【小林 拓矢】「東日本のんびり旅パス」はなぜ1年で消えてしまったのか…JR東日本がフリーきっぷを減らし続ける「本当の理由」

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1年で終わってしまった「東日本のんびり旅パス」

近年のJR東日本は、全線や広域圏を対象にしたフリーパスを減らし続けている。2025年に登場した「東日本のんびり旅パス」は、今年は発売される気配がまだない。

筆者がJR東日本に問い合わせたところでは、「おトクなきっぷの設定につきましては、お客さまのニーズを踏まえつつ、区間、列車の利用状況などを総合的に判断したうえで設定させていただいており、現在のところ『東日本のんびり旅パス』の再発売の予定についてはお伝えできる内容はございません」と、発売するともしないともいえない回答だった。この記事の掲載後に発売されればいいのだが……。

「三連休東日本・函館パス」は2021年1月利用分を最後に販売が終了し、「週末パス」は2025年6月で販売終了。「旅せよ平日!JR東日本たびキュン早割パス」(通称:キュンパス)は現状、冬季平日のみ利用可という状況にある。

「東日本のんびり旅パス」は、一人旅でも、家族や仲間の旅でも、旅行者自身が自由に旅程を設計して、気の向くまま途中下車ができるような、のんびりとした旅をしたいというニーズに対応し、「土休日を含む連続する3日間、JR東日本の普通・快速列車が乗り降り自由な周遊パス(BRTも含む)」を、新たに「えきねっと」限定で発売するものだった。

価格は9000円(おとな・こども同額)、有効期間は「えきねっと」で購入する際に指定した利用開始日から連続する3日間で、2025年に登場した際には、同年の7月1日から12月26日までが利用期間となっていた(ただし、8月10日から19日は利用不可)。

「東日本のんびり旅パス」が発売された際のプレスリリースには、「JR東日本はこれからも、東日本エリアの魅力をのんびり楽しめる鉄道の旅のご提案をしていきます」と記載されており、その根拠として、経営ビジョン「変革2027」に掲げる「地方を豊かに」が挙げられていた。

年々渋くなるJR東日本のフリーパス

この経営ビジョン「変革2027」は、2026年4月に「勇翔2034」へと進化した。その際、「地域に活力をもたらし豊かな日本に」という項目が新たに加わっている。多くの人が地方を訪れることで、それが地域の活力となり、JR東日本沿線地域が豊かになる、という考え方だ。

しかしその視点から考えると、「東日本のんびり旅パス」は存続し続けてもいいはずである。いままであった各種のフリーパスも、人の行き来を活発にすることで地域活性化に貢献し、JRにも地域にも利益をもたらすものであるはずだ。過去に発売されていたさまざまな広域的フリーパスは、見直しのうえ再登場してもいいのではないか。

この手のパスでもっとも使い心地のいいものは「大人の休日倶楽部パス」だが、これは俱楽部の会員である必要があり、会員要件には年齢も含まれている。微妙にハードルが高いのだ。

ここで、なぜJR東日本のフリーパスの類が年々渋くなっているのかについて考えてみたい。

新幹線や特急などの利用要件も厳しい

以前は、フリーパスのほかに特急券を別途購入すれば新幹線や特急に乗車でき、発売額に一定回数の新幹線・特急の指定席乗車が含まれていることが多かった。優等列車の自由席にも乗れるというものもあった。

だが、いまや新幹線や特急からは自由席がどんどん減ってきている。短距離利用が少ない新幹線では全車指定席となり、在来線特急も「着席こそサービス」という考え方から、短距離列車であっても全車指定席化が進んだ。

この「着席=サービス」という価値観のもとでは、指定席利用者、つまりビジネス需要や正規のきっぷを買う乗客へのサービスが優先される。それ自体は当然のことだが、その結果、フリーきっぷ利用者へのサービスは削減せざるを得なくなる。

こうした背景がある以上、JR東日本において各種フリーきっぷが縮小し続けていること自体は、やむを得ないものがある。

窓口・券売機から「えきねっと」への流れ

JR東日本が「みどりの窓口」を縮小しているのは周知の事実だ。また近年は、「えきねっと」によるチケットレスサービスを充実させる方向性を示している。

となると、窓口や指定席券売機で発券し、指定席の確保も同様の手段で行う旧来のフリーきっぷは、JR東日本にとってはどこか手間のかかる存在になっているのかもしれない。

「東日本のんびり旅パス」は、「えきねっと」で購入しても券売機での発券が必要となっていた。また「大人の休日倶楽部パス」では一日あたりの発売枚数が制限されており、こちらもフリーパスや新幹線・特急券を指定席券売機から紙のきっぷとして発券しなければならない。

すべてをスマホの「えきねっと」で済ませたいという考え方からすれば、紙の券を使うフリーきっぷは、同社のチケットレスサービス推進の方針とは折り合いが悪いと言っていいだろう。

いまの紙のきっぷは、裏面に磁気が塗布されている。新幹線や特急の紙のきっぷも同様だ。

しかしJR東日本は、2027年春から近距離の紙のきっぷを、磁気券からQRコード印刷の紙のきっぷへと置き換える予定だ。長期的には、新幹線や特急に乗車する際のきっぷも、磁気券からQRコード印刷のきっぷに置き換えるとの見通しもある。

なお、JR東日本が目指す本来のゴールはあくまでチケットレス化であり、QRコード印刷のきっぷは、それを使わない人のための「補完的な存在」という位置づけだ。

自動改札機は、「交通系ICカード専用」のものが大半になっており、紙のきっぷも使用できる改札機は年々減っている。QR対応の自動改札機をどこまで増やすか、現時点では未知数だ。

チケットレス化を推進したいJR東日本の考え方からすると、残念ながら広範囲のフリーきっぷは今後衰退こそすれ、充実することはないのではないだろうか。

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