大手百貨店が集まるパリ市内オスマン通りではソルド初日は多くの人でごった返した。

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今月9日からフランス全土で一斉に冬のソルド(フランス語でセールの意味)が始まっている。この期間には百貨店などの一流ブランドが大幅に割り引かれるため、初日は大勢の人でごった返す。じつはフランスのソルドは、割引率を各店舗は好きなように決められない。さらに開催時期も勝手に設けられない。なぜなら各店舗が等しく販売の機会を得られるように、ソルドは法律にのっとりおこなわれるからだ。一体どのような仕組みなのか。

ソルドは原則として夏冬の年2回おこなわれ、夏は6月最終水曜8時から、冬は1月第2水曜8時から5週間までと定められている。もちろんソルド以外にも値引きがおこなわれることはあるが、ソルドとソルド以外の値引きでは明らかな違いがある。ソルドでは原価以下の割引販売が可能だが、ソルド以外では原価以上の値段でしか販売できないのだ。

なぜ店は年2回、原価以下に下げてまで在庫をさばこうとするのか。その理由の一つに、日本とフランスにおける流通システムの違いにある。

通常、小売店は卸業者から商品を買い取って、それを店頭に並べて消費者へ売る。しかし日本の百貨店の場合、卸業者からの商品を店頭に並べるものの、仕入れの計上は店頭で商品が売れたと同時におこなわれる。ゆえに店頭にならんでいる商品が売れなかった時は、百貨店は商品を卸業者に返すことができる。

一方でフランスの百貨店は、卸業者から百貨店へ商品が引き渡された時に仕入れが計上されるので、商品が売れ残ったとしても卸業者へ返品できない。そのためシーズンの商品は仕入れ値以下の価格にしても売りさばく必要があるという。

このような理由もあり店頭に大幅な値引き商品が並ぶソルド期間だが、フランス人はソルドにどれくらい関心を持っているのか。仏市場調査会社イプソスの調査によれば、フランス人の76%がソルドで出かけるという。またソルドにおけるフランス人の平均消費額は1人223ユーロ(約2万6000円)だそうだ。じつはこの消費額、昨年より23ユーロ(約2600円)下回っている。また、フランスモード研究所(IFM)によれば、服への消費は2008年以来12%の下降となっているという。いくらソルド期間でも無い袖はフランス人も振れず、ここにも近年の欧州経済の影響は現れていると言えそうだ。
(加藤亨延)