リビングは何となく家族で集ってTVを見る場所、ダイニングは食事する場所というように何となく使っている人が少なくないかと思います。

しかし、長年家づくりをしてきて、家の使い方を探求してきた立場からするとリビングとダイニングとも、本質的な機能を理解して使いこなせば、家族間の関係性が劇的に改善されることを発見しました。

◆リビングとダイニングには「正しい使い方」が

リビングという場所は、特に子供にとって重要な場所です。なぜなら、親位の年齢差の上司、兄弟ぐらいの年齢差の先輩と後輩と見立てると、まさにリビングは「社会の象徴のような場」だからです。

リビングでどれだけ家族と会話を重ねられたかという要素は、社会に出た時に大きく影響しやすいのです。例えばTVを見るとします。その時に意識したいのは、番組の内容に関して、お互いに考えや意見を言い合うことができているかです。リビングは家族間で意見を交わし、ディベート力を身に付けさせるには最適な場所なのです。

次に、ダイニングはどうでしょうか? 実は、ダイニングは「食事をしながら心をオープンにしてお互いの悩みなどを聞きあい関係性を深める場所」。

大人になると男性の場合、友人が悩んでいたら「一杯飲みに行こうか!」、女性の場合は「ちょっとお茶しない」と言いませんか? これは、人は食事を通じて心を通わすという本能によるもの。

ダイニングは単に食事をする場所ではありません。TVを垂れ流し、食べ物をのどに通すだけで、作ってくれた人に感謝をしない食卓は、非常に残念な使い方と言えるでしょう。食事をとる時は、「今日はどうだった?」といった何気ない話をしながら、心を通わせてください。

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間取りが悪ければ、家族の関係性も悪化してしまいます。さらにリビングイン階段の事例のように間取りだけに頼るのも正解とは言えません。根本的な関係性の改善をリビングやダイニングで行わない限り、うまく機能することはないでしょう。

最終的に重要なのは、部屋の本質的な機能を把握しながら、家族団らんを意識することです。円満のためにも、ハード面とソフト面をしっかり使いこなしたいものですね。

<TEXT/八納啓創>

【八納啓創】
1970年、神戸市生まれ。一級建築士、株式会社G proportion アーキテクツ代表取締役。「地球と人にやさしい建築を世界に」をテーマに、デザイン性、機能性、省エネ性や空間が人に与える心理的影響をまとめた空間心理学を組み込みながら設計活動を行っている。これまで120件の家や幼保園、福祉施設などの設計に携わってきた。クライアントには、上場会社の経営者やベストセラー作家をはじめ「住む人が幸せになる家」のコンセプトに共感する人が集い、全国で家づくりを展開中