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まったく新しい4.0L V8のプラグインHV

スーパーカー級の速さを備えつつ、高度に洗練され豪華なグランドツアラー。自動車界の王族的なポジションにありながら、実用性もすこぶる高い。2003年に登場したコンチネンタルGTは、まさにそれが体現されたベントレーといえた。

【画像】スーパーカー ✕ グランドツアラー ベントレー・コンチネンタルGT スピード 競合モデルは? 全188枚

動的能力は、フロントエンジンのアストン マーティンやフェラーリへ匹敵。それでいて、最高にラグジュアリーな移動体験も叶えていた。


ベントレー・コンチネンタルGT スピード(欧州仕様)

フォルクスワーゲン・グループのMSBプラットフォームを採用し、2019年に登場した3代目では、その特長へ一層の磨きがかかっていた。ホイールを大径化しつつ、ブレーキも強化。最新技術が投じられ、望ましい重量配分を実現していた。

今回試乗した4代目は、さらに能力が拡張している。コンチネンタルGT スピードのボンネット内に収まるのは、592psを発揮する4.0L V型8気筒エンジン。その後方には、189psを発揮する駆動用モーターを内蔵した、8速デュアルクラッチATが続く。

このプラグイン・ハイブリッドのパワートレインは、まったくの新設計。新しいエアスプリングと、デュアルバルブ内蔵ダンパーも採用した。スポーツ、コンフォート、ベントレーという、3種類のドライブモードも調整を受けている。

スポーツ・モード時は、サスペンションの衝撃吸収性を向上。コンフォート時は、しなやかな乗り心地を維持しつつ、強い入力に伴うバウンド感を払拭している。

最大トルク101.8kg-m 電気だけで最長80km走行可

新しいコンチネンタルGT スピードの登場によって、20年間続いたW型12気筒エンジンの時代へ、完全に終止符が打たれた。4代目で提供されるのは、プラグイン・ハイブリッドのみとなる。

歴代のどのベントレーより高性能で、走行時のCO2排出量も大幅に削っている。システム総合での最高出力は782ps、最大トルクは、実に101.8kg-mに達する。


ベントレー・コンチネンタルGT スピード(欧州仕様)

電子制御される四輪駆動システムと巧妙なトラクション・コントロールの効果で、0-100km/h加速は3.2秒。161km/hまでも、6.9秒で到達する。最高速度は334km/hが主張される。

電圧400Vの電動化技術が実装され、駆動用モーターだけで最長80km走行可能。140km/hまで出すこともできる。カタログ値の燃費は76.8km/Lで、CO2排出量は僅か29g/kmでしかない。

荷室の下へ搭載される駆動用バッテリーは、25.9kWh。最短3時間で100%へ回復できる。走行時の余力でも充電でき、ドライブモード次第では、都市部のゼロエミッション・ゾーンまで充電量を保つよう、エネルギー消費を調整してくれる。

このバッテリーは200kgあり、前後の重量配分は49:51。ベントレーの技術者は、理想的なオーバーステアの操縦性を与えるのに、望ましいバランスだと判断している。もちろん、しっかり電子的に安全性は担保されている。

反面、4代目は歴代で最も重い。シャシーのバランスとパワフルなパワートレインが、2459kgを感じさせないとしても。

白眉の能力が拡幅 至ってスムーズでパワフル

スタイリングは、3代目の流れを汲むもの。古びていたわけではなく、リフレッシュには苦労したようだ。コストの掛かるパネル類は、基本的にキャリーオーバー。前後の造形へ手を加えることで、しっかり新世代だと感じる雰囲気にある。

アイラインが与えられたヘッドライトは、70年以上ぶりに2灯となった。テールライトはワイドになり、テールパイプも新しい。トランクリッドにはアクティブウイングが備わらず、ピンと吊り上がった形状で、優れた空力特性を実現している。


ベントレー・コンチネンタルGT スピード(欧州仕様)

アルミホイールは22インチ。モダンさを協調するデザインだと思う。

走らせてみれば、白眉の能力が拡幅されたことは明らか。デフォルトでは、コンチネンタルGT スピードは電気だけで発進する。ロードノイズはほぼ聞こえず、乗り心地は極めて平滑。平穏な走りに心が奪われる。

スポーツ・モードへ切り替えると、ターボで過給されるV8エンジンのサウンドを堪能できる。人工的な増強感はない。

至ってスムーズでありながら、昔のようにパワフル。ハイブリッド・ドライブを選ぶと、妥協は最小限に、エネルギーを知的に節約してくれる。

8速デュアルクラッチATの変速は、驚くほどシームレス。ギアが変わる継ぎ目を、駆動用モーターが補完し、感じ取れるのはサウンドの変化だけといえる。

新サスペンションが生む鋭い操縦性

4代目最大の強みは、ツインチャンバー・エアスプリングとダンパーが実現させた操縦性だろう。ステアリングホイールの重み付けは完璧といえ、前後の重量配分の理想化によって、回頭性は従来以上にシャープ。確かに、僅かなオーバーステアも感取できる。

かといって、リアタイヤが暴れるような素振りは皆無。どんなに振り回しても、乗り心地は落ち着きを乱さない。


ベントレー・コンチネンタルGT スピード(欧州仕様)

782psのスーパーカー的でありつつ、ラグジュアリーでコンフォートなグランドツアラークーペでもある、コンチネンタルGT。そこへ優れたエネルギー効率が掛け合わさることで、一層訴求力は強まったといえる。

ベントレー・コンチネンタルGT スピード(欧州仕様)のスペック

英国価格:23万6600ポンド(約4543万円)
全長:4895mm
全幅:1966mm
全高:1397mm
最高速度:334km/h
0-100km/h加速:3.2秒
燃費:76.8km/L
CO2排出量:29g/km
車両重量:2459kg
パワートレイン:V型8気筒3996cc ターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:25.9kWh
最高出力:782ps(システム総合)
最大トルク:101.8kg-m(システム総合)
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック(四輪駆動)