キリン杯でペルー、チェコと2連戦中のA代表と、ペルー戦の前座としてオーストラリアと戦ったU‐22代表。そのどちらのジャパンにも18歳の注目株・宮市亮が選出されなかったことが、サッカーメディアや関係者の間で話題だ。

 並外れたスピードと突破力を評価された宮市は、昨年12月、高校卒業を待たずにイングランドの名門アーセナルと契約した。代表経験のない外国人選手は英国の就労ビザをすぐに取得できないため、クラブの意向でオランダのフェイエノールトへレンタル移籍するや、すぐにレギュラーの座を獲得。わずか半年で3得点3アシストをマークするなど不振のチームを蘇らせ、現地のサポーターからは元ブラジル代表のロナウジーニョを彷彿させるとして“リョウジーニョ”なるニックネームをつけられた。

 そうした活躍を評価したアーセナルのべンゲル監督は、日本代表のザッケローニ監督に直接、キリン杯への宮市招集を推薦していたという。にもかかわらず、金の卵はなぜA代表どころかU‐22代表にも呼ばれなかったのだろう?

「まず、ベンゲルの“推薦”は割り引いて考える必要があります」、こう語るのはサッカー専門誌デスクのA氏だ。

「宮市にA代表歴ができれば、英国での就労ビザを取得しやすくなる。確かにベンゲル監督は彼を高く買っていますが、要するに将来アーセナルでプレーさせるための既成事実が欲しいだけ。本当に宮市が今、日本のA代表でやれる実力があるとは思っていないはずですよ」(A氏)

 さらにザッケローニ監督の性格を知る者なら、宮市の招集などハナからありえないのはわかりきっていたようだ。

「周囲がいかに騒ぎ立てる選手でも、ザックは自分の目でその実力を確かめない限り代表には招集しないでしょう。彼は宮市のプレーをほとんどチェックしていないわけですから、呼ぶわけがない」(一般紙サッカー担当記者B氏)

 さらに今回、ザックが選んだメンバーには家長昭博(マジョルカ)、宇佐美貴史(G大阪)とドリブラーが複数いて、宮市とキャラがかぶる不運もあった。

「日本の若手サイドアタッカーのなかで、ザックは特に宇佐美を気にかけているみたいですね。キリン杯前の会見でも、わざわざ『もう少し選手として完成してほしいし、努力するよう本人にも直接伝えたい』と苦言を呈したほど。それはつまり期待の裏返しですよ。今回、ザックはチームへの指導と並行して、宇佐美を“教育”することで手いっぱい。宮市の能力を確認する余裕は、いずれにせよなかった」(B氏)

 また、こんな声もある。

「オランダでのデビュー当初こそ鮮烈だったけど、リーグ終盤にかけ、宮市のパフォーマンスは徐々に尻すぼみになっていった。日本のマスコミはそのあたりをきちんと報道していないから、彼に対する期待が必要以上に高まっていたにすぎない」(代理人C氏)

 A代表については、まだまだ宮市の出る幕なしが現実のようだ。では、U‐22代表招集の可能性はどうだったのだろう。関塚隆監督はオーストラリア戦前の会見で、宮市について「手元に置いてみることも考えたが、他選手との兼ね合いやタイミングを考えて今回は見送った」と説明したが、これをそのまま信用していいのか?

「監督の言葉にウソはないと思いますよ。今のU‐22代表は昨年のアジア大会でベストメンバーを組めなかったり、東日本大震災の影響などで、チームづくりが非常に遅れているんです。現時点で既存戦力の熟成を最優先させるのは、正しい判断では」(前出・B氏)

 2012年ロンドン五輪アジア2次予選のクウェート戦は6月19日、23日と、間近に迫っている。負ければ終わりの一発勝負を前に、新顔を試す時間などないということだ。2次予選を突破して一段落すれば、また状況も変わってくるかもしれないが、しかし、仮に最終予選も勝ち抜いて五輪本戦出場を果たした場合、今度は宮市以上の“未招集大物選手”の存在が浮かび上がってくる。

「香川真司ですよ。今やドルトムントの攻撃の核ですから五輪本戦だけの参加になるでしょうが、宮市より確実に計算が立つ。とすれば、宮市が今後U‐22代表に呼ばれる機会って、なかなかないのかも」(前出・A氏)

 ええっ!? A代表はおろか、ロンドン五輪で日の丸をつけた宮市の姿も見られないってこと? それはあまりにもったいない……。こうなったら来季は今年以上の大爆発をして、A代表とU‐22代表がマジで奪い合いをするような選手に成長するしかない。頑張れ、リョウジーニョ!