「3日間当直だから」勤務医の給与の安さで転職、医師の夫の「最後の恋」の行く末

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「勤務医の方は、想像以上に給料が安い人もおり、夜勤や当直のアルバイトをされている方も多いです。これが浮気を隠す言い訳にしている人も少なくありません」と言うのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんだ。彼女は浮気調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。

今回相談に来たのは通訳としてフルタイム勤務している45歳の会社員歩美さん。前編「医師で年収500万円未満も?「勤務医貧乏」避け転職した48歳の夫の「怪しい行動」」では、結婚20年以上になる歩美さんが調査を依頼するまでのことを詳しくお伝えした。相談するのは48歳の勤務医の夫の浮気疑惑だ。

ふたりの間には国立大学医学部に通う19歳の息子と、医学部を目指している17歳の娘がいる。フルタイム勤務でも家事育児を一手に引き受けてきたのは歩美さん。忙しい医師の夫を尊敬・尊重してきたのだ。

しかし実は大学病院に勤務する夫は多忙だが給料は低く、当直や夜勤のアルバイトをしても年収1000万円に届くかどうかだった。医師という職業に就くには相当大変だが、実は金銭面の待遇はいいとは言いきれないことが、全国医学部長病院長会議が2024年9月11日に発表した『大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査結果』でもわかっている。なんと平均給与前後、年収500万円未満の医師もいるのだ。

給与も高くはない、とても忙しいからこそ家事育児は妻任せな上、なんと浮気の傾向が見えるという。その調査の結果は……。

夫の一目ぼれから始まったはずなのに

歩美さんと夫との夫婦関係を再度振り返りましょう。21年前、夫の一目惚れから始まった恋愛から二人は結婚します。夫は交際中から歩美さんに「最高の通訳だ」などと褒め続け、自信を得た歩美さんは、通訳職の正社員として、現在勤務している会社に入社します。

夫は、医療の現場で働くことが大好き。加えて、断れない性格で、結婚して子供ができてからも、当直や夜勤を繰り返していました。産休を取った医師の穴埋めなども積極的に行い、まとまった休みを取ることなく働いていたのだとか。

歩美さんはそんな夫を尊敬・尊重し、フルタイム勤務を続けながら、家事も育児も一手に引き受けてキャリアを重ねてきました。夫は歩美さんに感謝し、今年1月の結婚記念日に、「今までありがとう」とサファイヤの指輪をプレゼント。その石にはインクルージョン(内包物)があり、夫は「いろんなものを包んで、家族の時間を重ねてくれたあなたに感謝」と言っていたそう。このことからもわかるように、夫はとてもロマンチストです。

夫婦の間に信頼はありますが、性的な関係は消えていました。10年前、子育てが落ち着き歩美さんは夫に性交渉を持ちかけるも、夫は「疲れているから、外でやって」と拒否したのです。

夫のハードワークの様子を知る歩美さんは、傷つきながらもセックスレスの生活を受け入れることに。とはいえそんな過重労働を続けられるものではありません。夫のような勤務医の労働時間の長さは社会的にも問題視され、2024年4月に法規制がかかるようになります。

夫は働く時間が短くなれば、給料も減ることを予想し、夫は介護施設を運営する病院に転職。そこは給料もよく、夜勤がないことが魅力でした。転職してからは、家族で夕食を食べたり、医師を目指す2人の子供たちと夫との談笑姿が見られたりと、穏やかな日々が始まりました。

そんな幸せな時期が終わったのが9月初頭。それまでぽっちゃり体型の夫が痩せ始めて、かっこよくなるとともに、夫の宿直や夜勤が増えたのです。そこで歩美さんは浮気を直感。「相手が既婚者だと分かりながら、不倫をする女まともではない」と激怒し、夫と別れさせるための証拠を得るために、山村さんに調査を依頼したのです。

「当直になる」と言った3日間

夫が「この日は当直になると言った3日間を、ベタ付きで調査をしてほしい」とのことでしたので、その日を狙って準備をしました。

東京23区内の高級住宅地にある一戸建ての前で張り込みをスタート。この家は、歩美さんの親族が所有しており、有名な建築家が設計したとかで、おしゃれな雰囲気です。「親族から相場より少し安く借りられるからこの街に住めるんです」と話していたことを思い出しました。夫の実家は、代々官僚が多いとのこと、「夫は東大に入れなかったから、一浪して医学部に入ったことがコンプレックスみたいです」とも歩美さんは言っていました。

夫は車の運転が苦手なので、徒歩での尾行です。朝7時に夫と歩美さん、娘が出てきました。3人で話しながら駅に向かっています。夫と娘は仲が良く、笑い声も聞こえてくる。ペアの探偵が「このお嬢さんに不倫がバレたら、結構大変なことになりそうですね」とポツリ。これまでの仕事を通じ、多感な時期の子供が親の恋愛を知り、関係が悪化するケースはたくさんありました。歩美さんが夫の浮気を察知し、すぐに火消しをする鋭さに、改めて感心してしまいました。

3人は大きな駅で別れ、それぞれの勤務先へ。夫は郊外方面に向かう電車に乗ります。身長は180センチ近くあり、お腹も出ていません。歩美さんは「転職まで地味で太ったおっさんだった」と言っていましたが、今はそんな気配はまったくありません。清潔感と優しさが漂っていて、モテそうです。駅から脇目も降らずに勤務先に入って行きました。

