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東京大学が秋入学に全面移行するという発表が先週末になされた。東大の浜田学長は記者会見で、「5年後の移行を目指す」と実現に向け意欲を語っている。以降、その余波を受けた各大学の反応、さらにネット上の反響もにぎわっている。

東大は入学時期を国際標準に合わせることで、日本人学生の海外留学と外国人留学生の受け入れを促進することがねらいであるという。

ちなみに諸外国における大学入学の時期は、秋・9月がアメリカ、イギリス、中国などの116ヵ国に及ぶが、春・4月となると日本、インドなどの7ヵ国にすぎないそうだ。また、東大における留学生の比率は1.9%(2011年5月時点)に対し、ハーバード大学(米国)は10%、ケンブリッジ大学(英国)でも10%を超えているほか、アジアではシンガポール国立大学は約20%というデータがある。

問題の焦点のひとつが、「ギャップターム」という、4月から9月入学までの空白の半年間と、卒業から翌年春の就職までの空白の半年間。これに対して東大側は「ボランティアや海外ホームステイなど多様な経験を積んでもらう」としている。

ネット上ではすでにさまざまな声が上がっている。
  • ハーバードが春入学じゃないからと言う理由で行くのやめるとか言うやつがいるか?
  • 優秀な人材は積極的に「集める」べきではない。向こうから勝手に「集まる」ようにすべきだ。
  • 大半の国が秋入学って言ってるけどこれ欧米限定だろ。タイとかフィリピンとか東南アジアなんかは5〜6月が新学期で2月が学年末ってところが多い。
  • 本気で留学生を増やすなら講義はもちろん事務も英語化しないとダメでしょう。
  • 空白の半年間を自衛隊に入隊させて日本人の愛国心・アイデンティティーを構築したら?
  • 4月入学の方が海外へ留学する人も日本へ留学しに来る人も、半年間の準備期間が持てて良いじゃないか。
  • 幼稚園から就職まで9月にしないと無理でしょ?


ちなみに早稲田大学商学部が2005年から秋入学を併用したものの、わずか5年で中止している。しかし東大は、北海道大、東北大、名古屋大、京都大、大阪大、九州大といった旧帝大のほか、筑波大、東工大、一橋大、また私大からは早稲田大、慶応大を交えて、課題や実施方法について議論する協議会を立ち上げることを明かしたほか、経済団体や20社ほどの企業との協議会も設立する予定というから本気だ。

さらに本日の報道によると、東大のこの提唱を受けて、政府は国家公務員の秋採用の検討を始めたという。


この問題、私たち子育て世代にとっても決して無関係ではなく、むしろわが子たちがその影響をまともに受けることになるかもしれない。子どもの成長において5年後なんてあっという間。東大が音頭をとって有力大学や企業も交えて協議するということは、その他大勢はもちろん、高校・中学・小学校・幼稚園・保育園にいたるまで波及することを想定しておく必要があるだろう。

もしかしたら近い将来、夏生まれの子が「早生まれ」と呼ばれ、入学式は金木犀の香りのなかで行われ、運動会は春の定番行事になるかもしれない。学校行事や四季感ががらっと入れ替わり、ドメスティックで保守的な親世代の既存の価値観が通用しない世の中が訪れるかもしれない。


深田洋介
学研の編集者、AllAboutのWebエディターを経て、サイバーエージェントの新規事業コンテストでは子育て支援のネットサービスでグランプリを獲得、その後独立。現在は子育て・教育業界×出版・ネット媒体における深い知識と経験・人脈を駆使して活動中。2001年生まれの娘の父。



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