そんなうまい話があるのか…都心アクセス可能「住み続けると家がもらえちゃう」町の「驚きの全容」
25年間住み続ければ、土地・建物が無償で譲渡されて自分のものになる――。そんな夢のような賃貸戸建住宅がある。それも、関東圏の茨城県でも最も東京に近いエリアにある境町だから、通勤も不可能ではない。さて、境町とはどんなところなのか。
王子駅まで60分
人口の減少に悩んでいる自治体のなかには、土地や建物を無償で譲渡するといった移住促進策を実施しているところが少なくないが、それはたいてい北海道、九州などの過疎地で、大都市圏に住み慣れた人たちにとってはあまり馴染みのない場所が多い。
たとえば、北海道の浜頓別町では、「ふるさと定住促進宅地制度」として１区画100坪（331平方m）の土地を用意、3年間無償で貸し付け、その間に住宅を建設して居住すれば、貸し付けた土地を無償で譲渡することにしている。100坪の土地という、三大都市圏ではほとんど考えられない、ゆったりとした敷地が、住宅を建てて住めばタダで手に入る。
これは大きな魅力だが、仕事の大半をリモートで完結できる人以外は、今までの仕事を続けるのは難しいだろう。
そんな中、注目を集めているのが、茨城県・境町のケースだ。
25年間住み続ければ土地建物を無償譲渡する賃貸戸建住宅を供給してくれるという。境町は、地図でも分かるように茨城県のなかでも最も東京に近いエリアで、高速バスを利用すれば、王子駅まで最短60分、東京駅は最短95分だから、通勤も決して不可能ではない。そんな立地だけに、これは気になるところではないだろうか。
そんなうまい話があるのか
境町では、これまで移住促進住宅として賃貸マンション「アイレットハウス」108戸、賃貸戸建住宅の「オハナタウン」17棟を供給、すべて満室になっている。高い人気を集めたこともあり、戸建賃貸住宅の第2弾「マハロタウンツー」22棟を追加したが、全国から230件の申込みがあったため、急ぎ５棟を追加したほどだ。
移住希望者の内訳をみると、茨城県内は10人で、県外が101人、さらに国外からも5人と、広範囲から移住希望者が申し込んでいる。県外では埼玉県、神奈川県、千葉県などのほか沖縄県からもあった。
そしてこのほど、賃貸戸建住宅の「マハロタウンツー」21棟を整備することになった。最大のセールスポイントは、「25年間住み続ければ土地・建物を無償譲渡」するというもの。一定の家賃を払って25年間住めば、その土地・建物がタダで自分のものになるわけだ。東京で多額の住宅を組んで戸建住宅を買って、ローンの返済を続けるのに比べると、格段に少ない家賃ですみ、かつ25年後には自分のものになるというのだから、特に、若い世代にとっては夢のような話ではないだろうか。
そんなうまい話があるのか、よほど安普請の住まいではないかと思うかも知れないが、そうともいえない。
たしかに、大手住宅メーカーや大手不動産会社の建売住宅などに比べると、さすがにやや見劣りするが、東京周辺の郊外型のリーズナブルな建売住宅と比べてもさほどの遜色はない作りだ。
ちなみに、建物は木造の2階建て、敷地面積は約50坪（約165�屐砲如�延床面積は約30坪（約100�屐法�間取りは3LDKとなっている。
公営の賃貸住宅だと、一般的には年収の低い人たちを対象にしているが、この「マハロタウンツー」は、一定の年収のある人たちに境町に移住してもらうことを念頭においているので、入居者の所得合算が月額15万8000円以上48万7000円以下となっていて、町外から転入する世帯を優先することになっている。
また、18歳未満の子どもがいる子育て世帯、妊娠中の人がいる世帯、婚姻日からおおむね5年以内か婚姻予定がある世帯を優先し、若い世代に移り住んでもらうことを念頭においている。
ほかにも、次のような条件が挙げられている。
・境町に定住の意思がある人
・市町村税の滞納がない人
・町内会に加入し地域交流できる人
・入居者または同居者が暴力団員でない人
家賃の総額は1900万円
申込みは2024年10月16日までで、必要書類を沿えて郵送、または町役場に持参することになっている。詳しくは、境町ホームページをご覧いただきたい。
気になるのは家賃だろう。月額家賃は8万4000円と激安というわけではないが、子育て世帯など一定の条件を満たす人は6万4000円に減額される制度もある。
また、公的な賃貸住宅なので、礼金・仲介手数料・更新料などはかからず、固定資産税もかからない。かつ、勤務先に住宅手当（家賃補助）がある場合には、その制度も利用できるメリットもある。
家賃が6万4000円なら25年間に支払う賃料総額は約1900万円。果たしてこれをどう考えるか。
東京周辺で建売住宅を購入するとなれば、郊外部でも4000万円、5000万円は覚悟しなければならない。仮に4000万円の住宅ローンを35年元利均等・ボーナス返済なしで組むとすれば、毎月の返済額は金利1％で11万2914円、2％だと13万2505円だから、それに比べると家賃6万4000円なら半分程度の負担ですむ計算。しかも、ローンなら35年返済なのが、このマハロタウンツーなら25年後には無償譲渡されて土地・建物が自分のものになるのだから、かなり魅力的だ。
住み続けたい街ランキングにも
ところで、マハロタウンツーがある境町とは、どんなところなのだろうか。
町のホームページをみると、境町移住・定住促進のための「さかいじゅうナビ」が開設されている。そこには、「茨城県境町は子育て支援日本一を目指しています！英語移住しませんか？」とうたわれている。
日本一かどうかはともかく、子育て世帯に魅力的なのは間違いない。
具体的には子育て支援として20歳の学生まで医療費無料、第2子以降保育料無料、保育施設・小中学校の給食費無料（所得制限なし）、また出産・育児についてもさまざまなサポートが実施されていて、第3子以降の出産については最大50万円の補助金が出るなどがある。
英語教育に力を入れており、小学6年生の英検5級保有率75.5％で、中学3年生の英検3級保有率は52.2％となっている。小中学校に複数のALT（外国語指導助手）がいて、姉妹都市のハワイ・ホノルル市との無料での交流を実施している。
また、境町は2024年９月1日現在の人口が2万3888人で、世帯数は9354世帯。各種の移住、定住促進策の効果もあって、人口減少に歯止めがかかり、このところは移住などによる社会増が目立っていて、茨城県ではつくば市などに次いで社会増のランキングが6番目で、町としては唯一、トップ10に入っている。
実際に住んでみると、住み心地がよいようで、大東建託の「住み続けたい街ランキング2024（茨城県版）では、守谷市、つくば市などに続いて10位にランクされている。
このところは、コロナ禍が収束したこともあり、週５日の出社を求める企業が増えつつあるが、それでも、テレワーク中心の仕事についている人も少なくないのではないだろうか。
少ない家賃負担で将来的には土地・建物が自分たちのものになる「マハロタウンツー」、特に若い世代にとっては、ぜひとも注目しておきたい賃貸住宅ではないだろうか。
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