「納豆からチョコまで、いろいろ漬けました」井上咲楽、ぬか漬けの魅力に魅せられて。

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井上家では、食卓に母が漬けた「ぬか漬け」が並ぶことが多く、ほんの少しだけ酸味がきいた母のぬか漬けが大好きだった。

七味をかけて食べるのがお気に入りで、白米がよくすすむ。

ぬか床のかめから、よく漬かったくたくたの野菜を出す母を台所で見て「私にもやらせて!」とぬか床仕事のお手伝いをさせてもらったこともあった。

黄土色のぬか床から宝探しのように野菜を探し、グッと上に引き抜くとプーンとぬかの香りを漂わせたぬか漬けが姿を現す。

宝探しを終えると、上から下へしっかりとぬか床をかき混ぜて、新しく塩を揉み込んだ野菜をぬか床に入れて翌日の食卓に備える。

今は塩味しかしないシャキシャキの野菜たちもここに入れておくだけで明日にはくたくたになって、おいしくなっていることだろう。すごい。

最後にぬかの表面をなでて、均一に平らにする。水分を含んでとてもふかふかなぬか床が気持ちいい。

ぬか床の魅力に魅せられて……納豆、チーズ、チョコレートまで


そんなわけで幼いころからぬか床には触れていたのだが、18歳のころ、上京するタイミングで母にぬか床をわけてもらった。理由はもちろん、ぬか漬けが大好きだったからだ。


一人暮らしの家でも早さっそく、きゅうり、にんじん、なす、大根……などなど、実家で漬けていた野菜と変わらぬラインナップと同じやり方で、いろいろ漬けた。

ところが、不思議なことに母と同じ味にはならなかった。
まずいのではなく、ほんの少し味が違うのだ。しょっぱいとかそういうことではなく、なんだか味が違う。混ぜる人によってこんなにも味が変わるのか……と菌の力に驚いた。

そこからよりいっそう興味を持って、オーソドックスな食材以外に、ゆで卵、チーズ、納豆、鶏肉など、野菜以外の変化球もいろいろ試してみた。

ゆで卵は全体的に身が締まっておいしくなった。納豆は不織布の茶葉を入れる袋に入れて、別の容器にぬか床を移して納豆専用のぬか床を作ってそこで漬けた。

たれがいらないくらい味がしみ込んで、発酵×発酵でとても複雑な味になっておいしかった。

上記のものはおいしく漬かったが、それだけでは飽き足らず、チョコレート、せんべい、果物、さらには冷凍食品のシュウマイなども漬けてみたが、どれも失敗に終わった。

特にシュウマイは、グリーンピースのみが残って他の部分は跡形もなく消えてしまった……。あれはなんだったのだろう。とにかく、ぬか床に入れればなんでもおいしくなるはずだ! くらいの気持ちで気軽にチャレンジできて研究をしているようで楽しかった。

ぬか漬けを始めたい人へ。井上咲楽流・ぬか床とのつきあい方


ぬか漬けを始めたい人の悩みとして、毎日混ぜるのが大変だという話をよく聞く。たしかに毎日せっせと混ぜるのは少々めんどうだ。

私は「ぬか床混ぜなきゃ。めんどくさいなー」という気持ちで混ぜたらぬか床がダメになると思っているので、どんなに疲れていてもぬか床を混ぜるときは「おいしくな〜れ!」という気持ちで混ぜるようにしている。


めんどくさいと思わないためにも、毎日顔を変えるぬか床の健康をチェックしてあげなきゃ、野菜を入れてぬか床に栄養を与えてあげよう、など、私がいないとダメになっちゃうかわいい子! くらいの気持ちで面倒をみてあげてほしい。

とはいえ、泊まりロケで家を空けることがあれば冷蔵庫に入れて発酵の速度をゆるやかにしてあげれば、数日くらい混ぜなくても大丈夫だ。長期で混ぜられないなら、冷凍して完全にぬか床の活動をストップさせてもいい。

どうですか? ちょっと肩の荷が降りたでしょう?

夏の間だけお世話をして、来年はまた新しいぬか床を迎えるもよし。
ダメになってもあなたのせいだと思わないで、ぬかがヘソを曲げたと思ってまたチャレンジしてみてほしい。

今は、船宿の女将にわけてもらったぬか床と暮らしています



私も少し前にぬか床をダメにしてしまってから、少しぬか床をお休みしていたが、先日、ロケで泊まらせてもらった船宿で出てきたぬか漬けがおいしすぎて、思わず女将さんにぬか床を見せてもらえないかお願いした。

女将さんは快く見せてくれて、

「欲しいって顔してるね!よかったら持っていって」

と1kgほどわけてくれた。
図星でお恥ずかしいが本当に欲しかったのでとてもうれしかった。


そんなわけで最近は「船宿女将作のぬか床ライフ」を楽しんでいる。

今日はなすを漬けたので、それを楽しみに明日の滋賀でのロケを頑張りたい。


PROFILE


井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年、栃木県生まれ。2015年「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」を経て芸能界入り。「おはスタ」「新婚さんいらっしゃい!」など、バラエティ番組で見せる明るいキャラクターで人気を博す。NHK大河ドラマ「光る君へ」に出演。2024年5月、『井上咲楽のおまもりごはん』を出版。「発酵食品ソムリエ」資格、「食品衛生責任者」の資格も持つ。