、不動産の購入希望者が増え、都心を中心にした大都市圏では不動産価格が上昇しています。金融機関の貸出先は、いわゆる「属性の良い人」が中心です。また、不動産価格の上昇は収益の観点からは利回り低下に結びつきますが、リーマンショックから緩やかに改善してきた不動産投資環境は、引き続き、改善の方向にあると感じています。

 一方で、株高の影響は、金融資産の価値向上によってポジティブな投資を考える層、あるいは、株価の乱高下が続く不安定さから安定した運用を狙って資産の一部を不動産に組み換えを行っている層など、投資家それぞれの資産背景や投資目的に違いはありますが、不動産投資に資金を向かわせる理由になっています。

――御社は、1棟売りの収益物件に特化した事業ですが、「1棟売り物件」に対する需要は?

 金融機関の融資姿勢が積極化している影響で、1棟売り物件に対しての問い合わせは、非常に多くなっています。もとより、「1棟売り物件」については金融機関の担保価値評価が高く、最近取り組んだ物件では、フルローンで融資を受けられる物件もありました。

 一方で、需要増加によって物件価格は上昇している局面にあることから、より高度な物件の目利き能力、および、取得後の運営能力が求められるようになっており、実際の購入決断にあたっては、慎重な姿勢になる方も多くなっています。

――不動産で資産運用をする方法として「マンションの区分所有」と「1棟売りの物件」に投資する方法がありますが、それぞれを比較してメリットとデメリットは?

 1棟売りの収益物件は、戸数が多く1部屋抜ければ収入がなくなってしまう区分マンションと比較して、空室リスクが軽減できる点が一番の違いになります。

 一方で、区分マンションの場合は、管理組合があり、管理の手間がほぼない点がメリットになります。1棟物件の場合は、管理会社をどこにするか、修繕をいつ行うか等の判断を自分で行わなければなりません。これは手間と言えば手間ですが、逆に、自分の裁量によって、購入した後の管理の面でも収益を上げ、支出を抑えられる可能性があり、努力次第で経営の良し悪しが決まるという側面があります。当社では、この点に最大のメリットがあると考えています。

 また、1棟売りの収益物件は、金融機関からの資産価値としての評価が高く、お客さまが資産形成をしていく上で、重要な投資対象になると考えます。当社は、1棟売り物件に特化しているだけに、単なる不動産売買というだけではなく、お客さまの資産形成にあたってベストな資産ポートフォリオを構築するための支援を行うことを、使命と考えています。

――不動産投資には、「空室リスク」、「換金しにくい」など、株式投資などの証券投資にははいリスクがあります。また、修繕計画など経営センスが必要な部分もあり、不動産に関する知識がないと難しいように感じますが、誰でもできるものですか?

 実際には、運営面では、当社のような不動産業者や、管理会社、工事会社、税理士といった専門家に実務を依頼し、オーナーのやることは最終判断程度です。その点では、誰でもできる投資といえるかもしれません。当社が扱う物件の購入者も、普通に会社勤めされている方が約8割を占めます。中には、「大家業」として専業になさっている方もありますが、一般的には会社員の方の資産形成手段の一つとして定着しています。

 たとえば、「空室リスク」は中古物件の場合は、近隣の同程度の物件と比較して適性な家賃設定をすることによって低減できます。修繕についても、大規模修繕には1000万円単位の費用が必要ですが、これは家賃収入の中から計画的に積み立て、このような空室リスクや修繕費用等をトータルで考えた上で、収益計画を立案します。さらに、震災などに備えた保険によるカバーなど、不動産投資に関するリスクは、専門家のアドバイスを受けて備えをキチンとすることによって、抑えることができます。

 ただし、全てを他人任せにしてしまうと、万が一の時に取り返しのつかない事態になることもあり得ます。そのため、不動産投資を一つの事業として考え、事業を成功させるための心構えや、専門知識の勉強をする等の努力ができる人が、不動産投資に向いていると思います。

――ウィー・イング・シーのサービスの特徴は?

 当社がご紹介する物件は、売主物件が主体となります。売主物件の場合、エリアの選定、大規模修繕工事、権利関係の調整を仕入れの際に当社が行い、一般の方では回避しづらいリスクを事前に低減しています。

 たとえば、競売物件などは、物件そのものは安く仕入れることは可能ですが、空室が多かったり、複雑な権利関係が残っている場合が多くあります。そういった物件については、稼働率を高めるためのリノベーションを実施するなどの手当をした上で、商品として販売します。

 多くは、相続に関係して収益物件であるものの手離さなくてはならない、あるいは、金銭的な事情で売却したい物件などの情報を収集し、安定的に収益の見込める物件のみを取り扱っています。

 現在、当社に会員登録していただいている購入希望者の方は約3000人いて、毎月50−60件程度の新規の問い合わせを受けています。当社では、購入希望者の方々の投資ニーズを十分に聞き取って、ご希望に叶う物件を紹介しています。その際に、保険会社や税理士など、当社が提携しているパートナーを紹介し、専門的なサポートを提供するようにしています。

――現在、消費増税が計画され、また、物価上昇率2%をめざした金融政策がとられて、金利の上昇も懸念されています。今後の不動産投資環境の見方は?

 増税実施前後には需給バランスの関係で、価格の上下は見られると思いますが、どのような局面においても、基本的には、物件の収益力、資産価値、流動性を考慮して判断するという、基本的な投資プロセスは変わりませんので、消費増税の影響は、収益物件に投資するという不動産投資市況には、それほど大きな影響は出ないと考えます。

 2%のインフレが実現した場合は、一般的に現金より現物資産の需要が高まるので、不動産価格は上昇する可能性は高いです。その時点で、買い手側なのか売り手側なのかによって損得は当然ありますが、インフレ経済になると不動産がより活発に動くことが予想されます。現在は、家賃収入によるインカムゲインをメインにした投資が中心ですが、不動産価格の上昇局面では、価格上昇によるキャピタルゲインも合わせて考えることができるようになるからです。

 一方、金利上昇懸念については、金利だけが飛びぬけて上がることは考えにくく、その時には、賃金も上がっていて、家賃も上がることが予想されるため、現在の低金利と家賃との差額による収益は減少するものの、それで市場が冷え込むということはないと考えます。今後の経済状況は、様々な変動要因がありますが、いずれにしても、基本的には不動産市況は良い方向に動いていくと思います。

 当社は、資産形成の一環として1棟売りの収益物件への投資を提案しています。年金不安など将来への不安は尽きませんが、真剣に不動産投資を考えたい方には、社員一同、および、提携各社とのパートナーシップを発揮し、全面的にサポートさせていただきます。不動産投資に興味をお持ちの方は、是非、お問い合わせください。(編集担当:徳永浩)