ゼンショーが展開するイタリアンレストラン「オリーブの丘」が注目を集めている。ライターの鬼頭勇大さんは「売り上げも店舗数も大きな差があるが、同じイタリアンレストランであるサイゼリヤの絶対王者の地位を揺るがす存在になりうる。なぜならモーニングに限って言えば、圧勝しているからだ」という――。

■絶対王者・サイゼリヤを脅かす「ファミレスの名前」

イタリアンレストランといえば「サイゼリヤ」が一強状態だが、その牙城がゆらぐかもしれない。

サイゼリヤの2025年8月期の売り上げは前期比114.3%の2567億1400万円、営業利益も同104.3%の154億9900万円(ともに連結)と安定して業績を伸ばしている。しかし、そんなサイゼの「上位互換」とささやかれ、SNSで頻繁にバズるチェーンが出てきている。

「すき家」「はま寿司」などを展開するゼンショーホールディングスがここ10〜15年ほど関東を中心に店舗網を広げている「イタリア食堂 オリーブの丘(以下、オリーブの丘)」だ。

筆者撮影
オリーブの丘 新座片山店 - 筆者撮影

絶対王者とも言えるサイゼリヤの国内店舗数は、公式サイトによると1066軒(2026年5月時点)。対するオリーブの丘も同じく公式サイトで調べると、近日オープン予定の店も含めて64店舗である。サイゼリヤと1000店以上の差がある。

両社の店舗数は圧倒的に離れているようにも思える。にもかかわらず、なぜオリーブの丘がジャイアントキリングする可能性があると言えるのか。そのヒントになりそうなのが、近年各社がしのぎを削る「モーニング」だ。サイゼリヤとオリーブの丘はいずれもモーニングを提供しているが、両社には明確な「違い」がある。そしてそれこそが、絶対王者であるサイゼリヤにとって近年の死角をあぶりだしているのだ。

■なぜ朝からオリーブの丘は混むのか

現在60店舗ほどを展開するオリーブの丘。食べログなどの情報を参照すると最も古い店舗は東京都の保谷店で2011年にオープンしている。商業施設や駅前でもよく目にするサイゼリヤと違い、オリーブの丘は基本的に郊外への出店を重ねている。

筆者が訪れたのは新座片山店(埼玉県新座市)。国道254線沿いに、特徴的な赤い三角屋根とイタリア国旗色の店舗がある。店の駐車場は、午前9前にもかかわらず8〜9割が埋まっており人気がうかがえる。

朝から多くの人がオリーブの丘を訪問する理由は、モーニングメニューにある。

昨今、何回目かのモーニングブームと呼ばれている。市場調査を行うサカーナ・ジャパンによれば、その市場規模は5347億円(2024年10月〜2025年9月)。前年同期比で3.2%増、コロナ前との比較では24.5%も成長しており、各社が参入している。

外食チェーンの多くは「常時提供されている定番の食事(グランドメニュー)を比較的安く提供」というスタンスをとっているが、オリーブの丘のスタンスはちょっと異なる。具体的に見ていこう。

オリーブの丘のモーニングは土日祝(7時〜10時)で、メニューには「カスクートサンド」「オープンカスクート」「パニーニ」「モーニングピッツァ」「パン・プディング」といった商品が並ぶ。

画像=オリーブの丘
オリーブの丘のモーニングメニュー - 画像=オリーブの丘

■ここでしか食べられないメニュー

いずれもあまりチェーン店では目にしない馴染みの薄い食べ物が並んでいるのが、オリーブの丘のモーニングの特徴といえる。

パニーニとは、イタリア発祥のあたたかいサンドイッチである。オリーブの丘では、ゴマを使った香りのよいパンを使っているのが特徴だ。カスクートはフランス発祥で、フランスパンにハムやチーズなどを挟んだもの。パニーニとは異なり、基本的にはあたたかくなく常温で食べる。ピザも「マルゲリータ」といった見慣れたものではなく「ビスマルク風」となっている。

これにドリンクバーが付いており、ヨーグルトかサラダを選べる。もちろん単品での注文も可能だ。

筆者撮影
「パニーニ〜スピナッチ〜」(715円・税込み)。スピナッチは「ほうれん草」を意味する。これにドリンクとヨーグルトorサラダがつく。 - 筆者撮影

特筆すべきは、これらのモーニングメニューはグランドメニューに存在せず朝限定であること。駅前・繁華街への出店と違ってロードサイドの出店が大半のオリーブの丘にとって「どこかに行くついで」のモーニング需要を掴むのは難しい。そこで、こうした「わざわざ食べに行きたい」ようなメニュー設計にしていると思われる。

その狙いは、価格にも表れている。ワンコイン未満の設定でモーニングを提供しているチェーンも多いのに対し、オリーブの丘ではモーニングセットの最安値はピザとカスクートサンド(コーン&マヨ)の539円(税込み、以下同)。ほうれん草やベーコン、チーズなどを挟んだスピナッチのパニーニやオープンカスクートは715円とワンコインには収まりきらない。とはいえ「高すぎる」とは感じない絶妙なラインで、日常のちょっとした贅沢で訪れる――といったシーンが思い浮かぶ。

筆者撮影
他ではあまり見られない「カスクートサンド〜バジルチキンマヨ〜」(649円)。 - 筆者撮影

■シンプルなサイゼの朝食

対して、サイゼリヤのモーニングはかなりシンプルだ。

サイゼリヤは2025年6月から一部店舗で試験的にモーニングを導入し、その後も対応店舗を順次拡大している。特徴はとにかく「安い」こと。

焼きシナモンフォッカチオにドリンクバーが付いて税込み300円という設定は当初から話題を呼んだ。フォッカチオだけでなく、パニーニとドリンクバー、ポテトが付いてもワンコインで収まる価格設定となっている。確かに安さは魅力的だが、オリーブの丘と比較するとどうしても内容が見劣りする。

