”800万回再生超え”で話題に!73歳TikTokerの生みの親が語る「バズりの裏側」…閉店寸前から大復活した店と常連客との「熱い絆」

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常連客が明かす「大バズりの裏側」

コロナ以降、客足がパタッと止まり閉業さえ考えていた、福岡県那珂川市にある居酒屋「お食事処 なごみ」(以下「なごみ」)。

スマートフォンさえ持っていない73歳の店主が、勧められるままにTikTokに店の窮状を訴える動画を投稿したところ、800万再生を超える大バズり。翌日から、店は大盛況となり救われたことについては、前編記事『“800万回再生超え”で話題の73歳TikTokerを直撃!「バズったという言葉も知らなかった」…店主が振り返る、売上1日1万円からの「大逆転劇」』で紹介した通りだ。

今回は、TikTokを知らない店主に投稿を勧めた常連客、橋爪音寿さん(29)に、バズりの裏側を聞いた。そこには、熱い想いとSNS活用の意外なノウハウが詰まっていた。

「僕の心を取り戻させてくれた場所だった」

橋爪さんが同店に通い始めたのは2024年2月頃。それまでは、東京に住んで会社経営をしていたが、生活や仕事でストレスが溜まり、うつ状態に。仕事も手につかないほどだったという。

「そんな時に、この辺り(那珂川市)に住んでいた知人が『気分転換に1週間くらいこっちに住んでみたら』と言ってくれて。住んでみると、だんだん元気になってきたので、住民票を移しました。そして、『なごみ』に通うようになって好きな店になりました。今こうして元気でいられるのは、この店のおかげです」

社会学者のレイ・オルデンバーグが、自宅や仕事場(や学校)以外の「サードプレイス(第3の居場所)」を持つことの重要性を説いているが、橋爪さんにとって同店が、最高のサードプレイスになったのだ。

弱音を吐く店主にTikTokのススメ

疲れた心を立ち直らせてくれるお店を見つけた橋爪さんだったが、いつ来ても店は閑古鳥。店主も「もう辞めようか」と嘆いている。そこで、お店と自分のためにという思いからTikTokへの投稿を提案する。

「たくさんの人に知って欲しいと思っていました。一応、僕が持っているノウハウを入れて投稿したので、1万〜2万再生くらいは行くかなと思っていましたが、800万超えはビックリしましたね」

実は、東京在住時からマーケティング関連の会社を経営している橋爪さん。SNSの運用について素人という訳ではなかったのだ。それでも、想像をはるかに超えるバズりだったが、再生数を伸ばすための工夫はどんな部分にあるのだろう。

「ショート動画は“視聴完了率”という指標が重要視されます。そのためには、コメントをつけてもらうのが効果的です。コメントを入力している裏でも動画は動いているので、必然的に全部見ることになりますから。

すると、結果的にTikTokのアルゴリズム上で『いい動画だ』と判断されて、オススメに出やすくなるので拡散されやすくなります」

今回のバズは、店主のキャラクターと気持ちに、橋爪さんの想いと経験が全て合致したものだったのだ。

「また、コメントが多くつけば、後から見る人はコメントを読むようになります。そうなると動画滞在時間が伸びて、さらに視聴完了率も上がってきます」

賛否があることはわかっていた

そうした仕組みをわかっていても、実際にコメントをつけてもらうのは簡単ではないように思える。どのようにして視聴者がコメントをつけたくなる要素を入れたのだろう。

「賛否が分かれる動画にすることが大事です。今回は、お店の経営について『助けてください』と訴えるのは賛否があるだろうと思っていました。実際、『本当に美味しいならSNSをしなくても人気出るだろ』とか『経営難をSNSに出すのってどうなの?』みたいな批判的な意見もありました」

同じように、賛否が分かれる要素を入れた動画は他にも投稿されていた。

「新メニューの試作を常連客に食べてもらって『マズイ」と言われて、アイデアを求める動画ですね。こちらはまさに、賛否が起こると思っていました。やはり『料理人なら自分で考えろ』と言ったコメントが出て来ましたね」

バズりたいわけではなく、お店に存続してほしい

動画がバズったおかげで、店は盛況を取り戻したが、移り変わりの激しい時代、ひとつの話題はそう長く続かない。一過性で終わらせないためにはさらなる工夫が必要になる。

「シンプルに心を打つ内容であることが必要だと僕は思います。その点は、大将が包み隠さずに本音を言ってくれたのがよかったですね。これからは、お店の魅力を本当に知ってもらうために、大将の気持ちやエピソードをもっと伝えていきたいと思っています。何も知らないままと背景を知ってから食べるのでは、味わい方が違いますからね」

今回のバズはあくまでひとつの結果でしかない。橋爪さんが伝えたかったのはこの店の魅力であり、目的は店の存続なのだ。

橋爪さんの想い

では、橋爪さんはこの店のどんなところに居心地の良さを感じ、常連になったのだろうか。

「ひとりひとりに向き合ってくれるお店なんです。僕がダイエットをしようとしていると、それを知って食前にトマトジュースを出してくれたり、頼みすぎても勝手に注文止めてくれていたりします(笑)」

コロナ以降は客足が遠のいたとはいえ、個人店にしては広い30席以上の店。ひとりひとりに向き合うのも容易ではないはずなのだ。

「常連のあるおじいちゃんがいたんですが、その方が口内炎が出来てしまっていろいろなものが食べられないと話していました。すると、その方でも食べやすいようにと、メニューにないクリームシチューが登場したりもしました。人情があり、温かくて本当に素敵なお店なんです」

バズるという言葉さえ知らなかった73歳店主の居酒屋が、TikTokでバズって救われた物語。SNSを通じて知った人でも、店主の温かい人柄によってリピーターとなり、また長くお店が賑わうことになりそうだ。

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