アップルが米国特許商標庁に申請した書類の一部。通常時は細長い板状の液晶を、腕に巻きつける

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グーグル、アップルというIT界の両巨人が今、まったく新しい端末をそれぞれ開発している。

まず、グーグルがほぼ完成にまでこぎつけ、来年中の一般発売を目指しているのが、メガネ型情報端末「グーグル・グラス」だ。

これはメガネフレームの右目部分に透明な小窓が取りつけられ、目の前の現実の光景の中に、情報が浮かび上がって見える仕組みになっている。

現時点で同機を使ってできるのは、「静止画と動画の撮影」「その画像をツイッターやフェイスブックに上げる」「電話」「メールの送受信」「地図を使っての道案内」といったことで、操作は基本的に音声コマンド。例えば、使用者が「Take a picture(写真を撮れ)」と言うと、パシャリと写真撮影できる。現時点では英語のみだが、一般発売時には日本語を含む主要言語に対応する見込みだ。

また、インターネットとはWi−Fiでつながっていて、細かい設定はアンドロイドのスマホを介して行なう。つい先日、開発者向けに数量限定でテスト機が先行発売されたが、そのお値段は1500ドル(約15万円)。量産化されれば、もう少しこなれた価格になるだろう。

先行発売分のグーグル・グラスをいち早く入手し、実際に操作したジャーナリストの石川温(つつむ)氏は、その印象をこう語る。

「両手が空くので、“ながら作業”ができるのが最大のポイント。カーナビ的な使い道はもちろん、機能がさらに充実すれば、自動車や飛行機の整備士がマニュアルを表示しながら仕事をするとか、医師が患者のリアルタイムデータなどを確認しながら手術をする、といった用途も考えられます」

さらには、あの人気マンガの世界が、いよいよ現実のものとなるかもしれない。

「顔認識ソフトと組み合わせれば、『ドラゴンボール』のスカウターのような機能を持たせることだってできるでしょう。警察が指名手配犯を探したり、軍隊が敵兵を識別するといった研究がすでに進められているかも」(石川氏)

バッテリーが一日ももたないとか、盗撮に使われる恐れがあるとか、端末情報に気を取られて事故を起こしかねないとか、機能、モラルの両面で解決すべき点はまだあるものの、大きな可能性を感じさせるデバイスなのである。


一方、アップルの腕時計型端末「iWatch」は、今のところ噂の段階にすぎない。しかし、今年2月、アメリカの高級紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』によって「試験的に設計に取り組んでいる」と報じられた上、アップルが特許商標庁に出願したiWatch関連と思われる特許書類も公開されている。さらに、同社のティム・クックCEO(最高経営責任者)はつい先日、腕時計型端末開発の真偽について問われ、「興味深い分野だ」と含みを持たせた回答をしたのだ。こうした状況証拠から判断して、開発が進んでいることはまず間違いない。

特許書類から推察すると、普段は細長い板状で、片面すべてがディスプレイになっている。これを手首に軽く叩きつけると、バネの力で瞬時に巻きつく仕組みのようだ。このような動きをするバネはすでに玩具で採用されているので、機構的にはすぐにでも実現できる。だが、問題はバネの動きに追従できるディスプレイがないこと。

それを踏まえ、携帯電話ライターの佐野正弘氏が予想する。

「曲げられる有機ELディスプレイは各メーカーから発表されていますが、柔軟性はまだ不十分。従ってiWatchの1号機は、一瞬にして巻きつくような構造ではなく、固定型の画面プラス時計バンド部という常識的な形で発売されることも考えられます」

機能についてもこう話す。

「仮に片面すべてがディスプレイだとしても、絶対的な画面サイズは小さいわけですから、スマホで扱う情報の一部を即座に見るといった使い方になるでしょう。時刻のほかにメール、SNS、スケジュール、天気、現在地あたりが表示される程度では?」(佐野氏)

うーん、それだけでは使ってみたいと思えないような……。

「ソニーのスマホ『エクスぺリア』のオプションで、すでに似たような時計がありますからね。何か新しい提案、つまり、スマホにはできない機能が追加されない限り、世間に驚きを与えることは難しいでしょう」(前出・石川氏)」

どうやら次世代端末の魅力では、今のところグーグルのほうに軍配が上がるようだ。