7月4日の街頭演説の様子(写真・保坂駱駝)

 終盤戦を迎えた東京都知事選で、前参議院議員の蓮舫氏を猛追し、小池百合子氏の3選を揺るがしかねない存在になっているのが、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏だ。

 そんななか、7月3日、広島高裁は、同市の山根温子市議が、市と石丸氏に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、石丸氏の名誉毀損を認め、市に33万円の賠償を命じた1審広島地裁の判決を支持する判決を出した。

 ことの発端は2020年9月。石丸氏が、市議会で居眠りをしている市議がいたと、自身のXに投稿した。この投稿をめぐり、市議らと意見交換会を開いたところ、次に石丸氏は山根氏ら複数の市議から「敵に回すなら政策に反対する」などと「どう喝を受けた」と投稿したのだった。一審判決では、石丸氏の言動は真実とは認められないとし、名誉棄損を認定。市側と、市長としての石丸氏個人の責任を追う必要がないとの判決を不服とした山根氏の双方が控訴していたが、二審でも石丸氏の名誉毀損が認められたのだった。なお石丸氏個人の責任は、二審でも棄却された。

 都知事選での、石丸氏の勢いに水を差す形になった今回の判決。本人は同日、報道陣の取材に対し「上告する手続きを進めている」と短く話した。

 一夜明けた4日の、東京都板橋区。35度に迫る猛暑にもかかわらず、東武東上線ときわ台駅前のロータリーには、石丸氏をひと目見たいという人がごった返しており、その数はすでに200人を超えていた。

 石丸氏が会場に現れると、一斉に拍手が巻き起こる。街宣車に上って手を振るだけで「キャー!」と黄色い声援が飛ぶほどだ。現場で取材する報道陣も「まるで、コンサートに来たファンのよう」と驚いていた。

 前日の判決は、選挙応援には影響していないのだろうか。応援に訪れていた40代の女性はこう話す。

「(今回の判決は)まったく関係ないと思います。選挙戦の影響もないですね。今日は石丸さんを見たくて来ました。ここはすごく盛り上がっているでしょう」

 また、別の50代男性もこう話す。

「石丸候補のファンになった人が来ています。子どもたちもいるから驚きますね。裁判のことはニュースで知りましたが、まあ関係ないでしょう。僕は応援しますよ」

 敗訴の判決は、ここでは逆風にはなっていない様子だ。では、本人にとってはどうなのか。演説を終えた石丸氏に、判決についての意見を聞こうとすると、それまでの笑顔が消え、ムッとした表情に一変した。

「そのことは、もう話しましたよね。後でいいですか」

 ひと言、そう話すと、応援に来た人の列に近寄りハイタッチで応え始めた。あらためて話を聞こうとするが、そのまま、車で次の演説会場に向かってしまった。

 石丸氏はこの日、最高裁に上告受理を申し立てた。はたして最高裁はどんな判断を下すのか。そして、都知事選の行方は――。