時期の貝ダシブームから、鶏ダシ、さらにはそれらを組み合わせたWスープやトリプルスープなど、多様な広がりを見せる塩ラーメン。スープをスッと飲めば、思わず「旨い……」と口をつく。そんなじんわり染み入る至高の一杯をお届けします…

時期の貝ダシブームから、鶏ダシ、さらにはそれらを組み合わせたWスープやトリプルスープなど、多様な広がりを見せる塩ラーメン。スープをスッと飲めば、思わず「旨い……」と口をつく。そんなじんわり染み入る至高の一杯をお届けします。

貝スープ

雑色「宍道湖しじみ中華蕎麦 琥珀」

「宍道湖しじみ中華蕎麦〈塩〉」鶏のダシも合わせ、シジミの強烈な個性を上品にまとめている。また、塩ダレにはホタテの貝柱や鯛の煮干しも使用
「吊るし焼きバラ丼」厨房にある専用釜で焼き上げた豚バラ肉は脂が程よく落ち、燻製のような深い香り

澄んだスープに浮かぶピンクのレアチャーシューに、紫玉ネギと芽ネギが目にも鮮やか。キュートなビジュアルながらも、スープをひと口飲めばその印象はガラリと変わり、男性的なまでにパワフルな旨み成分と香りが舌と鼻腔に押し寄せるのだ。

その正体は宍道湖から届く上質なヤマトシジミ。スープはもちろん、タレにも香味油にも大量に使って風味を分厚く重ねている。麺はストレートの細打ちで、すする度にスープを絡めながら口へと運ぶ。丼が空になっても旨さの余韻が長く続き、また何度でも食べたくなる。

方南町「クラム&ボニート 貝節麺raik」

「特製貝節潮そば」低温調理した鶏ムネ肉、豚肩ロースのレアチャーシュー、そして煮豚の炙りと、味わいの異なる3種のチャーシューと味玉などをトッピング

店名の「クラム&ボニート」の通り、第一のスープはアサリ、ホンビノス貝などの貝ダシ。そして第二のスープがカツオ節を主体にした魚介ダシ。両者が出合うことで、お互いを支え複雑な旨みと圧倒的なコクを生み出した。全粒粉入りの細麺をすするうちに、スープに浮かべられた貝のペーストオイルが徐々に溶け出して、最後まで加速度的に風味が増していくのも面白い。

「きまぐれ丼」日替わりの鮮魚の刺身を醤油ベースのタレに漬け込んだ丼。

また食券機の「きまぐれ丼」のボタンをポチッとすると、ラーメン店としては珍しく鮮魚の漬け丼がやってくる。これまた貝節スープにぴったりの相方なのだ。

豚×昆布スープ

荻窪「函館塩ラーメン 五稜郭」

「ラーメン」麩が入るのも函館ラーメンの特徴。スープを吸いふわふわになったところをいただく。チャーシューは昔ながらの豚ロースで、固すぎず柔らかすぎない完璧な塩梅
「いかめし」函館近海のスルメイカと、猿払産干しホタテの貝柱がたっぷり。ほんのりとした甘みが人気

関東では珍しい「函館塩ラーメン」の専門店。北海道産小麦100%の『出口製麺』特注ストレート麺を都内で唯一味わえる。透き通るスープが持つふくよかな旨みは、沸騰させないよう弱火で煮出した豚ガラと少量の鶏、道南産真昆布のダシから。

猿さるふつ払産干しホタテなどの煮汁を加えた特製塩ダレと合わせ、繊細ながらも奥行きのある味を実現させている。チャーシューの脂は少なめ、香味油も加えないのが函館流。毎日でも食べ飽きない一杯だ。

煮干し×鶏スープ

王子「らーめん えんや」

屋号はオーナーの父親が営んでいたラーメン屋を引き継いだもの。そのレシピを踏襲しつつも味を磨き上げ、オリジナルの一杯へと昇華させた。魚と鶏の風味がふくよかに香る立体的なスープの秘密は、水出し煮干しとはかた地鶏のダシ。細切りストレート麺がこれだけ旨みの強いスープにも負けないのは、自家製麺時に全卵を練りこみ、風味とコシを出しているから。山くらげといった具やサブメニューにも個性が光り、店の印象をクッキリと残す。

【番外編】麺

新宿「楢製麺」

「特製塩」国産の天然塩を数種ブレンドし、かすかに甘みを感じる無添加・無化調のスープ。出過ぎない味で、トッピングの栃木県産白美人ねぎや3種のチャーシューの旨みをグンと引き立てる

真っ白くコシのある細麺は、無かん水・無塩でこしらえた“無添加自家製麺”。南新宿の『うどん 慎』店主・楢原さんが、こだわりの自家製うどん麺をより幅広い層に味わってもらいたいと出した店だ。国産タケノコがドンと入った淡いスープは、長時間煮込んだ鶏と水出しの羅臼昆布を合わせた上品な味。なめらかな麺にダシがよく含まれ、モチモチとした食感になる。ラーメン界に颯爽と登場したうどん界からの新しい刺客、ぜひお試しを!

『おとなの週末』2020年2月号より(本内容は発売当時のものです)

…つづく「東京のスープがうまい「絶品の塩ラーメン」ベスト6店…”あっさり”なのに《コク濃厚》、銀座・赤羽・川口・江古田・仙川・東久留米で「覆面調査隊」が発見」でも、塩ラーメン絶品の名店を紹介します。