組織・人事コンサルティングのマーサーとリスクコンサルティングのクロールが、過去3年にクロスボーダーM&Aを実施したアジア・太平洋地域の企業、プライベートエクイティ・ファームを対象に実施した調査結果のレポート「アジア・太平洋地域の企業によるクロスボーダーM&Aのリスクと成功の鍵」によると、回答企業155社の約半数(49%)が、今後18カ月以内にM&Aの対象とする地域として中国(中華圏)を挙げている。次いで、北米29%、東南アジア27%、インド22%となった。日本と回答した割合はわずか1%にとどまり、投資対象としての魅力が相対的に低下している実態が浮き彫りになった。

 M&Aの狙いについては、「高成長地域への進出」が50%でトップ。「ノウハウや技術の獲得」34%、「規模の経済と低コストの達成」33%、「ブランドの獲得」32%がほぼ同じ水準で上位に並んだ。

 M&Aの各段階において、人事の課題がどの程度関連するかを聞いたところ(「非常に関連する」「関連する」の合計)、「M&A後の統合段階」が最も高く62%、次いで「M&Aの完了・統合計画段階」と「M&Aの立案・計画段階」が56%となっている。M&Aのターゲット選択やデューデリジェンスの段階においても「関連する」と回答している割合が高いことから、具体的な交渉に入る以前の段階から人事の課題が及ぼす影響についての検討が欠かせないものとなっている。
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 ターゲット企業のデューデリジェンスで精査すべき分野を聞いたところ、企業年金の債務や退職給付のコスト、雇用契約の規定といった「財務リスクに関わる人事の課題」が55%で最も高くなっている。次いで、「企業文化」(35%)、「リストラの機会」(32%)、「リテンションの問題」(30%)がそれぞれ3割を超えた。

 従業員のリテンションについて成功しているプログラムでは(「とても成功している」「成功している」の合計)、「キャリア開発」が71%で、「一定金額の支払い」(52%)、「報酬の増額」(52%)を上回っている。なお、「キャリア開発」と「新たなポジションや役割の拡大」は「とても成功している」とする回答の割合がともに10%でトップになっている。

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