イルカの個体11頭の呼気のサンプルからマイクロプラスチックが検出された/Todd Speakman/National Marine Mammal Foundation

(CNN)米ルイジアナ、フロリダ両州に生息するハンドウイルカ属のイルカの呼気からマイクロプラスチックが検出されたことが、新たな研究で明らかになった。海洋哺乳類がマイクロプラスチックを吸い込んでいる可能性を示す証拠が見つかったのは初めて。

マイクロプラスチックとは長さ5ミリ以下の微小なプラスチック片のことで、以前の研究で人間や動物の健康への悪影響との関係が指摘されていた。

従来の研究で海洋生物の組織内に発見されたマイクロプラスチックは、食物の摂取を通じて吸収され、消化管から他の臓器へと入り込んだものだった。だが、米科学誌プロスワンに16日掲載された今回の新研究は、クジラ目の動物がマイクロプラスチックに暴露される有力な経路として吸入を調べた初めてのものとなる。

論文共著者のミランダ・ジオバク氏は「人間の活動が活発な地域から離れた農村部であっても、イルカがマイクロプラスチックを吸入している可能性があることが分かった。これは都市化や人間による開発とは無関係に、こうした粒子が至る所に存在することを示している」と指摘した。ジオバク氏は環境科学者で、米チャールストン大学の講師(公衆衛生学)でもある。

空気中を浮遊するマイクロプラスチックは、北極地方などの僻(へき)地を含む世界中で見つかっている。論文によると、研究チームはマイクロプラスチックの吸入がイルカにどのような影響を与えるかはっきりと把握していないものの、肺の健康に影響を与える可能性が疑われているという。

ジオバク氏は研究結果について、「残念だが驚きではない」と指摘。「プラスチックが地球のほぼあらゆる部分を汚染していることは分かっており、野生生物の汚染はほぼ避けられないとみられる」との見方を示した。

海洋生物やマイクロプラスチックの摂取を調べる科学者の間では長年、人間と同様に、クジラ目の動物も呼吸を通じて体内にマイクロプラスチックを取り込む可能性があるとの見方が出ていた。

米デューク大学で博士号取得を目指す研究者、グレッグ・メリル氏は「今や確信をもってそれが言える」と話した。メリル氏は今回の研究に関わっていない。

研究チームはイルカの呼吸を調べるため、2023年5〜6月の調査でイルカの個体11頭からサンプルを摂取した。このうち6頭はルイジアナ州のバラタリア湾、5頭はフロリダ州のサラソータ湾の個体。イルカが息を吸ったり吐いたりする噴気孔にペトリ皿をかざし、顕微鏡でペトリ皿を調べた結果、それぞれのイルカが少なくとも一つのマイクロプラスチック片を呼吸で吐き出していることを突き止めた。

ジオバク氏によると、イルカから見つかったプラスチックの種類はこれまで人間の呼気の調査で見つかったものと同様で、最も多いのは通常衣類に使用されるポリエステルだという。