2点目も見事だった。左サイドからのクロスのこぼれ球を拾った佐川印刷がカウンターを仕掛けようとしたところ、ボランチの太田康介がインターセプト。すぐに右サイドに展開する。そしてボールを受けた鈴木が中に切り込み、相手DFを引きつけたところで、オーバーラップしてきたサイドバックの大竹隆人にヒールパス。完全にフリーでサイドを駆け上がった大竹がゴール前に折り返しを入れる。ゴール前、ニアに走り込んだディミッチがスルーをすると、ファーサイドに走り込んだ太田はフリーの状態。軽やかにゴールに流し込み、追加点を挙げたのである。これも5人が絡んで決めたゴール。町田サッカーの真骨頂を見ることができた。

■サッカーの「美」を追求する町田

「2点とも練習で対策していた形。やってくることが分かっていてもやられてしまった。2対0というスコア以上のものを感じましたね」。佐川印刷・中森大介監督は清々しい表情で敗戦を認めた。その言葉は町田サッカーにとって、最高のほめ言葉と言えよう。相手を上回っての勝利。「ずっと言ってきた、自分たちの最大限の力を発揮すれば、どんな相手でも関係ないということが実証された」とポポヴィッチ監督は満面の笑みを見せた。今後、この試合が一つの指標となりそうだ。

しかし、今季のJFLは7節が終了した時点で、1位から13位までの勝ち点差がわずか8という大混戦となっており、どのチームも力の差はほんの紙一重。その中で相手を凌駕することは至難の業である。今後町田が「強い」と認められれば認められるほど、相手は町田のよさを潰してくることだろう。さらなる苦戦の連続が予想される。
それでも、町田は結果だけでなく、サッカーの「美」を追求する。その志の高さで相手を上回ってみせるという気概がチームに充満している。「Jリーグ参入」よりもはるか大きなものを手にするために――町田の挑戦は続く。

■著者プロフィール
【佐藤拓也】
1977年生まれ。北海道生まれ、横浜育ち。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、フリーランスのライターとして活動を開始。その後、「EL GOLAZO」や「J’sGOAL」、「週刊サッカーダイジェスト」「週刊サッカーマガジン」「スポーツナビ」などサッカー専門媒体に執筆。現在はJ2を中心に様々なカテゴリーを取材して回っている。

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