「何回言ったらわかんだ。てめーはニワトリか!」借金を返さない人間を怒鳴ればいいだけと思ったら大間違い【意外と苦しい“サラ金社員のお仕事実態”】〉から続く

 お金を借りたい人が、「スマホ料金」を遅延してはいけない理由とは……? 消費者金融業界で20年間働き続けた、加原井末路氏の新刊『消費者金融ずるずる日記』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)  

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お金を借りたいのに、借りれない人の特徴とは? 写真はイメージ ©getty

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お金を借りたければ「スマホ料金の遅延はNG」

 われわれがお金を貸す際、その要となるのが「信用情報」の照会である。お客に記入してもらう借入れ申込書はあくまで自己申告であり、ほとんど当てにならない。とくに多重債務に陥っている人の場合は、悪意はなくとも把握しきれていないケースも多々ある。

 だからわれわれは信用情報機関を利用する。これこそが「お金の履歴書」なのだ。それは通称「クレヒス(クレジットヒストリー)」と呼ばれ、今までに借りた金融機関の件数や債務の残高、支払いの遅れや弁護士介入による債務整理を含む金融事故まで、お客のお金にまつわる情報すべてが丸裸にされる。

 ここで過去に支払いの大幅な遅延、弁護士介入や破産などの金融事故が発覚していることがわかれば、いわゆる「ブラック」扱いで、現在どんなに収入があろうと審査落ちとなる。

「クレヒス」が登録されている信用情報機関は大きく分けて3種類ある。

 (1)    CIC(株式会社シー・アイ・シー):クレジット会社や信販系

 (2)    JICC(株式会社日本信用情報機構):消費者金融

 (3)    KSC(全国銀行個人信用情報センター):銀行系

 われわれのような消費者金融業者が照会するのは(1)と(2)である。だから、消費者金融の借入れがなくても、信販系での買い物や通販などの分割払いの遅れ、または家賃の滞納なども影響がある場合がある。「無自覚ブラック」というやつだ。

 家賃はあいだに保証会社が入ることが多く、その保証会社が信販系だと信用情報機関に加盟しているため、家賃滞納や遅れが記録に残る。最近では、スマホの分割購入代金の遅れで審査に引っかかるケースもある。たかがスマホの通信料の遅れとたかをくくっていると、分割購入のスマホ本体の支払い遅れも同時進行して、「無自覚ブラック」になっている人も少なくない。

 申込書によると地元メーカー勤務の30代男性、「生活資金」名目で30万円の貸付を希望していた。パソコンで信用情報を照会したところ、オリコの支払いが遅延している。信販系で督促もゆるいため、おそらく気づかないまま放置してあるのだろう。残念ながら貸付不可となる。

「お客さま、たいへん申し訳ございませんが、審査の結果、当社規定により今回はご融資できません」

 定番の断り文句を告げると、お客は血相を変えた。きっと自分が審査落ちするなどとは夢にも思っていなかったのだろう。

「えっ!? なんで! 理由を聞かせてよ」

 お客としても、その理由を確認しないことには改善策も見つからないのだから気持ちはよくわかる。

 しかし、「あんた、オリコの支払い遅れてるでしょ」なんて口が裂けても言ってはいけないのだ。なので、理由は「当社規定による」一辺倒でお帰りいただく。

 なお、審査の基準は会社ごとに異なるため、信用情報のどこが審査で引っかかるかは会社によって違う。アコムではNGだったのが、デックではOKになるということもある(その逆はほとんどない)。

 彼らの対極にいるのが「スーパーホワイト」である。これは、消費者金融だけではなく、クレジット会社のカードも作ったことのない“真っ白”な人だ。こういう人には過去の利用履歴や信用取引履歴が存在しない。これには2通りの解釈がある。1つは、いっさい借金をしたことがない(カードも作ったことがない)人。もう1つが、借金ができなかった人。

借金をしたことがない」のと「借金をすることができない」のとでは大違いだ。

借金をすることができない」というのは、言い方を変えれば、誰からもお金を貸してもらえないということだからである。

 大昔に破産や債務整理をして長らくお金を借りることができなかった人の場合、その事象が古すぎると信用情報に残っていない。それゆえ「スーパーホワイト」なのだ。こうなると「クレヒス」を照会してもどうしようもなく、こちらも判断のしようがない。ただふつうに考えて、クレジットカードを作ったことも、一度の分割払いもしたこともない、いい歳こいたオヤジがノコノコとサラ金に金を借りに来るのも不自然である。そうなるとカードを作らなかった、いや、作れなかった理由を疑いたくなるのが、われわれの習性だ。

意外な理由で「審査落ちする人」とは?

 最後に、意外な理由で審査落ちするケースについて追記しておこう。

 それが「照会件数」。「照会件数」とはその名のとおり、お客が借入れ申し込みをして金融会社が信用情報機関に照会をかけた件数のことである。

 借入れの申し込み時、すぐにお金が必要な人に限って、「数打ちゃ当たる」で次から次へと多数の消費者金融へ申し込みをする。最近では、保険加入や自動車を売りに出す際などに「一括見積もり」や「一括査定」といった複数同時申し込みが増えているから、そんなノリかもしれない。

 だが、各金融機関はそのつど信用情報機関に照会をかけ、この照会自体がデータとして残る。照会件数が短期間に多いと、それだけ必死になって借りようとしているとみなされ、審査上不利になる。本当にお金を借りたい人にとって金融機関への「数打ちゃ当たる」作戦は御ご法度となのだ。

(加原井 末路/Webオリジナル(外部転載))