pixivに公開されているユニークな冊子「絵師なら知っておきたいデジ絵の色のこと」(ナナオ)。

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PCの液晶モニターで画像を見るとき、同じ画像なのに色がモニターによって違うとか、画面上とプリントしたものとまるで色が異なると感じた人は多いのでは。とくにPCでイラストを描くクリエイターさんにとっては大問題。それを解決するため、正確に色を合わせられるカラーマネジメントモニター「Color Edgeシリーズ」(ナナオ)があるのだが、最近その使いかたを漫画でおもしろく簡単に解説したユニークな冊子「絵師なら知っておきたいデジ絵の色のこと」がネット上で話題になっているようだ。

同冊子の登場人物は、同人界をヒイヒイいわせまくる予定のペロ子と、絵師でペロ子の成長を献身サポート予定のツーディーの二人。3つのエピソード「パソコンで絵をちゃんと見る」「pixivに絵を公開する」「イメージどおりに印刷する」があり、それぞれふたりのユニークな会話の中で色が違ってしまう現象の説明やカラーマネージメントのハウツーを説いていく。ところで、どうしてそもそもこのような冊子をつくったのか。ナナオさんに詳しい経緯を聞いてみた。

■ 経緯・狙い

当社は、数多くの技術者を抱えた、よく言えば、ものづくりにこだわった技術主導型の会社です。そんな当社の製品の良さを伝えようとすればするほど、どうしても機能や性能に特化した説明となってしまい、一部のコアなユーザー以外にはなかなか製品の良さが伝わらないといった矛盾があります。

そこで、間口を広くでき、内容が理解しやすい漫画コンテンツを使ってアプローチする方法を常にアイデアとして持っていました。しかし、いざデザイナーやイラストレーターといった層に情報を発信しようと思っても、製品の説明に適したサイトや雑誌などの媒体が存在しませんでした。なので、メーカー視点で製品説明を一方的に垂れ流す考えを改め、もともとイラストレーターが数多く存在している「pixiv」という場にこちらから入って行って、なるべくユーザーと同じ視線で情報を発信、共有することができないか、ピクシブさんに打診しました。その結果完成したページが、こちらです。

ただ、カラーマネージメントだとか、キャリブレーション対応の液晶モニターだとか、取り上げている内容も難しく、何よりも簡単に衝動買いできるような安価な機器でもないため、1回切りの露出で忘れられることがないように、同コンテンツを冊子原稿にまとめて印刷することにしました。この冊子は、昨年末のコミックマーケット83の会場で配布しました。家電量販店さんについては、現状はデジカメユーザーさんへの販売比率が大きいため、積極的には配布を行わないつもりだったのですが、当社の想定を超えて話題になった結果、一部で配布に至りました。

■こだわった部分

旧来のアプローチだと、「よく分からない高額な機器」とソッポを向いていたような方たちも、多少なり「自分たちに関係のある話なんだ」と感じてもらえるように工夫しました。

コンテンツは製品の説明はオマケで、pixivユーザーの役に立つ情報を発信することを第一に考えて制作しました。また、pixivというSNS内のページなので、あくまでユーザーたちが作り上げた「pixiv」という場を間借りしているという考えでページ作りをしました。例えば、今回手伝ってくれたイラストレーターさんは、pixivのアカウントを開設していて、普段よりアマチュアとしてpixiv内で活躍されている人という条件で探しました。漫画部分のストーリーや盛込む情報は、企業色が出すぎるのを避けて、イラストレーターさんにカラーマネージメントの重要性や当社製品の特長を事前にしっかり学ばせ、あとは自由に創作してもらいました。

冊子化においては、当初表紙は自社カタログのレギュレーションに従い、見やすく小奇麗に仕上げるつもりでいました。ただ、冊子に限ってだけイラストレーターのコミュニティである「pixivという場に間借りしている」立ち位置を覆すのも変な話なので、前言撤回で、イラストレーターさんに「表紙も作って!」と無茶振りしました。その結果が、ネットで「同人誌っぽい」と冠されたデザインです。

■アキバでの反応

前述の通り、家電量販店さんについては、現在はデジカメユーザーさんへの販売比率が大きいため、積極的には配布を行わないつもりでした。が、たまたまTSUKUMO eXさんが当冊子を店頭に並べ、また、積極的に当冊子をtwitterで紹介してくれました。そのため、情報サイトのAKIBA PC Hotline!さんに取り上げられ、2ちゃんねるで話題になり、まとめサイトへの転載を経て、SNSで一気に拡散されることになりました。

な〜るほど。高機能製品は往々にして使いかたが初心者には難しかったりするし、そもそも硬くて取っ付きにくい。だから、EIZOブランド製品にあえて今回思い切って萌え漫画のハウツー冊子で挑んだわけだ。

PCモニターのカラーマネジメントに興味がある方もない方も、同冊子を見ると結構勉強になりますよ。
(羽石竜示)