Ultrabook発表から2年、PCの再発明の第2弾としてIntelが打ち出したキーワードは「2-in-1」だ。2-in-1とは、ノートPCとしてもタブレットとしても使えるデバイスのことを指している。2-in-1デバイスにはさまざまな形状が考えられるが、代表例としては、ノートPCのように折りたたみ型ながらディスプレイ部分とキーボード部分を分離できる「デタッチャブル型」が挙げられる。

ノートPCは、当然のことながらこれまでユーザーが使用してきたアプリケーションやデータをすべて利用することができ、とりわけビジネスシーンにおける文書編集やデータ処理には欠かせない。一方のタブレットは、キーボードやマウスがなくても簡単に扱えるようタッチ操作に最適化されており、ノートPCに比べ薄型軽量でバッテリーの持ち時間も長いといったメリットがある。特にWebサイトや動画などのコンテンツを楽しむ用途では利便性が高い。これまでユーザーは、シーンに応じてノートPCとタブレットのどちらを使用するか選ばなければならなかったが、最高のノートPCと最高のタブレットを同時に実現するのが2-in-1デバイスであるとIntelは主張する。

Haswellこと最新のCoreプロセッサーは、バッテリー駆動時間とグラフィック性能の向上を最大のテーマとしている。2011年の”Sandy Bridge”(コードネーム)、2012年の”Ivy Bridge”(同)と毎年新世代のCoreプロセッサーを投入してきたIntelだが、今回のHaswellにおける進化はこれまでのどの世代間よりも大きなものとKilroy氏は強調。HaswellによってPCのバッテリー駆動時間は最大1.5倍、グラフィック性能は最大2倍に伸びるため、従来のUltrabookよりさらにパーツの実装や冷却、電力条件など厳しくなるデタッチャブル型の2-in-1デバイスにおいても、高い性能を得られるとしている。

基調講演の後には、Kilroy氏の講演内容を捕捉する形で、同社PCクライアント事業本部長でExecutive Vice PresidentのKirk Skaugen氏が2-in-1への取り組みの詳細を説明した。

スマートフォン/タブレットとノートPCは一部競合する部分もあるデバイスだが、基本的にはスマートフォンおよびタブレットは情報を「消費」するためのデバイスであり、対するノートPCは情報を「創造・生産」するためのデバイスだ。今回Intelが繰り返し強調している2-in-1は、UltrabookのようなモバイルノートPCと、タブレットとの間を補完するカテゴリであり、シーンに応じて消費のためにも使えるし、創造・生産のためにも使えるデバイスとして位置づけられている。

Intelでは、今年の年末商戦期において2-in-1デバイスのモデル数は今年春時点の10倍に達するとみており、Ultrabookやタッチ対応PCの市場がこの1年ほどで大きく成長したのと同じかそれ以上に伸びる製品カテゴリであるとSkaugen氏はアピールする。同社がアメリカ、中国、ドイツの消費者を対象に調査したところ、2-in-1の中で最もニーズが大きいのはデタッチャブル型だが、ディスプレイをスライドすると下からキーボードが現れるスライダー型や、キーボード部分が分離しないもののディスプレイを回転させるとキーボードを意識せずタブレットのように使えるスイーベル型・フォルダー型なども人気があるという。

興味深いのは、2-in-1によってタブレットとPCの垣根が取り払われたことで、Intelの製品ラインナップからも境界線がなくなっていることだ。Skaugen氏が示したスライド資料にもある通り、2-in-1にはCoreプロセッサーを採用し、Ultrabookの延長として設計される製品がある一方、Atomベースのタブレットを進化させる形でBay Trailプラットフォームを利用する製品も今後登場する。Kilroy氏、Skaugen氏とも、プレゼンテーションでは今回の目玉であるHaswellを最前面に出してアピールするというよりも、HaswellとBay Trailという2つのトピックについて説明し、2-in-1デバイスではより幅広い選択肢を提供していくというビジョンを示す構成をとっていた。

Bay Trailプラットフォームに関しては、タブレット向けのBay Trail-T以外にも、エントリークラスのモバイルノート(と2-in1)向けに”Bay Trail-M”、エントリークラスのディスプレイ一体型デスクトップPC(AIO)向けに”Bay Trail-D”が用意されているが、Skaugen氏は報道陣との質疑応答の中で、PC向けプラットフォームとなるBay Trail-MおよびBay Trail-DについてはPentium/Celeronブランドで販売していく方針を示した。Pentium/CeleronはCoreアーキテクチャのエントリー製品に用いられるブランドだったが、従来であればAtomで呼ばれていた製品の一部にも今後は付与されていくことになる。CoreとAtomの両製品群は対象デバイス、アーキテクチャ、ブランドがいずれも独立しており、異なる世界に向けた製品だったが、新たなカテゴリのデバイスが登場してきたことで、その境目は次第に曖昧になりつつあるように見える。(なお、同社モバイル&コミュニケーション事業本部長のHermann Eul氏は、タブレット向けのBay Trail-Tに関してはAtomブランドを使用する方針を示している。)