ちょうど4年前、山本昌邦監督率いるU−22日本代表がソウルで韓国と戦ったときも、FW登録の3人を「2−1」の関係で前線に配備する3−4−3(3−4−2−1)にし、メディアはそれを超攻撃的といってもてはやした。だが、韓国の3−4−3を目の前にすると、どちらが攻撃的かは一目瞭然になった。

 90年代後半から2000年はじめにかけて、イタリアでゴール前を固めるカテナチオが流行している際も、その一方で豪華な名前が前線に並ぶ姿を見て、多くのメディアは超攻撃的だ表現した。
 サッカーの捉え方は旧態依然としたままだ。攻撃的サッカーと守備的サッカーの区別もままならない状況にあるのが日本のスタンダードだとすれば、世界のスタンダードから相当、遅れていることになる。

 川崎フロンターレのような3−4−3を、なぜ世界であまり見かけないのか。なぜそれを攻撃的サッカーと言わないのか。攻守が瞬時に入れ替わるサッカーにおける攻撃的サッカーとは? 
 その辺りは知識として知っておくべきである。守備的サッカーを超攻撃的と言ってしまうと、サッカーの本質に迫ることは難しい。レベルアップも難しいと僕は思う。(了)
杉山茂樹
1959年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、サッカーを中心とするスポーツのフリーライターとして多数の雑誌に寄稿するほか、サッカー解説者としても活躍。1年の半分以上をヨーロッパなどの海外で過ごし、精力的に取材を続けている。著書には、『史上最大サッカーランキング』 (廣済堂刊)『ワールドカップが夢だった』(ダイヤモンド社)など多数。
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