数々のゲーム雑誌が次々と姿を消していく中、なぜ『ファミ通』だけが生き残れたのか――。

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 1986年の創刊から今年で40年。ゲームファンなら誰もが知る老舗メディアは、ネットの台頭、スマホゲームの爆発的普及、そして深刻な出版不況という激動の波を乗り越えてきた。

 ゲーム雑誌『週刊ファミ通』の第7代編集長・嵯峨寛子氏を直撃すると、紙媒体へのこだわり、そして“生き残り”のためのある決断が見えてきた。


『週刊ファミ通』2026年6月18日号(6月4日発売)

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変化を余儀なくされた

ーー創刊の経緯は。ゲーム雑誌としては後発だったとか。

嵯峨寛子(以下、嵯峨) 最初は『ファミコン通信』という名前で、元々はPC向け情報誌『LOGiN(ログイン)』(1982年創刊、2008年休刊)の 1コーナーとしてスタートしました。

 そのコーナーが大変好評で創刊につながったと聞いています。ゲーム誌としては後発でしたが、ある時点から隔週から週刊に発売タイミングを変えたんですよね。ゲームの最新情報へのニーズが高まり、「隔週では情報を適切なタイミングでお届けできない」と、当時の編集部が判断したのですが、相当に大変だったようです。

 ただ、それを機に、ゲームの最新情報がどんどん『ファミ通』に集まるようになって、ナンバーワンのゲーム雑誌になった、と聞いています。

ーー嵯峨さんが編集部に入ったのはいつ頃のことだったのでしょうか。当時の『ファミ通』の雰囲気について教えてください。

嵯峨 私が最初に所属したのは 2000年代の終わりで、若手の編集者は「面白いことをやりたいな」と思っていたのではないかと思います。影響力の大きさは意識することなく、伸び伸び働いていましたね。

ーー印象的な転換期はありますか。

嵯峨 2000年に立ち上げた「ファミ通.com」でしょうか。立ち上げ当初はニュースリリースを載せることが中心で、手探りでどうにかサイトを作っていただけだったのですが、2010年代、特に後半のころになると、ウェブで新しいゲームについての発表があり、それをメディアがいち早く取り上げようとする状況になりました。つまり速報はウェブが担うようになったんです。「紙媒体はどうする?」という転機ですね。

ーー時代の変化でいうと、家庭用ゲーム機に代わって、スマホゲームの台頭も挙げられます。誌面への影響は?

嵯峨 実は『ファミ通』は家庭用ゲーム機だけでなく、アーケードゲームも扱っていたんです。なので、フィーチャーフォンやスマートフォンの台頭に合わせて、それらも取り扱うようになるのは自然な流れでした。

「モバゲー」や「グリー」のブーム時にも、いち早く誌面で特集をしましたね。だから「『ファミ通』でこれは扱えない」と考えたことはないんですよ。むしろゲームの幅が広がるのはいいことと思っていました。

 例えば「怪盗ロワイヤル」は、浜村(注:浜村弘一/KADOKAWA デジタルエンタテインメント担当シニアアドバイザー、『ファミ通』3代目編集長)も積極的に取り上げ、メディア全体で盛り上げていこうという空気をつくっていました。

月刊誌に負けない“じっくり読みたくなる”コンテンツへシフト

ーーその後、さらにネットが強くなると、紙の雑誌との“棲み分け”はどう考えていましたか。

嵯峨 2010年代の後半から、我々も紙の方向性を真剣に考えるようになりました。ゲームの最新ニュースや速報性においては、ウェブメディアに太刀打ちできなくなったからです。情報がウェブで無料で、かつ手軽に手に入る時代に、わざわざお金を出して紙の雑誌を買っていただくにはどうすればいいか。

 従来は、誌面で特集をしてもイレギュラーなものを除けば、1つのタイトルに十数ページまでで、それが限度と考えていたのですが、紙の雑誌を手に取ってじっくり読みたくなるボリュームのある方向に変更し、今では30〜50ページ、場合によっては100ページというケースもあります。週刊誌ですが「月刊誌に負けないコンテンツを用意する」という方向にシフトしています。

ーー編集部は大変なのでは。

嵯峨 負荷はかかっていますが、やるしかありません。それに、この路線を決断したからこそ、(紙の雑誌でやれている)今があると思っています。

「紙の雑誌であることに価値がある」

ーーどの出版社も紙の雑誌が売れないといわれる時代で、焦りはないのですか。

嵯峨 焦りはもちろんありますよ。出版業界全体が、右肩上がりの楽な事業ではありませんから、試行錯誤をしています。ですが、「紙の雑誌であることに価値がある」と考えていて、続けていくことを大事に考えています。

 デジタルの普及によって、情報は飽和しています。だからこそアナログの体験や熱量の価値も上がっていることも感じるんです。

 ゲームソフトはダウンロードで買われる方もたくさんいますが、一方でコラボカフェやポップアップショップは頻繁に開催されていて「物理的なものをみたい。手に取りたい」という欲望もあるじゃないですか。

 紙の雑誌で特集をしてほしい需要も感じるわけで、ボリュームや観音開きのデザインで「楽しい」と思えるアナログな価値を提供する意義はあると認識しています。

ーー若者の雑誌離れが叫ばれて久しいですが、読者層の変化は感じますか。

嵯峨 厳密なデータではありませんが、以前に比べると読者の年齢層は上がっていて、30代〜50代の男性が多いメディアという認識です。『ファミ通』をいろいろな層に読んでいただきたい気持ちはありますが、特定のターゲットを狙ったりはしておらず、「ニーズのあるエンタメコンテンツ」という軸で情報を届けることを大事にしています。

――編集部員の年齢層はどうですか。

嵯峨 意外に思われるかも知れませんが、若いスタッフもいて、彼らの提案した企画もたびたび実現させています。最近ですと、VTuberのインタビューやコラムはそうですね。

ーー手広くやっていますね。

嵯峨 はい。だからゲーム実況に人気が出たら、ストリーマー(配信者)の方にインタビューをしますし、ゲームから派生したアニメも取り上げることになります。それは昔の『ファミ通』から変わらないところです。結果的に読者に喜んでもらえるものを提案したいという考え方ですね。

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 ネットの速報性に真っ向から挑むのではなく、「紙ならではの熱量と物理的なボリューム」で独自の価値を再定義した『ファミ通』。時代に合わせて形を変えながらも、ゲームファンが求めるものを愚直に作り続ける姿勢が、今の存在感に繋がっているのだろう。

「中国のハイクオリティ無料ゲームに危機感」『ファミ通』編集長が明かした日本のゲームメーカーが直面する“深刻なリスク”〉へ続く

(河村 鳴紘)