「仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!」大ヒット上映中
配給=東映

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すっかり春と夏の年2回ペースが定着した、平成仮面ライダーの劇場映画。この8月にも『仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!』が公開とあいなりました。
今回の目玉となるのは、なつかしの東映ヒーロー・宇宙鉄人キョーダインとの対決! と言われても、70年代にテレビに釘付けだった30代後半〜40代の元・お子様以外はポカーンですよね。飛行機をモチーフにしたとんがり頭のお兄さん・スカイゼル(フォーゼのモデル説あり)と、自動車よろしく耳にタイヤをつけた弟のグランゼル。兄弟ロボットだからキョーダイン! 『人造人間キカイダー』にも通じるど真ん中ストレートな名前です。
今年の1月に『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン』で80年代の銀ピカヒーロー・ギャバンが復活したいきさつもあり、またオッサン向け(筆者の世代にはゴチソウです!)路線ですか。ぼくら「キョーダイン』って分かんないんだよね……とソッポを向くのは、人生を損するタイプですよ。なぜなら、坂本浩一監督だから!!
坂本監督は、特撮業界きってのホープであり宝。海外に渡って『POWER RANGER』シリーズ(日本のスーパー戦隊シリーズをベースに、エンターテイメント性を強化した番組)でアクション監督や本編監督を経て製作総指揮まで務める実績を重ねて、日本へと凱旋した人物。
帰国後の第一作である『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』を見たときはびっくり仰天ですよ。重量感で知られるウルトラマン達が、ワイヤーアクションでぎゅんぎゅん飛び回ってる! ご本人がスタントマン出身だけに、アクションには一切の妥協がありません。
そんな坂本監督に加えて、ゲストヒロインの一人が原幹恵。おっぱいの大きなグラビアアイドルだなんて思ったら大間違いよ! 初主演作の『キューティハニー THE LIVE』では、やはり『POWER RANGER』出身の横山誠監督のもと、毎回のように体当たりのアクション。数々の武術大会で優勝している俳優・マーク武蔵と技の応酬ができていたのだから(街灯の電柱を自力で駆け上ったマークの体術はスゴすぎでしたが)国内トップクラスのアクション女優と言っていいのです。

●ライダー部のメンバーも生身でアクション!

スタッフ紹介でアツくなってしまいましたが、本編は期待以上にスゴかった。少なくとも生身アクションだけを取り出せば、ハリウッド映画の某コーモリ男やクモ男に一歩も引けは取ってません!
天ノ川学園高校で“部活”としてライダー部をエンジョイしながら学園の平和を守っている、主人公の如月弦太朗=仮面ライダーフォーゼや仲間たち。ある日、彼らに宇宙開発の組織である「オスト・レガシー」が地球を救ってくれと助けを求めに。巨大な衛星兵器のXVIIを宇宙鉄人・グランダインとスカイダインが完成させて、超重力子砲によって人類の破滅を企んでいるという……。
オストレガシーの本部に向かおうとするライダー部と、阻止せんとする破壊工作員インガ・ブリンク(原幹恵)+宇宙鉄人ブラックナイトとの戦いが、序盤のヤマ場。物語もほんのさわりだというのに、本気のカーチェイスをやらかす坂本監督!
仮面ライダーといえばバイク。そしてバイクアクションにこそ、監督のこだわりがモロに出るもの。たいていは、面倒がってバイクをあまり出したがりません。曲乗りをできる熟練ドライバーを連れてこなきゃいけないし、撮影もメチャクチャ手間がかかる。
それを各種のアストロスイッチ(マジックハンドやドリルなど、不思議な力が込められたスイッチ)をフォーゼに使わせながらやらせるスゴさ。生身のまま車外に飛び出し、ボンネットの上でくんずほぐれつもアリ。さすがにスタントマンの吹き替えアクションだろうけど、やり過ぎです!
アクション面ではライダー部のメンバーは大事にされているというか、大事にされてないと言いますか。終盤になりますが、ガタイの頑丈な大文字先輩やカンフー野郎の朔田流星はいつも通りとして、すましかえったクィーンこと風城美羽も蹴りを披露し、チャラ男のJK(ジェイク)もブレイクダンスでザコを一掃。ライダー部の頭脳である歌星賢吾もパワー全開で殴る蹴るを……病弱設定を忘れてないか?と突っ込みたくなる大ハッスル。城島ユウキや野座間友子ら美少女コンビもアクションしていて、見せ場がもらえるという意味では大事にされてる。綺麗どころでも荒事は免除されず、大事にされてない!

