逆に今季、それがまったくできていないのがエース涌井秀章投手だ。右肘を故障して以来、ずっとフォームを模索し続けている。涌井投手自身、未だどこへ向かえばいいのかが分からない状態なのではないだろうか。筆者が考えるに、涌井投手は一度原点回帰すべきだろう。2009年には16勝6敗という数字を残し、一人で10個もの勝ち越しを記録している。まさにエースの数字だ。しかもこの年はまだ、今季の飛ぶようになった統一球よりも30%も反発力が高いボールが使用されていた頃だ。昨季までのボールと比較をすれば、50%も高い。そんなボールが使われていた頃に挙げた16勝6敗という数字なのだから、価値は非常に高い。涌井投手は今は新たなことを追い求めるよりは、まずはこの頃に原点回帰、その上でさらなる進化へと歩んでいってもらいたい。

ボールの質、ピッチングの内容、マウンド捌きというものを総合的に見ていくと、今季ここまでの菊池投手の8勝というのは、決してまぐれではない。昨季までは調子が良い日にしか勝てなかった菊池投手ではあるが、今季は調子が良くなくても勝てるようになった。昨日の勝ち星にしても、決して好調であるようには見えなかった。調子が悪くても試合を組み立てる能力は、エースになるためには不可欠なものだ。それができるようになった今季、菊池投手はまさにエースへの階段を着実に登り始めていると言って間違いはないだろう。菊池投手にはこのまま最後まで集中してシーズンを投げ続け、イーグルス田中投手に離されることなく、最終的にはまずは最多勝を獲得してもらいたいと筆者は期待している。そのためにも、怪我にだけは気を付けて頑張ってもらいたい、そう願うばかりなのである。