やや古いものにはなるが、ホットペッパーグルメ外食総研による「朝食の外食利用」に関する調査(2024年)によると、消費者がモーニングに求めるものは平日・休日ともに「プチ贅沢気分が味わえる」がトップだった。

この点、メニュー数とともに安さがゆえに「特別感」があまりないサイゼリヤのモーニングに対し、オリーブの丘は“圧勝”していると言えるかもしれない。

振り返ると、コロナ禍で24時間営業を廃止した外食チェーンも多い中、サイゼリヤは2011年と早期から24時間営業を廃止していた。また近年、サイゼリヤはその圧倒的な安さを維持する上で必要不可欠な「効率化」のため、メニュー数を絞ってきた。

サイゼリヤの店舗(2006年9月撮影)(写真=Tokoroten/PD-self/Wikimedia Commons)

■オリーブの丘の豊富なメニュー

2023年8月期には約140品あったメニューを100品ほどまで圧縮し、空いたスペースを「おすすめメニュー」的な記載で埋めているものの、SNSでは落胆する声も聞かれる。

価格を維持するため、こうした「引き算の効率化」を徹底してきたサイゼリヤとすれば、そこまで高回転を見込めない朝の時間にわざわざ店を開ける必要性は高くなかったのだろう。朝から何品も頼む人は多くないはずで客単価の面でも期待できない上に、ちょい飲み需要も見込めない。

対してオリーブの丘は非常にメニューが豊富なのが特徴だ。

イタリア料理の代表格ともいえるピザに関して、サイゼリヤは1ページ・4品種。パスタのページは2ページだ。

対するオリーブの丘は、何とピザだけで2ページ、パスタに関しては4ページもスペースを割いている。メニュー全体のページ数もサイゼリヤの13ページに対してオリーブの丘では18ページ、さらにところどころ季節限定メニューも差し挟まれている。

オリーブの丘は平日限定のランチメニューも提供しており、こちらもグランドメニューにはないメニューが目立つ。モーニング同様にこの時間帯しか食べられないメニューが並んでいるのだ。また大半のメニューはドリンクバーを付けても1000円以内に収まり、「ランチ1000円の壁」という条件も守っている。

■サイゼの優位は変わらないが…

オリーブの丘がサイゼリヤを脅かしそうな理由は、もちろんこれだけではない。

ゼンショーホールディングスは、オリーブの丘に加えてイタリアン業界では「ジョリーパスタ」を324店舗展開している。また、イタリアンではないがファミレス「ココス」は506店舗ある。

すかいらーくホールディングスが「ガスト→資さんうどん」などの業態転換を進め、客の食い合いを無くして効率的に売り上げを伸ばしている。これと同様に、ゼンショーが傘下のチェーン店を「オリーブの丘化」すれば、店舗網は瞬く間に広がるはずだ。

そもそも現在営業しているオリーブの丘も、2007年にゼンショーホールディングスが買収したサンデーサンのブランド「フラカッソ」から転換した店舗がいくつかある。呼び出し機や配膳ロボットの導入に加え一部店舗では「特急レーン」も活用するなどDXを徹底しており、少人数で店舗を運営するノウハウも蓄積しており、店舗網を増やすという点では、サイゼリヤより優位性があるといる。

価格面においてはさすがにサイゼリヤが圧倒している。サイゼ最強の看板メニュー「ミラノ風ドリア」が300円(税込み、以下同)なのに対し、明らかに意識したであろうオリーブの丘の「ボローニャドリア」は539円。サイゼ「ほうれん草のソテー」が200円で、オリーブの丘「ほうれん草のガーリックバター」は319円。概ね100〜200円ほど、オリーブの丘の方が高い。

■「すき家」のようになれるか

そんな中で思い浮かぶのが、牛丼チェーンの「すき家」だ。米価や円安による輸入価格の高騰に各社があえぐ中、すき家は値下げを発表して波紋を呼んだ。

値下げといっても10〜40円程度なので、ゼンショーが本気を出しても現状でサイゼとオリーブの丘との間にある100〜200円ほどの価格差を縮める可能性はほとんどない。

だが、日本で最大の飲食チェーンというスケールメリット・体力はあなどれない。サイゼがさらなるコスト高に耐えかね、どこかのタイミングで価格が拮抗し始める事態はあるかもしれない。となると一気に出店攻勢へとゼンショーホールディングスがアクセルを踏んで業界地図が一変する未来も、あり得なくはない。

思い起こせば牛丼業界では、“御三家”のうち最後発だったすき家が今や1位に鎮座している。同じように、オリーブの丘もいつかサイゼリヤを超える日が来るのか。少なくともモーニングという局地戦ではバラエティ豊かなオリーブの丘に軍配が上がっている。カギを握るのは、サイゼリヤが価格を追求する中で失った面白みを、オリーブの丘が持ち続けられるかだろう。

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鬼頭 勇大(きとう・ゆうだい)
フリーライター・編集者
広島カープの熱狂的ファン。ビジネス系書籍編集、健保組合事務職、ビジネス系ウェブメディア副編集長を経て独立。飲食系から働き方、エンタープライズITまでビジネス全般にわたる幅広い領域の取材経験がある。
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(フリーライター・編集者 鬼頭 勇大)