ここにきてオカルト専門の月刊誌「ムー」が大ブームとなっていた…!

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月刊ムーをご存じだろうか。日本でほぼ唯一のオカルト専門の月刊誌であり、その守備範囲はUFOからネッシー、巨人伝説からナチスまで幅広い。世の中のいかがわしくも面白そうな有象無象がギッシリ詰まった雑誌、それがムーだ。

この10年、ムーのロゴを使った商品やムーがテーマになったイベントや展覧会が増えている。黒メガネに黒シャツ、黒ひげという、ムー本誌以上に怪しい姿のムー編集長もテレビでよく目にする。ムーというブランドを雑誌から他のメディア、商品へと大きく広げ、その挑戦は成功を収めつつある。

同編集部でIP戦略を担当する望月哲史氏に話を聞いた。

すべてはTシャツから始まった

最近よく耳にするIPという言葉、「Intellectual Property」の略称で知的財産の意味だ。自社のコンテンツやブランドを生かし、ビジネス展開をする。アニメや漫画のキャラクターはもちろん、清涼飲料水メーカーがブランドロゴをアパレルに貸与したり、アパレルが自動車とコラボするのもIPビジネスだ。

月刊ムーの一般的な知名度がそれほど高かったわけではない。あくまでサブカルな存在であり、知っている人は深く知っているが、知らない人は表紙すら見たことがないニッチな雑誌だ。そのムーがIPビジネスを展開し、有名アパレルブランドとコラボしたり、百貨店でイベントを開催したりするのだから、時代が変わったというか動いたというか。

現在のようなIP戦略に、ムー編集部は乗り気ではなかったと望月氏。

「元々、三上編集長も編集部も乗り気ではなかったんです。雑誌を作りながらアパレルとコラボしたり40周年展(2018年にパルコで開催)をやったりする必要があるのかと。別にやらなくていいんじゃないかと」

ちょうどそこに中途入社で編集部に来たのが望月氏だった。

「ハードコアチョコレートからTシャツの話が来た時に、たまたま僕がいて、じゃあ自分が担当しましょうか、と」

ハードコアチョコレートはサブカル専門のアパレルメーカーで、映画やアニメを題材にした商品を販売している。ハードコアチョコレートの制作したムーのTシャツやスカジャンが売れ、ムーの名前を付けた商品が売れることにアパレル関係者が気づき始めた。

「アパレルとのコラボが多いのは、プリント、平面の表現だだからでしょうね。立体よりは作りやすいし、雑誌メディアの表現とも相性がいい。アクリルキーホルダーのようなアイテムも件数としては多いです」

当初は売り上げをどういう経理上の名目にすればいいのかさえ、社内で手探りだったという。

しまむらでムーコラボがブレイク、イベントも

次に大きな波となったのが、衣料品流通大手のしまむらのしまむらとのコラボだった。

「2018年に、しまむらで商品化しないかと当時の学研ライセンス室からムー編集部に連絡が来た時、まずはセットアップで試してみたいんです、と言われました。プロモーションとかするんですか? と聞くと、いや一切しません、しまむらデザインの棚にそっと入ります、と。当時は『しまパト』という楽しい文化がありまして、若い子たちがチラシに載っていないしまむらの商品を売り場で見つけるというのが流行っていました。しまパトで発見されるからいいだろうということのようでした」

売れればラッキーぐらいの感じで始まったわけだ。望月さんがツイッター(現X)で、しまむらにムーがあるらしいと含みを持たせた発信をした。すると本当にあった、買ったという書き込みが増え、あっという間に売り切れた。

「反響があったんでしょうね。しまむらから次はTシャツが何種類かとサンダルも出たり、いろんなジャンルでリクエストをいただきました。ライセンス売り上げもそれなりに大きくなりました」

そうなってくると会社(当時は学研プラス)もIP事業として事業計画が大きくなっていく。

「最初は誰も期待してなかったんですよね。しまむら、大丈夫? みたいなね。いつの間にかポップカルチャー化したというか、その文脈でムーが見つけられたということだと思います」

増え続けるコラボ商品

現在、ムーのコラボ商品はどんどん増え、今夏はniko and ...とのコラボのほか、さまざまなブランドから商品が出ている。

イベントも増え始めた。池袋パルコで行ったムー創刊40周年記念展は、3週間で1万人以上の入場者があり、グッズも売れた。

「三上編集長の文化人タレント化が進んだのもその頃ですね。最初はテレビに面白枠として使われるのはムーのブランドをダメにすると考えていたんですが、40周年だし、ムーの歴史、超常現象の専門家として、来たものは受けてください、と」

現在、三上編集長はホリプロコムと業務委託し、文化人枠のタレントとしても活躍している。

「当初は自分がスケジューリングや出演料のあれこれを担当していたんですが、正直、件数が多くなってきて、手相占い芸人の島田秀平さんのマネージャーさんにご相談し、本業優先の業務委託という形でお願いしました」

三上編集長の人気は高く、高知県立文学館で実施した講演イベントでは500人の客席が埋まったというからすごい。

ムーのIPビジネスはどこを目指す?

月刊誌らしいIPビジネスといえば、観光ガイドブックの『地球の歩き方』とのコラボだろう。『地球の歩き方 ムー-異世界(パラレルワールド)の歩き方』は13万部を超える大ヒットとなり、第二弾の『地球の歩き方 ムーJAPAN:神秘の国の歩き方』も順調に部数を伸ばしている。

「単発の商品としては一番大きかったですね。売り上げもそうですし、世の中へのインパクトも大きかった。世間的には怪しいことをまとめて面倒見ている集団がムーということになっているんでしょうね」

企業コラボには法則があり、トップ企業はチャレンジする必要はなく、3〜4番手の企業が目立つためにコラボ策を打ち出したりする。

ムーの場合もコラボした企業名を見ていくと、トップを追いかけるポジションの会社が多い。

「大手とコラボしないの? といわれることもあるんですが、ムーのライセンス営業を考えた場合、こちらから拡大志向で営業することはない。大手と組むことを目指してブランド運営をしていくというのは違う気がします。ムーは、たまたまみなさまに注目していただいていますが、基本的にはアングラであって、メジャー志向であってはいけない気がします」

創刊50年に向けて

いろいろなブランディングがあるが、ムーはあくまでニッチな市場にあるからムーなのだ。ムーのIPビジネスが成功したことを受けて、自社媒体はもとより、他社でもスター編集者を作り、IPビジネスに進出しようとする動きはあるそうだ。

「会社から攻めの営業をしていないと言われることもあるんですが、こちらから頼むのは筋が違うんじゃないか。基本がアングラなんですから。ライセンスビジネスは、ムーの名前を使って何かをする依頼、期待に応えるものです。うちにはこういう技術や素材があるので、何か作らせてくださいと私たちが頼むと、それは営業の目線が逆になる。ムーである以上、私たちは下請けになってはいけないと思うんです」

運が良かったと望月氏。

「40周年という節目とそこに三上丈晴という編集長がいたこと、それは運でしかない。これが文芸誌だったら作家さんに分散する形になったでしょうし、そうなると印象は薄くなる。表の看板を三上編集長が全部引き受けたことで、濃度が薄まらずに世に出すことができたと思います」

そろそろ創刊50年も見えてきた長寿雑誌である月刊ムー。秘密結社から雪男に幽霊、妖怪、UFOまで豊富なコンテンツで私たちの好奇心を刺激させ続けて欲しい。

望月哲史

1976年愛知県生まれ。2012年からムー編集部勤務。

webムー編集長のほか、ムーのライセンスグッズやコラボ企画なども担当。

webムー https://web-mu.jp/

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