こうして組織は壊されていく…定年後も「自分は偉いままだ」と勘違いする「困った人たち」の正体

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元伊藤忠商事会長、そして民間人初の中国大使を務めた丹羽宇一郎さん。仕事に生涯を捧げてきた名経営者も85歳を迎え、人生の佳境に差し掛かった。『老いた今だから』では、歳を重ねた今だからこそ見えてきた日々の楽しみ方が書かれている。

※本記事は丹羽宇一郎『老いた今だから』から抜粋・編集したものです。

現役時代の肩書きから抜け出せない

驚くことに、ある会社の副社長だった人が定年退職後に派遣会社を通じて次の仕事を探すとき、「前と同じような仕事はないか」と申し入れたと耳にしました。

そんなもの、あるわけないだろう!まったくバカげたことだと思いましたが、似たような話がまだあるといいます。一部上場企業の元部長がハローワークで次の仕事を探すとき、「前の会社ではどういう仕事をしていましたか?」と職員に訊かれて、「部長をやっていました」と答えたという。こういう人にとって大事なのは、仕事の中身よりも自分の肩書なのですね。今までそういう働き方をしていたとしたら、笑えない話です。

私は前の会社でこんなに偉かった、俺は一流企業の部長だったんだぞ、といった考え方では、定年後に新しい仕事に就くのは非常に難しい。過去の自分にとらわれていると、求人市場の厳しい現実に直面したとき、「こんな仕事をしたら人がどう思うだろう」と世間体を気にして消極的になり、次の一歩がなかなか踏み出せません。

どんな立場にいた人でも、現実をベースにしてものごとを考えなくてはいけません。

自分の仕事にプライドをもつのは悪いことではありませんが、過去のプライドをいつまでも引きずっていると、新しい環境にうまく溶け込めないでしょう。

継続雇用にしろ、別の会社に再就職するにしろ、定年後の仕事では同僚や上司が自分より年下であることが多い。仕事人としての長いキャリアやプライドをもっているがゆえに、我が子と同年代の同僚にあれこれ指示されるのは面白くない、年下の上司から注意されるとムッとする、という人もいるでしょう。当然ながら、働く意欲が萎えてしまう人や、周囲と揉めて職場に居づらくなってしまう人も少なくないですね。

年下の「先輩」との付き合い方

私が会社にいたとき、周りには年上の部下が何人かいましたが、各人の立場できちっと仕事をし、年下の上司である私に対して、非常に丁寧に接してくれました。

私のほうでも、相手が年上だからと遠慮することはなく、おかしいと思うことがあれば、年下の部下に対するのと同じように指摘してきました。

もちろん、言い方には気をつけていましたし、人前で叱るようなことはしませんでしたが、たとえ相手に嫌がられても、自分の考えはしっかり言うものです。本当は仕事のやり方を注意しなければいけないのに、相手が年上だから「まあまあですね」などと言ってお茶を濁すのはよくありません。もし自分が逆の立場なら、そういうことはちゃんと言ってほしいと思います。

仕事というのは、年長者と若い人とが努力して協力し合い、影響し合うことで進んでいきます。お互いに、「若造のくせに生意気だ」「年寄りがエラそうにしやがって」などと思っていたら、仕事になりません。

年下の同僚や上司に囲まれるようになったら、ぜひ、自分から歩み寄る努力をしてください。年長のあなたがそういう姿勢を示せば、相手も自ずとその努力をするようになると思います。

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