1本1万円のシャンパンを…

病院から夫が出てきたのは18時でした。まっすぐ帰れば自宅に19時過ぎには着きます。それなのに夫は渋谷駅で下車。駅の壁にもたれて、スマホを20分ほど凝視しつつ、何かを調べています。何枚かスクリーンショットをとって、デパ地下の食材売り場に移動。

鮮魚店で鯛を購入し、鱗を取ってもらっている間にニンニクやオリーブオイル、ハーブと1本1万円もするシャンパンを買いました。そして鯛をピックアップしてからバスに乗ってあるマンションに入って行ったのです。

おそらく、レシピサイトを見ながら、アクアパッツアの作り方を調べていたのでしょう。夫は家では一切料理しないことは聞いていたので、この様子を歩美さんが知ったら、ますます怒り、傷つくと感じてしまいました。

このマンションはセキュリティがしっかりしており、中に入ることはできません。カメラを仕掛けて待機していると、翌日の12時に夫と女性が腕を組んで出てきました。女性は落ち着いた雰囲気の整った顔立ちの女性で、歩美さんに似ています。2人は新宿駅までタクシーで向かい、ロマンスカーに乗りました。平日だったのでガラガラで、2人の会話を聞くことができました。どうも、この日は女性の誕生日のようで、夫は「あなたの誕生日を一緒に祝えるなんてうれしい」などと言っています。会話から夫が昨晩、アクアパッツアを作り、2人でお祝いしたことも分かりました。

夫と女性はかなり体を密着させており、お互いの体をまさぐりあっている。これを歩美さんが見たらかなり傷つくと思いました。箱根湯本駅で降りると、タクシーで高級ホテルに向かい、ここで1泊したのです。

「え? 奥さんいたの?」

2泊3日の証拠を押さえて歩美さんに見せたところ「嘘でしょ!!」とかなりのショックを受けていました。「家族旅行もろくにしたことがないのに、この女とは旅行してるってこと?」と泣いていました。

すぐに冷静さを取り戻し、「夫にこんな予約やプランニングができるとは思えない。きっと女性が全部お膳立てして、夫がお金を払っているんでしょう」と言いました。そして「感情的になっても仕方ない。こっちには子供2人と夫婦で重ねた歳月がある」と自分に言い聞かせるように話していました。

女性に全く心当たりがないとのことなので、別日を設けて調べたところ、夫の職場に出入りしている弁当納入業者の代表だと分かりました。夫はこの女性に一目惚れしてしまい、自らアプローチしたことものちにわかったのです。

歩美さんが、女性に面会を申し込むと「え? 奥さんいたの?」と驚かれたそうです。夫は女性に対して、「私は離婚したばかりで、両親とともに暮らしている」と言っていたとのこと。

「女性は40代前半ということもあり、妊娠の最後のチャンスだと夫のアプローチを受けたと語っていました。夫は彼女のことも騙していたんです」

「これが最後の恋になると思って」

歩美さんと女性は話し合い、夫を呼び出して、説教をしたそうです。夫は深く反省し「歩美以来、初めて人を好きになった。これが最後の恋になると思って、止められなかった」と泣いていたそうです。

私もこの調査をしていて、アラフィフの男性が、それまで真面目だったのに突然恋愛に暴走するケースをよく見てきました。歩美さんは「夫はそれまで、浮気などしたことがなかったんですよ。今回の浮気は、ホルモンのせい、ってことにしています」と夫を許したと語っていました。

夫は以降、真面目に帰ってくるようになりました。ただ「時間に追われない生活が、物足りなくなって、浮気をしてしまったかもしれない」とも話しており、歩美さんは夫に家事を教えて、主体的にさせるようになったそうです。

調査から3週間後、「夫は言われたことをきちんとやるようになり、それにより時間にも生活にもゆとりが出ました。今度念願の犬を飼うことにしたんです」と話していました。

今回の調査により、ワークライフバランスをとることが、人生には必要だと改めて感じました。勤務医として多忙すぎる歳月を重ねた夫は、そのバランスが崩れたことにより浮気に走ってしまった。そして、歩美さんのおっしゃる通り「最後の恋」という切迫感もあったのかもしれません。

今回は、歩美さんがすぐに気づいて夫と女性の関係を解消したから、女性の傷も浅かったという点も見逃せません。妻と離婚する気もない既婚者の夫が、軽い気持ちで行った浮気が続いたら、どんなことになっていたことでしょう。女性のことも騙していて、歩美さんも傷つき、そして笑いあっていたお嬢さんとの信頼関係も粉々になっていたことでしょう。歩美さんの機転で多くの笑顔が守られたとも言えます。

医師の中でも、最近よりお金を楽に稼げる美容医療を選ぶ人が多いといわれますが、これはそうでない専門医が「大変なわりに実入りが少ない」からといえるのかもしれません。しかし、医師という職業は命を預かるもの。思いと能力のある医師が忙殺されてしまうのではなく、きちんと収入を得られる社会にすることも、とても大切なことだと感じされられた調査でした。

調査料金は50万円(3日間・経費別)です。

医師で年収500万円未満も?「勤務医貧乏」避け転職した48歳の夫の「怪しい行動」