遺人形は複数枚の写真をもとに作られる
 遺影をもとに3Dプリンターで故人の姿を立体的に表す「遺人形(遺フィギュア)」。大切な人を亡くした人々が、死後も故人の存在をを身近に感じられるよう、在りし日の姿を精巧に再現する遺人形を迎えているのだそうです。

 この遺人形はなぜ誕生し、遺された人々のどんな思いが込められているのでしょうか。

 今回は同製品を製造するロイスエンタテインメントの廣瀬勇一社長、そして山岡未弥さん、三島実那子さんに、サービスを提供する立場からお話を聞きました。

◆故人の存在をより身近に感じられる「遺人形」

──遺人形とはどのようなものですか?

山岡:遺人形は、最新の3D技術とフルカラー3Dプリンターを使い、ご依頼者様からご提供の遺影をもとに作られます。材質はフルカラー樹脂(プラスチック)で、サイズは高さ20〜30cmまで製作可能です。

製造過程としては、デザイナーがお写真を元に作った3Dデータをお客様が確認し、承認をいただいたデータで3Dプリンターを使ってフィギュアを成形・着色、納品といった流れです。3Dデータをご確認いただく段階で修正を依頼いただくことも可能で、修正回数によって料金や完成期間も異なりますが、20センチのサイズであれば17万8000円(税抜)で、2か月程度かかる場合が多いです。

──利用者は主にどんな方なのでしょうか?

山岡:お葬式を控えてご遺影を準備される際に、周囲やインターネットなどの情報を通じてこちらのサービスを知ったというご遺族が多いです。写真だけだと寂しく思う方々が、故人の存在をより身近に感じられる遺人形に意義を見出されるようです。

ほかにも、四十九日などの節目を迎えられた時期に、改めて「会いたい」という思いを募らせて遺人形を作り、ご親族に披露されるケースもあります。

◆遺族の依頼がきっかけ

──なかには「終活」の一環として、ご自身が注文するケースもあるのでしょうか?

山岡:「家族に遺したい」という目的でご注文される方がたまにいらっしゃいますね。タキシードやドレスなどをお召しになった姿を遺そうとする方は意外に少なく、普段着のままをご希望される場合が多いです。

──そもそもこのサービスは、どのようにして始まったのでしょうか。

山岡:弊社は2013年に創業した3Dデザイン会社で、キャラクターフィギュアやプロダクト模型を、3Dソフトでデザインして3Dデータ化し、造形しています。

その中で人物フィギュアの製作も行っており、ご本人の身体をスキャンして取ったデータを元に出力し、立体化するサービスも提供しているのですが、そこから派生するかたちで「亡くなった人のフィギュア製作を依頼したい」というお客様の声をいただいて……というのがそもそもの始まりでした。

◆故人を立体化する難しさに「最初はお断りしていた」

──ではもともとは御社発信のサービスではなく、お客さんの要望に応えて作ったという経緯だったのですね。

山岡:実はそうなんです。

廣瀬社長:正直に言うと、最初はご依頼をいただいてもお断りしていて……。というのも、故人を立体化するにあたり、技術的なハードルがさまざまあるためです。まず、ご存命の方のフィギュアを作るにはご本人の身体をスキャンしてデータを取るのが基本的な製作過程ですが、故人の場合それができないので、お写真を元に作ることになります。

ご遺族から借りたお写真を元に作ることもできますが、撮られた時期や表情もバラバラだったりするので、正確なデータを取るのが難しいだろうということは、サービスを始める前から懸念していたので、気軽には始められませんでした。

しかし、「どうしてもお願いしたい」と熱量の高いご要望に押されるかたちで始めると、多くの方が喜んでくださったので、続けて今に至っています。こちらも可能な限り故人の在りし日に近いかたちで仕上げたいので、「できるだけさまざまな角度から撮影した複数枚の写真をご用意いただく」「正面のお顔が映った写真は必須」「手振れやピンボケが無いお写真で」などの注意事項を事前にご案内したり、3Dデータの段階でご確認いただくようにしています。