JFL第4節の町田ゼルビア vs ホンダロックSCの試合において、ホンダロックベンチに「川島正士監督」の姿は無かった…

監督に代わりにベンチで指揮を執るのは白川伸也コーチ。別に、前の試合で退席処分になった訳でもない。いきなり監督が替 わった訳でもない。なぜ監督が不在だったのか? その理由を試合 後、白川コーチはこのように答えてくれた。

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「監督は出張で今タイにいます。そういうこともありまして、自分たちも企業チームなので、そういう環境でも(サッカーを)やらせてもらっていることに感謝の気持ちを込めながらしながらプレーしています。今回の件は(監督にとって)残念(試合に行けないこと
が)なんですが、それも仕方がないかなと思います。ただ、自分たちコーチ陣がしっかりサポートしていければ、もっといいチームになれるかなと思っています。

まあ、監督が不在なのは今回が初めてでしたが、そこは仕事(不在の理由が)なので割り切ってやりました。ただ、選手に関しましては公式戦の日の出張とかはないですね」

ホンダロックSCは企業のサッカー部であり、何かあった際には社業が優先されることもあるのだ。また、選手も基本は8時〜17時まで仕事に就き、18時から「サッカー選手」にチェンジするが、場合によっては業務のため練習に参加できない場合もあると
のことだ。

さて話が変わってしまうが、この白川コーチの話を聞いたときに、かつてJFLに在籍し今は中国リーグで活動を続けている三菱水島FCのことを思い出した。

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以前の取材で水島の熊代正志監督は「うちは企業チームで仕事がある関係上、試合前日の移動が難しいので、原則として当日移動ですね。さらに、夜勤の交替勤務があるために練習に参加できないメンバーもいるし、ベストメンバーを組めないから試合ごとに(選手の)入れ替えが発生してしまうんですよね。ただ、会社が厳しくなっていく中でも、こうして全国リーグでやらせて貰っていることは何よりも嬉しいことです」

と、仕事とサッカーの両立の難しさを語りながらも、高いレベルでサッカーができることへの感謝を忘れなかった。

さらにこの試合ではJFLのみならず、最近ではサッカーファンの中で知名度を徐々に上げている「ロック総統」が発信し続けているありがたい「一言」に大いに感じ入る部分があった。

彼の会場での出で立ちや言葉は、時として賛否を巻き起こすこともある。だが、彼が持論として展開する「今そこにあるサッカーを愛せ」という言葉は、実に深い物なのではないだろうかと考えるのだ。

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これは自分なりの解釈となってしまうが、チームやクラブを応援するファンやサポーターのみならず、そのチームでプレーする選手を含めての「言葉」だと思うのだ。

サッカーを愛する、クラブを愛する、チームを応援する、プレーをしたいという気持ちに「カテゴリー」や「勝った負けた」というものが、実際のところどれくらい必要なのだろうか? 自分の目の前のサッカーを愛さないでどうするのだろうと……

自分が好きでそのクラブに関わったのなら、どんなことがあろうと、とことんそのクラブを愛すべきだし、どんな理由でもそのクラブでプレーすることになったプレーヤー(またはスタッフ)は、関係者を含めてクラブにを愛を持ってプレーすべきなのだ。

この日の谷口コーチにしても、かつての熊代監督にしても、厳しい状況の中でも「サッカーをやらせてもらえること」に対して大きな感謝を述べているのである。

そんな中で、今プロと呼ばれる選手の中で、本当にクラブを愛し、そしてプレー「させてもらっている」ことに対して感謝している選手がどれだけいるだろうか? また、応援する側もどこまでクラブに対して愛を持っているだろうか?

プレーすることや応援することにカテゴリーは関係ない。好きならとことんやる。ただそれだけの簡単なことなのだが、その簡単なはずのことを多くの人は忘れてしまっているのではないだろうか?

