福岡のギョーザが小さいのはなぜ? ひと口ギョーザのルーツを追う

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子どもから大人まで幅広い世代に愛され、ご当地グルメとしても人気のギョーザ。

博多もギョーザが名物だが、他県のものに比べてサイズが小さい。

なぜなのか。

早速調査してみた。

福岡市随一の繁華街・中洲。

ここに昭和24年(1949)から店を構えるギョーザ専門店・宝雲亭があるのだが、いろいろ調べてみると、どうも博多のギョーザの源流がこの店にあることが分かった。

話をうかがったのは山田隆博さん。

宝雲亭3代目の主人である。

まず、「福岡でのギョーザの始祖的存在だと聞いてきたのですが」と話しかけると、「初代はかつて満州で暮らしていたのですが、日本に引き上げてきた時、商売を始めることにしました。

そこで、かの地で食べていた水ギョーザをヒントにして焼きギョーザを出したのですね。

それが昭和24年のことです」と山田さん。

「その大きさは今と同じだったのでしょうか?」との質問には、「わたしもはっきり分からないのですが、満州で食べていた水ギョーザの大きさなんじゃないですかね、きっと。

水ギョーザはゆでて食べるので、大きいと膨らんで食べにくい。

そのため小さいんですよ」との答え。

中国でも地方によって大きさが違うらしいが、あの大きさは満州の水ギョーザサイズだったわけだ。

宝雲亭では創業以降、福岡の人の嗜好(しこう)に合わせて、餡(あん)をアレンジしたり、皮がカリッと焼けるよう粉の配合を工夫したりして今に至るそうだ。

ではどのようにして小さいギョーザが広まっていったのだろう。

「地元のギョーザ通の間で有名な早良区の店やギョーザチェーン店の主人も、もともとこの店で一緒に働いていた仲間なんですよ。

その方たちが独立してあちこちに店を出すうちに広まったようですね。

そうそう、長崎にある宝雲亭もそのひとつです」。

なるほど、そういうことだったのか。

宝雲亭のギョーザは、仕込みから完成まで、今も創業当時のままのレシピで作っているという。

ギョーザの皮は、パリパリ感とモチモチ感の両方が味わえるだけでなく、モサモサして食べにくくならないよう研究を重ね、絶妙な薄さに仕上げられている。

具は豚肉と玉ねぎだけを使い、素材の味が引き立つよう秘伝の味付けを施すだけ。

ギョーザに付き物のニンニクを使用していないのが特徴だ。

これらの材料を使い、1日に作るギョーザの数は2,000〜3,000個。

機械は使わず、昔と同じようにひとつひとつ手で行う。

作業を見せてもらうと、そのスピード、正確さには驚くばかり。

サイズが小さいため全て片手で行われており、その手さばきはまるで一流マジシャンのよう。

ほんと、プロの技ってスゴイ。

さて、福岡のひと口ギョーザの謎が解けたところで、味見させていただくことに。

タレにゆずごしょうを混ぜるとおいしいという山田さんのアドバイスに従っていただいてみると、うん、うまーい! パリッとした皮とジューシーな餡のバランスも最高。

余計な味付けをしていないため、素材の風味もしっかり生きている。

ゆずごしょうがアクセントになって、いくらでも食べられそう。

一皿10個だけど、女性でも3〜4皿ペロッと食べるという。

食の街、福岡には、ほかに鉄鍋ギョーザ、極小ギョーザ、炊きギョーザなど、ギョーザひとつ取ってもバリエーション豊富。

でも、まずは宝雲亭のギョーザを味わってみるべし。

● Information 宝雲亭 福岡市博多区中洲2-4-20