●40個のスイッチを使い切るホロスコープス大決戦!

仮面ライダー映画は、プログラムピクチャーの極北でもあります。監督の上にはプロデューサーがいて、スポンサーもあり、あちこちの方面からくる注文や「約束事」をこなさなきゃいけない。「はいはい分かりました」と消化試合もできるっちゃできる。
でも、坂本監督は「言われた以上のこと」をする人。「40個のスイッチをすべて使った戦い」というお題を出されたそうですが、本当にやっちゃったよ! チェーンソーやスパイク(足のトゲトゲ)なんかの戦闘向きはいいとして、スモークやパラシュート、フラッシュといった「どうやって戦いに使うんだ?」と困りものまでも殺陣に組み込んで、違和感はゼロ。
この戦いは、強敵の集団である「ホロスコープス」(黄道十二星座をモチーフにした怪人)との決戦でもあります。いわゆる「再生怪人」なんですが、これっぽっちも手抜きなし。それぞれ足技を得意としたりギターで音波を出したりと特徴を出していて、「なんとなく」やられる敵は一人もいない。テレビ版で手ごわかった奴は映画でもしぶとく、粘りに粘る。40のスイッチ(+仲間のライダー・メテオ)×12体の敵、ギッシリした密度感はため息が漏れるほど。
そして宇宙に向かう機体は、エクソダスマーク2=前作の映画『MEGA MAX』に出たものと同型機。つまり前作の正当な続編ーーと言ってもピンと来ないでしょうけど、お祭り映画は一回こっきりのバカ騒ぎと割り切るものが多くて、設定が連続してるのはレアなんですよ。世界に胸を張れる映像を作りながら、ライダー映画を大事にする坂本監督のライダー愛はじんわりと胸にしみました。

●大鉄人17とキョーダインが夢の共演!

もちろん、宇宙鉄人キョーダインも出ます!(ヒント:終盤まで出ない)
彼らの出番は引っ張りに引っ張られるわけですが、前倒しで出てきた衛星兵器「XVII」に70年代特撮キッズの血液はグラグラとふっ騰。XVII=17=大鉄人17! もう一人の宇宙「鉄人」は、かつて少年と心通わせて人類を守った巨大ロボのオマージュだったのですから。
新17はオリジナルのデザインをほぼ踏襲。実写のモデルがないCGではあるものの、ちゃんと要塞(衛星)形態からロボットへと変形もする。超重力子砲(グラビトン!)を撃つときのタメがもう少し欲しいですが、贅沢を言っちゃバチが当たりますね。
やっと出てきた新生キョーダインは、オリジナルの「兄弟」に対して「兄妹」。飛行機ロボ(スカイダイン)と自動車ロボ(グランダイン)の年齢もあべこべで、デザインも今風にアレンジされているし、しょせん別ものなのかな〜と醒めた目で観てしまいました。
が、それも一瞬のこと。攻撃するときは「キョー!」、やられるときは「ダイン!」といイチイチ叫んでる! オリジナルさながらの変形もあり、「キョーダインらしさ」はきっちりキープ。「インダーグランダイン!」(とある人物がグランダインに……)といった細かいネタまで原点に忠実で、れっきとした「キョーダイン映画」になってます。
キョーダインの強烈な存在感に押され気味ですが、主役はあくまでフォーゼ。大ピンチの弦太朗を救うために、ライダー部のメンバー達は必死にあることを……。それは弦太郎と仲間たちが育んできた「友情」の総決算でもあるんです。「友情とは成長の遅い植物である。それが友情という名の花を咲かすまでは、 幾度かの試練、困難の打撃を受けて堪えねばならない」って『キン肉マン』の名セリフを思い出して(元々はジョージ・ワシントンの言葉ですが)涙ぐんでしまいましたよ。
すでに児童誌やPVでも明かされていますが、フォーゼの新たな姿・フュージョンステイツのかっこ良さも鳥肌モノ。フォーゼ流のケンカ殺法+メテオの華麗なカンフー技が融合していて、単なるニコイチを超えた“フュージョン”の爆発力を秘めているのです。
キョーダイン&17による夢の“鉄人”共演あり、次の仮面ライダー・ウィザードの凝りに凝ったお披露目もあり、何よりフォーゼの映画として非の打ち所なし。この1年、『仮面ライダーフォーゼ』を見てきてよかったなあ……。あれ、テレビ版の最終回ってまだ、8月末のことだよね? きっと映画以上の感動があると、画面の前で正座して待ちますよ!
(多根清史)