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さてここで話題を変えて、再編されるJFLの話題へ。

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今シーズン限りで1999年から始まった「第二期JFL」が幕を閉じることになり、来年からはJ3に参加しない純粋アマチュアクラブだけでの全国リーグとなる「第三期JFL」だが、それはそれでなんとなく寂しい気もするのだ。

J1リーグ18チームを日本サッカー界の頂点とし、J2リーグの22チームとトップ40を形成し、その下にプロアマ混合のJFLがあった今のサッカー界。J1/J2は完全プロリーグの世界であったが、JFLはプロを目指すクラブ、企業サッカー部、街のサッカー(スポーツ)クラブ、国体強化資金をベースに戦ってきたらJFLまでたどり着いてしまったチーム、大学生、Jクラブの下部組織など、一種カテゴリーならなんでもありのカオスなリーグでもあった。

しかしそのカオスさこそ、JFLのおもしろさであり、リーグのカラーだったような気がしてならないのだ。

何が何でもJ新規加盟を目指すクラブもある。仕事とスポーツをきっちり両方ともこなす企業チームにクラブチーム、選手の調整や育成に価値観を見いだしたチームや、プロを一度クビになった選手がもう一度プロの世界を夢見てプレーする場でもあったJFL

ポゼッションを高めた華麗なサッカーから、部活サッカーよろしくなフィジカルサッカーに、一昔前の中東サッカーのようなカウンター戦術を仕掛けてくるチームなど、本当に多種多様なサッカーが混在したからこそ、リーグのおもしろさはあった。例えば、Jリーグ同士の試合であれば、どの試合でもそれほど大きな差はないし、やっている(サッカーの)内容にあまり変わりもない。

しかし、このJFLではプロを目指すチーム vs 大学生の試合もあれば、企業チーム vs J下部組織や企業 vs 企業という感じで「どんなサッカーになるんだろう?」と予想しにくいカードがいくつもあった。特に大学生チームなどは、たまにトップチームの選手が出てくると、先週までのチームはなんだったの? 的な強さを発揮する場合もあった。

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さらには、このJFLがあったからこそ、古橋達弥(honda FC→C大阪)や徳重隆明(デンソー→C大阪)、村松大輔(Honda FC→湘南)に武藤雄樹(流経大→仙台)など、何人もの選手が成長する機会とアピールする場を得てプロへ羽ばたいて行ったのである。特に流経大1年生時にJFL出場していた武藤にとって、Honda FC戦での4得点はスタッフに強いインパクトを与え、JFLチームのエースから「部のエース」へと成長していくきっかけとなっていった。
※古橋、徳重、村松の移籍先はその当時のチームです

JFLというリーグは、なんとなくJリーグブームが訪れる前の日本リーグ時代を思わせる牧歌的な雰囲気に包まれ、さらには普段であればあまり対戦することがないと思われるチーム同士が闘いを繰り広げる不思議なおもしろさを醸し出すリーグであった。また、Jを目指すチームに、Jへの復帰を目指す個人など、それぞれのチャレンジの場所でもあり、試合ごとに見られる一喜一憂は何とも印象的であったことは忘れることが出来ない。

だが、来季からはJを目指すクラブはこのリーグにほぼいない。また、大学生チームは数年前の選手登録規定変更により「育成機会」という「旨み」が消えてしまったこともあり、積極的にリーグに参加しようというチームは現れてはいない。J下部組織も地域レベルまでは面倒を見られるが、全国はとても… というチームが大半。そうなると、完全に企業チームとクラブチームだけでの純粋な一種社会人全国リーグという形に変化する「第三期JFL

Jに行くチームもいない。個性のあるチームも減ってしまったJFL。だが、そんな時だからこそ、選手もスタッフも、そして応援する側も、地域全体も「今そこにあるサッカー」を愛して欲しいのだ。

カテゴリーがJリーグではない道を選んだチームにとって、まさに正念場となる今季と来季。このJFLとJ3の分岐を「やって良かった」と思えるぐらい、「今そこにあるサッカー」を愛し、そしてもっとよりよいクラブやチームにしてほしいと願いたいかぎりである。

日本のサッカー界がさらに発展していく「鍵(ロック)」とは、日本代表が未来永劫ワールドカップの出場権を勝ち取り続けるよりも、Jリーグ3部制が起動に乗ることよりも、その下を支えるJFLや地域カテゴリが元気になることじゃないのだろうか?

少なくとも、自分はそう考えますね。
上ばかり誇大化してしまっては、底辺が広い安定性のあるピラミッドではなく、「いびつなピラミッド」になってしまい、いつか崩壊してしまう危険性を孕むことになるのだから……

そのためにも、話は戻ってしまいますが選手や応援する人も「今そこにあるサッカーを愛せ!」という言葉を、もう一度考えてみるといいかも知れません。

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最後に、この日実現したサポーター界の「夢の競演写真」を掲載しておきます。
日本代表サポ界きっての有名人でもある「ちょんまげ隊長のツンさん」にJFL界の革命児?の「ロック総統」

さあ、みなさんもご一緒に!!

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「J〜F〜L〜でもええ〜じゃないか〜!!!」