かつては目立たない存在だった「文化系」が存在感を増している。写真は「文化系トークラジオ Life」のオンエア風景。毎月最終日曜の深夜に朝まで生放送する番組の熱量はスゴイ。写真は左奥から反時計回りに、社会学者の鈴木謙介さん、社会学者の古市憲寿さん、編集者の斎藤哲也さん、ライターの速水健朗さん、メディア・アクティビストの津田大介さん、科学史学者の神里達博さん、幹細胞生物学の研究者・八代嘉美さん。

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一昨年の「モテキ」、昨年の「桐島、部活やめるってよ」など気づけば非モテ文化系男子が主役の作品が話題になることが増えている。またアメトークでオードリー若林さんやピース又吉さんなどの読書芸人も取り上げられ、NHKのEテレでも若手論客を集めた「ニッポンのジレンマ」が放映されており、「文化系」のニーズがいつになく高まっているよう。これまでアクティブな人たちの影に隠れていた文化系の時代がついにやってきたのか?

「文化系の時代とまでは言えないかも知れませんが、SNSなどの影響で存在感は高まっていますね」

そう解説してくれたのは、編集者の斎藤哲也さん。

「昔から読書家の芸人は沢山いました。たとえば爆笑問題の太田光さんは完全に『文化系』の人ですが、以前は芸人のそういう面が表に出る機会がなかなかありませんでした。でもブログやSNSの発達によって、有名人の文化系的な趣味が可視化されやすくなってきたことで、文化系の人物やコンテンツに対する注目が集まるようになってきたんではないでしょうか」
こうした一連の動きがメディアの作り手の意識も変え、変化が訪れているという。

「テレビなどのマスメディアは、実績の少ない若い人を出演させるという冒険的なことをしづらかったのですが、ニコ生などに出演する若い言論人が一定の支持を集めることがわかり起用されるようになってきました。昨年あたりから、ちょっとした若手論壇ブームが起きてます」

実は斎藤さん、そのブームに一役買っている。ニコ生と並んで若手言論人の人材輩出番組としてマスコミ関係者が熱い視線を注ぐラジオ番組「文化系ラジオ Life」(TBSラジオ)のサブパーソナリティーも務めているのだ。

「今度番組から書籍が出るのですが、無名時代から出演している津田(大介)さんには本の帯に『僕のメディアの故郷はLifeです』ってコメントを寄せてもらいました(笑)。その他にもLife発で多方面で活躍する人が増えていることを考えると、文化系のニーズは高まっているといえるのでしょうね」

ということは文化系はこのまま完全に市民権を得て、非モテからモテ系に変わっていくということ?

「残念ながらみんなが星野源さんみたいにモテるというわけにはいかないかも知れません(笑)。ただこれまではマイノリティーだった文化系も、ネットを通じて大分仲間を見つけやすくなっているので、悶々としなくて済んでいる人が増えていると思います。『Life』のリスナーも番組を離れたところでも様々な形でつながりを持っているようですよ」

モテまでは求めすぎか。でも文化系トピックが身近になってきているのは間違いなさそう。斎藤さんも編集に携わっている今月27日に発売の『文化系トークラジオ Lifeのやり方』でもコンテンツの話から、なぜ『Life』が文化系人材の供給源になっているのかという話まで広範に文化系まわりの話題がカバーされている。

書を捨て街へ出るにはちょっと寒い今年の冬、とりあえずルサンチマンだけは捨て去って、暖かい部屋で思いっきり文化系に浸るのも悪くないかも知れない。
(鶴賀太郎)