投資家がアジアの成長などに注目し、海外運用への関心を深める中、国内の運用会社は海外の運用・調査体制を充実させている。野村アセットマネジメントの最高運用責任者(CIO)で執行役員の南村芳寛(なむら よしひろ)氏に、同社の運用部門が目指している方向について聞いた。

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 投資家がアジアの成長などに注目し、海外運用への関心を深める中、国内の運用会社は海外の運用・調査体制を充実させている。中でも国内運用会社トップの野村アセットマネジメントのアジアでの運用体制は拡充が進んでいる。同社の最高運用責任者(CIO)で執行役員の南村芳寛(なむら よしひろ)氏に、同社の運用部門が目指している方向について聞いた。

――野村アセットマネジメントのアジアにおける運用・調査拠点の状況は? 

 株式運用では、近年特にアジアの成長重視が言われるが、当社の前身である野村證券投資信託委託や野村投資顧問が、1988年以降香港拠点およびシンガポール拠点を設け、アジア地域へ進出している。既に20年を超える現地での経験があり、歴史的に力を入れてきた分野といえる。

 現在は、シンガポールをアジア株式運用のコントロールタワーに位置づけ、香港、マレーシア、韓国(ソウル)を含めて、日本を除くアジア地域に約50名の運用・調査プロフェッショナルを配置している。2007年から2008年にかけてアジアの運用体制を積極的に拡充しており、それ以前と比較すると陣容は概ね倍増しているイメージだ。最近では2005年にソウル駐在員事務所、2006年にマレーシア拠点、2008年にマレーシアにイスラム運用の専門会社を設立しており、アジア全般で現地調査を強化した。

 また、インドにおいては、現地の最大の生命保険会社であるライフ・インシュアランス・コーポレーション・オブ・インディア(LIC)との合弁事業の準備が進んでいる。インドの株式運用については、当社の運用ノウハウを現地で活用する他、インドの調査情報を野村アセットの運用に生かしていきたい。

――シンガポールの役割が重くなっているようだが? 

 2010年4月に、私がCIOに就任した際に、当社が提供する幅広い運用を統括していくための補佐役として、株式CIOと債券CIOを設けた。株式CIOには東京から場所を移してシンガポールに駐在してもらっているが、アジアからグローバルに市場を見ていきたいという考えの現われだ。しかし、日本からアジアにシフトするというわけではない。すでに20年にわたってアジアで運用してきており、日本を含むアジア地域全体が我々のホームグラウンドだと考えている。

 実際、株式CIOが成長著しいアジア市場に直接触れることで、より多面的な見方が得られるようになったと感じている。私は東京に居るわけだが、どこに執務場所があっても、実務面で不自由を感じることはほとんどない。

 加えて、シンガポールに株式CIOを置いた理由には、エコノミストやクオンツ(計量分析)などの運用サポートといった東京に集めている全社共通のリソースを、アジアで一層効果的に活用していく狙いもある。

――商品サービス面での、今後の展開は? 

 アジアの株式運用においては、個別の国に投資するプロダクトを強化している。例えば、インド、オーストラリア、韓国、台湾、アセアンといったアジアの国・地域に投資するファンドシリーズがあるが、12月6日には、ここにインドネシア、タイ、フィリピンのファンドを追加する。

 一方で、債券運用の分野は、米国でモーゲージ債券など証券化商品を活用した運用に強みを持つノムラ・グローバル・アルファを2008年に設立したが、この会社が運用するファンドの過去2年間のパフォーマンスは、同種の運用タイプのファンドランキングで世界トップクラスとなっている。

 同じく米国には、ハイ・イールド債の運用を専門とし、20年にわたる運用実績があるノムラ・コーポレート・リサーチ・アンド・アセットマネジメント(NCRAM)があり、ハイ・イールド債券に投資する日本の投資信託で運用を担っているほか、海外の有力な機関投資家からも運用を受託している。

 また欧州では、ドイツのマイントラストという野村グループ傘下の運用会社を、今年4月にノムラ・アセット・マネジメント・ドイチェランドに社名を変更したが、この会社ではグローバルなインフレ連動債券の運用を行なっている。

 債券運用においては、東京を中心にグローバルな債券、為替の投資判断をしているが、米国や欧州にも特徴のある運用会社が育ってきたことで、従来に増して幅広い商品を提供できるようになっている。

 さらに、新たな分野としては、イスラム運用の分野にも力を入れている。2008年にマレーシアに設立したノムラ・イスラミック・アセット・マネジメントというイスラム運用の専門会社で、イスラム教のコーランの教えに適合する銘柄だけに投資する「シャリア株式運用」で実績が蓄積されてきている。イスラムの債券である「スクーク」の運用も本格的に取り組んでいきたいと考えている。

――運用・調査部門がめざしている方向は? 

 当社では、世界の運用・調査プロフェッショナルが一堂に会して投資戦略を議論する投資政策委員会の年次会議を行っており、今年は12月2日−3日に開催した。担当する資産や分野を超えた運用・調査部門としての一体感は大事にしていきたい。

 すでに、当社の運用・調査部門は海外拠点を含めて総勢400人超の陣容となっており、世界で有数の運用会社に伍していける体制と考えている。特に、日本を含むアジアの株式運用部門はトップクラスと自負している。アジアをベースにしたグローバルな運用会社として存在感を発揮したい。(聞き手・編集担当:徳永浩)



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