元プロ野球選手の新垣渚氏(新垣渚氏提供)

写真拡大 (全3枚)

 プロ野球選手として2003年に福岡ソフトバンクホークス(入団当時ダイエー)、14年から東京ヤクルトスワローズで活躍した名投手の新垣渚氏。沖縄県出身で、沖縄水産高校卒業後、九州共立大学に進学し、高校時代の97年選抜高校・夏の甲子園では松坂大輔氏とともに注目を集めた。引退後は、福岡ソフトバンクホークスジュニアチーム監督や「ホークスベースボールスクール」のコーチとキャリアを重ね、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動する。

【もっと読む】経済アナリストの森永康平氏「円安を止めるために『金利を上げるべき』と主張する人がいるのは問題」

 お金の管理にも関心が高かったというが、現役時代、そして引退後のお金事情と貯め方について、登録者数22万人超の投資YouTubeチャンネル「Trade Labo」主宰の児玉一希氏と語り合った。(敬称略)

  ◇  ◇  ◇

児玉 新垣さんは引退されて8年ですが、現役は何年間やられたんですか。

新垣 14年間です。

児玉 結果で判断されるプロ野球の世界で、どうしても収入のアップダウンがあると思いますが、最高年俸はどのぐらいですか。

新垣 最高額が1億5000万円弱で、引退した36歳の時には2000万円ぐらいです。僕らはプロ野球選手の年金制度があって、15年間で最高額もらえるはずだったのですが、その年金が途中で潰れてしまったんです。

児玉 引退後が不安になりますよね。現役の間に、もしもの時のための備えや運用は考えていましたか。

新垣 独身の時はなんとか稼げるって思っていました。でも稼いだ分を投資に回していこうといった気持ちの余裕はなかった。

児玉 本業に集中していたということですね。投資信託、株などリスク資産に投資を始められたのはいつぐらいだったのでしょう。

新垣 2009年頃。30歳で結婚し、僕の妻が投資や経済を勉強していたことから、一緒に相談して少しずつ始めて、本格的になったのは引退後です。どうしても収入が減るので、現役の時の貯金を投資して賄っていければと考えました。

ドル預金で為替差益を狙ったが円安を待てずに売却

児玉 どんなものに投資をしていましたか。

新垣 ドルを長く持っていました。ただ、120〜130円台の時に手放してしまって……。

児玉 2012年に80円までドルが下がって、以降はまた戻してきましたよね。ドル円がいくらの時に持っていたんですか。

新垣 100円台前半の時です。最近160円近くまで大きく上がったから大失敗で。「うわー! ドルがこんなに上がるの?」って妻と2人でため息ついていました。

児玉 なるほど。もしもその時にどんな情報があったら、あるいは何を勉強していたら売らずに持ち続ける判断ができたと思いますか。

新垣 為替レートを気にして見てばかりいたから不安になったのが失敗でした。長期保有すると決めたなら「もうレートを見なくてもいいや」ぐらいの精神が大事なのでは?

児玉 気にしすぎないのが重要という事ですね。例えば投手の場合、緊張する場面でコーナー四隅を狙って投げるとなれば、なかなか難しいと思いますが、キャッチャーが「ミットを狙え、真ん中でいいから来い! とにかく強い球を投げろ」とくればパワーが出たりするものですよね。そんなアバウトさが大事なのかもしれません。

新垣 四隅ギリギリに投げた後に大惨事になることがありますからね。それよりも少しの失敗は大丈夫だとド真ん中に投げた方がいいっていうことと同じですね。

児玉 投資も真剣勝負になるほど、技術は高めつつも気持ちの面での気楽さが大事ということです。

新垣 話は変わりますが、投資は分散したリスクヘッジした方がいいですか?

児玉 そうですね。やっぱり異なる性質の資産を分散させておくという一つの原則があります。

海外リートの投資信託が好調…

新垣 いま割とうまくいっているのがリートです。僕の給料がほぼ生活費になって、リートの配当金を子どもの習い事やその他に充てています。今のところ基準価格があまり動かないので、毎月配当金が入ってくるところがありがたいです。

児玉 どんなものを選んでいますか?

新垣 USリートの投資信託です。配当利回りが日本なら3〜5%なんですけど、USリートだと10数%あるので、長期で持ち続けたら基準価格が下がってもそれほど影響がないかなと思います。

児玉 外貨資産ですし利回りがいいですから、6〜7年あれば配当だけで回収できそうですね。

新垣 はい。最近はネット証券も開設したので、アドバイスいただきながらいろいろと自分でやっていこうと思っています。

児玉 最近の若い選手は、現役の間から割と投資に対する意識が高まっている気がしますがいかがでしょうか?

新垣 でも、なかなか行動には移せていないと思います。時間もないですし、専門的な信用できる人がついていないとお金の運用は厳しいと考えます。

児玉 外国の選手と日本の選手とでは投資に対する考え方が違うという風に言われていますが、海外でプレーしている選手と日本国内の選手とで、投資に対する向き合い方の違いがあるものですか?

新垣 大谷(翔平)くんは年俸100億円ですからまったく額が違います。それにメジャーリーグはプロ野級年金制度があるし、安くても1000万円以上もらえるなんて噂も聞いていますから、そうなるとやはりアメリカにいきたいっていう気持ちはわかります。

児玉 その他、新垣さんは投資に関して将来的にはどんなプランがありますか?

新垣 もっと資産を増やしていきたいので、ビットコインを持ちたいと思っていますし、不動産投資も考えています。ゆくゆくコーチになる可能性もあるので、将来的には投資の利益を得ながら頑張っていきたいです。

児玉 最後に投資に関して、メンタルな面で何かアドバイスがありますか?

新垣 野球でいえば、失敗しながら地位を築いてきたんですよね。失敗しても将来のビジョンをしっかり持っていれば成功につなげられるんだと思います。99回の失敗があっても、最後のひとつが成功すれば成功だって思いますからね。投資は難しいと思いますが、失敗して不安な時こそ勉強してきたことを信用して心折れずに頑張ってほしいです。僕もまだまだ初心者ですけど、一つでも幸せになれるように勉強していきたいなと思います。

 ※「Trade Labo」でも動画で詳しく解説しています。

                 ☆☆☆☆☆☆

 児玉氏は経済アナリストの森永康平氏にも、日米の金利差、金融政策による為替や市場動向、そして日本経済の見通しについて聞いています。関連記事【もっと読む】で詳しく解説しています。

(児玉一希/株式会社RES 代表取締役)