「オットマン」は、もともとソファと組みあわせて使う足置きのための家具だ。この快適性をクルマに取り入れたのがオットマン機能付きのシートである。スペースの限られる車内では、取り付けられるシート位置などに制限があり、ドライバーシートにはつかないが、同乗者にはうれしい装備となっている。この快適装備について掘り下げよう!!

「オットマン」は、もともとソファと組みあわせて使う足置きのための家具だ。この快適性をクルマに取り入れたのがオットマン機能付きのシートである。スペースの限られる車内では、取り付けられるシート位置などに制限があり、ドライバーシートにはつかないが、同乗者にはうれしい装備となっている。この快適シートはいくらくらいなのだろうか?

アルファードなどミニバンに採用される「オットマン」

トヨタアルファードはオットマン付きシートが2列目用に選べる

ミニバンでは、セパレートタイプの2列目シートにオットマンを装着することが多い。オットマンはシートの前端に装着された小さなクッションで、これを引き上げることにより、ふくらはぎを支える。長距離を快適に移動するための装備だ。

アルファードのオットマン付きシート。オレンジ部分にはヒーターが装備されている

ミニバンの2列目シートは、スライド機能により足元空間を広く確保することが可能で、ほかのカテゴリーに比べると乗員は足を前方へ伸ばして座れる。床と座面の間隔も、ミニバンはセダンやワゴンに比べると余裕があるから、オットマンを装着しやすい。ミニバンの2列目シートは、もともと一番快適な特等席で、オットマンはその特徴を際立たせている。

オットマンには使用上の注意点がある?

アルファードのオットマン付きシートの使用イメージ。走行中はリクライニング角度などに注意が必要だ

ただしオットマンには使用上の注意点もある。それはオットマンを極端に持ち上げないことだ。ミニバンの場合、3列目シートを格納すると、2列目の背もたれを後方へ大きくリクライニングできる。この状態でオットマンを持ち上げると、乗員の体が水平になり、寝そべるような姿勢をとれる。

安楽だが、走行中にこの姿勢をとると危険だ。前面衝突した時に、シートベルトが乗員の体を正確に拘束できない。さらに体が前方へ倒れ込む衝突時の衝撃を両足で受け止められず、体がシートに沈み込むサブマリン現象を発生させやすい。そうなればシートベルトが内蔵を強く圧迫する。

つまり寝そべった姿勢をとれるのは駐車中だけだ。走行中は適度にオットマンを持ち上げて、ふくらはぎを支えても、踵は必ず床に着けておく。背もたれも過度に倒さず、頭部の荷重を腰で支えられる角度に留めておく。安全面では「座る姿勢」を守ることが大切だ。

余談だが、走行中に同乗者が足を組む行為も危険。床に着けているのが片足だけでは、衝突時に踏ん張れず、ケガをする原因になる。これらの注意点を守って使えば、オットマンは快適性を高める装備になり得る。

トヨタノアなど、オットマン装着時のオプション価格

アルファードのエグゼクティブパワーシート

それならオットマンの価格はどの程度か。単品のオプション設定はほとんどないが、セットオプション価格などから算出することは可能だ。

軽自動車のスペーシアギアなどにもオットマンの設定がある

例えばノアの快適便利パッケージ(ハイタイプ)を見ると、ガソリンエンジンを搭載する4WDのセットオプション価格は12万9800円で、2WDになると2列目シートのオットマンと角度調節式アームレストが加わって15万1800円になる。

2列目のオットマンと角度調節式アームレストの合計価格は、両者の差額に相当する2万2000円だ。この価格換算額はかなり安価な部類だが、仮にメーカーオプションがあっても4万円前後だろう。オットマンは使いこなせるユーザーには買い得な装備だ。

文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/トヨタ、スズキ