Image: NASA/JPL-Caltech

NASAの火星探査機インサイト。2022年末に運用は終了したものの、インサイトが収集したデータの解析・研究は現在も続いています。なかでも火星の地震波速度に関するデータは非常に興味深く、火星に水が存在する可能性を示唆しています。

火星にも地震が

火星の地震波速度の研究を行なっているのは、カリフォルニア大学サンディエゴ校のスクリップス海洋研究所。チームを率いるのは地質学者のVashan Wright氏。インサイトのデータは火星の表面に水の存在を示唆する。それが研究の結論です。

どうやって水を探す?

火星で水を探すにはどうするか。研究チームは地面を掘り起こしてその化学成分を調査…したわけではありません。目を向けたのは火星の地震。揺れに関する地震波速度データです。

地震波速度とは、地面の中で揺れがどれだけ速く伝わるか。このスピードから、チームは火星内部にある成分を推察。データの説明として最も適切なのが、火星の地殻には水が存在するという説。

インサイトが収集したデータの断面図
©James Tuttle Keane and Aaron Rodriquez

水がある説、どんどん濃厚に

火星には水がある・あった説は、はるか昔から囁かれています。

何十年にも渡る調査から、火星の南極・北極は氷で覆われており、地下には巨大な溜め池があるといわれています。

火星の大気は地球よりも薄いため、液体から気体に変わるのも早い。もし液体として留まっておけるとしたら、それは水の塩分濃度が濃く沸点が低いはず。火星表面の黒い跡はかつて水が流れてできたものだという研究もあります。つい最近も、火星に水と生命が存在する可能性を示唆する岩が見つかったばかり。

今回のWright氏チームの結論が正しければ、火星に生命の根幹である水が存在する説をさらに後押しするものになります。

Wright氏は、プレスリリースにてこう語っています。

「火星における水のサイクルを理解するのは、火星の気候、表層、内部の変化を理解する上で必要不可欠です。その手始めとして最も大きいのは、水はどこにあるのか、どれほどあるのかを探ることです」

研究論文はProceedings of the National Academy of Sciencesにて公開されています。

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